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しおりを挟むside.皇 恭介
優樹が初めて泊まった…正確に言うと気を失ったと言った方が正しい。
そんな次の日の朝。
落合先輩や京夏に相談し、急遽学園にある購買部で売っていると言う服を買いに行った。
学園にあるので制服やジャージだけかと思っていたが、予想外にもTシャツやジーパン等ラフな服装が売っていた。何でも数年前から無精者(田中各務先生のことだとハッキリ言った。)がおり、見目が良いのに学園から出ずにほっとくと何時も同じ格好をしていて、折角の美貌を損ねていると見兼ねて色々と見繕い、押し売り同然で売付けていると。
更には同じ様に隣接している大学側にも同じような引き籠もり状態のΩ(安倍川蒼志と言うらしい。)がおり、そのΩの彼のためにもと似合うような服装等を徹底的に研究して見繕い、時折押し掛けて行き売り付けているのだとか。
それって、どうなのだろうか。
此方にも色々と押し付けて来そうになったので苦笑したが、「番」相手に似合うものを買いに来たと言うと、「成程」と至極納得した様に、物凄く嬉しそうに笑いながらすんなりと引いてくれた。
そうして、
「Ωってデリケートな子が多いから。特にΩ男性って昔から世間的にも余り良いように見られて居ないからさ、どうしても世間の目から隠れたくて引き籠もり気味になる。その状態だと身体に悪いだろ?だからこうして少しでも新しい服を着れば、もしかしたら気分が少しでも良くなって外に行きたくなるかも知れないと思ってね。」
等と言って笑いながら、
「ま、αも研究肌気質の奴だと全く外に出ないから、うちの店から購入する奴は結構居るけどね。」
隣接する大学に在籍しているΩは、そういう人が多いらしい。
また、一部のαも。
少し話している間に、レジの側にあるチェックのシャツパーカーに目が止まった。
「優樹に似合いそうだ…」
思わず手に取り、サイズを確認すると店員が此方を見てニヤニヤとした顔付きになる。
「大事にしなよ?」
「勿論だ。」
「急に襲うなよ?Ωは特にデリケートな身体をしているからさ。」
「……。」
「身体だけじゃなく、心もだから。」
「………」
どう言ったら良いのだ。
思わず沈黙してしまうと、ニヤリと店員は口角を上げ、
「ま、朝から相手のために服を選ぶ男だから大丈夫だろう。とはいえお前さん、この学園でも外でも有名人だからな?くれぐれも羽目を外したりせず、大事にするように。と言うワケでオジサンが学割してやろう」
はぁ、等と妙な言葉が口から出てしまったのはご愛嬌。
そうして、学割と言いつつかなりの額を値引きされてしまい、戸惑う。
「この学園を卒業したα達の支援で成り立っている学園だからな?番がいる相手には特に優しい、なーんて。ま、この学園って基本援助金で成り立っているし、普段からこんなもんだから気にするな。そのかわりまた買いに来いよ?」
次に来る時はお相手も一緒に来て、色々買ってくれ!と言われて、肩をバンバン叩かれて苦笑してしまう。彼の左手を見ると、年季の入った指輪が一つ。
彼もまた、この学園に以前居たαの一人なのだろう。
此方を見てニヤニヤしているのは、以前の自分を思い出しているのかも知れない。
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