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しおりを挟む陽平父さんや奈津子お婆ちゃんとお医者さん達が来てから色々な説明を受け、そうして…今家に帰ったら拙い状況になるのは火を見るよりも明らか。
悪い状況に陥る光景しか浮かばない。
下手したら先程の白衣の連中に拉致監禁。
下手しなくても実験体。
最悪実験の後に何らかの状況が重なり死亡。
でも。
一番イヤなのは、死亡よりも僕の子孫を残そうと無理矢理生殖行為をさせられ、子供を孕まされることと恭介さん以外のαによって番契約をさせられること。
恭介さん以外は嫌だ。
僕だって選ぶ権利はある筈。
この先、僕はどうしたら良いのだろう。
阿須那父さんだって退院したらどうするのだろう。
「今家に帰っても彼奴等また拉致しようと襲撃してきそうだ。」
「警察に頼んでも、ガードのプロでは無いから。」
陽平父さん達がああだこうだと検討している間、僕は先程言われた言葉とか心配事が頭の中をグルグルと回って何も言えない。
陽平父さんが僕の本当の父親で。
阿須那父さんが僕の本当の産みの親で、更に言うと実の母親で。
今まで元母親だと思っていた人が、戸籍上だけでの母親って言うだけの【赤の他人】。
つまり義理の母親。
しかも僕がお腹の中に居たから阿須那父さんが僕の戸籍が欲しいという理由で元母親と婚姻を結んだ、と。
阿須那父さんはバース性の研究所で産まれた、研究所に所属していた研究者の実験の末に産まれた子供で、研究者の血筋の子。しかも胎児の時からΩだった珍しい個体のため、他の研究者から胎児のうちにΩ因子を抜き取られてβになった、と。
βになった為に産まれた時から放置された子となり、存在を無視された幼少時は感情が皆無で意思も希薄。むしろ無かったとのこと。
重い。
色々と重い。
それが諸々あって研究所から阿須那父さんを助け出したのが陽平父さんのご両親で、今の僕のお爺ちゃんとお婆ちゃん。
…なぁんだ。
第二次バース性がΩになった僕を罵った元お婆ちゃん、僕の血縁者じゃなかったんだ。
ほっと、した。
元お婆ちゃんに罵られたあの時。
泣きたくて悲しくて寂しくて辛くて、あの時はΩになったことに混乱したし嫌だったけれど。
元母親の血縁者じゃなくて、良かったって思う。
中学のあの時、Ωになって良かった。
もしあの時僕がΩになって居なかったら未だに元母親のことを『お母さん』と呼んで、部屋の彼方此方に鍵が掛かった歪な【家族】として生活していたのだろう。
そう思うとゾッとする。
こんなことを思う僕は性格悪いよね、なんて思っていたら僕の頭の上に右手を乗せた陽平父さん。そのまま僕の頭を撫でながら、
「説明は聞いたな?」
「うん」
「よっし、それでは気分を変えてっと。息子よ!」
「ふぇ!?」
急にギュッと抱きしめられて変な声が上がる。
「いやー一度はしたかったんだよなぁ、この手で息子を抱きしめるの。」
はははははと笑いながら陽平父さんが「熱血っぽいだろう?」と、阿須那父さんに言って居る。その間僕はギューッと抱きしめられたまま。ううう、何だろう。何だかこの手から抜け出したい気分。イヤじゃないのだけど、気恥ずかしいわけでもないしこう、う~~~…言葉に出しにくい何かが抵抗している。
「あのなぁ、元はとは言えαだったのだからΩである優樹に抱きつくな。」
「えー何々、阿須那ヤキモチ?」
「お前の伴侶は誰だ」
「阿須那です」
「宜しい、なら抱きつくなら俺な?」
「まじか!!」
ホレホレと阿須那父さんが両手を広げると、嬉しそうに抱きつく陽平父さん。
何だかなぁと、目の前で繰り広げられる僕の『本当の産みの親』である阿須那父さんと陽平父さんのイチャイチャする姿についつい目線を逸し、遠い目をしてしまうのだった。
※
12月13日。陽平の台詞を一部修正。
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