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しおりを挟む物凄く言い難そうだった皇さん。
その皇さんを無言のまま、『じ~』と読んで時の如く眺めていたら、徐々に引き攣った表情に。
「倉敷?」
と困惑したような顔付きで見られたけれど、それぐらいでは負けません。
無言の圧力を掛けるべくジトッと見詰めていたら肩を落とし、「降参」と言って白状された。
「喫茶『ロイン』で、倉敷がミルクと砂糖を山のように盛っていたのを見ていたから。」
うわ、見られていた。
確かに砂糖入れないと飲めないけど、山のようにって言われると恥ずかしい。
「え、あの店で僕達会っていたの?」
「倉敷は分からなかったと思う。私の正体がばれないようにしていたから。」
「変装、とか?」
「其処まではいっていないが、顔を見せないようにフードを深く被っていた。」
ん~?不破さんの店に居た時にそんなお客さん、店内に居たっけ??
うむむむむ…。
「そういう人、店内に居た?」
「…。」
ガックリと肩を落とされてしまった。
いやいや、だって先日初めて入った時から既に何日経過して居ると思っているの!?しかもああ言う雰囲気のある喫茶店、初めて入ったからちょっと緊張して居たのに。
オマケに正体がバレない様にしていたなら尚更無理ってものだよ、自覚しているけど僕って粗忽者だし。
「フェロモンを感じ無かったとか、か。…そう言えば不破さんが気を使ったのか、店に入った時に私の香りに似ていると言う、檸檬の香りが仄かにしていたな。」
ん、檸檬?
「飲水に入っていたレモンのこと?」
「ああ、その匂いで私のフェロモンを相殺していたようだった。」
そう言えばちょっと酸っぱかった気がする。
もしかして、僕の水だけ檸檬多めだったとか?
「へ~皇っちのフェロモンって、レモンで消すことが出来るの?」
「匂いだけは、な。」
気配を消すようにしていたからフェロモンを抑えていたし、威圧とかは無理とか言われた。
威圧って、以前の…?
そしてレモン、檸檬…。
やっぱり、阿須那父さんと初めて喫茶ロインに入った時、途中から来てカウンター席に座った人、かな?あの時少しだけクラクラした気がしたけど、その後気にならなくなったのはやっぱりフェロモンの匂いを打ち消したとかかな??
う~ん良くわからない。
だって皇さんは兎も角、不破さんだってαなのに僕は不破さんの匂いを感じることが出来ていない。αかな?とは思ったけれど、それだけでしか無い。
もしかしたら不破さんも何かしら自身のフェロモンを打ち消すようなことを喫茶店でしているのかな?
因みにマネージャーの高峰さんのフェロモンは確り感じ取ることが出来ているけど、普段皇さんが居るせいか、皇さんのフェロモンの方が気になって印象に残りにくい。
更に言うと落合先輩と京夏さんも匂いを感じるのだけど、何方かが白檀のような匂いを発していて何方がその匂いを発しているのかがわかりにくい。
恐らく落合先輩の方が強くフェロモンを出している様だから、落合先輩じゃないかなって思うのだけど、此方も良くわからない。
皇さんのフェロモンの方が気になるし…。
「カウンターに座った人?」
「正解。」
くすっと此方を見て皇さんが笑う。
あ、ちょっとだけその笑顔が子供っぽい。
珍しく何時もは大人びた端正な顔付きが、少しだけ年相応な顔付きに戻る。
目尻が少しだけ下がっていて、可愛い。
ついポケッと見詰めていてしまうと、「ん?」と口角を上げて小首を傾げる皇さん。
その表情が今まで見たことがない程あどけなく見えて、トクントクンと何かが音を鳴らす。
「僕等お邪魔?」
「その様だな。」
「買って来た夕飯持って、とっとと退散するほうが良いね~。」
「京夏が『とっとと』等と言うと可愛いなぁ。」
「落合先輩、耳腐ってね?もしくは徐々に腐っていっている?」
「京夏は可愛いけど時折酷いね?愛情試している?」
「ぎゃぁ!何処を触って!ってちょ!こらぁ!此処人ん家だから!お触り禁止っ!」
「学園内、特に寮だと思うと気が緩むねえ。」
「ケツ触るな~!」
僕がポケ~と皇さんの顔から目が離せない間、京夏さんと落合先輩の下ネタ込みのじゃれ合い喧嘩が徐々に遠ざかり、フェードアウト。
もしかして、これって拙い??僕これでもΩだし、皇さんはα。
更に言うと僕等は【番】だという…良くわからないけど…と思ったが目が離せない。
まるで僕の目が固定されたかの様に皇さんから目が離せない。
「倉敷…?」
ふら…と視界がふらつく。
ヤバイ、カモ。
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