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4 兄よ、貴方こそ腹黒の極みだ(俺は違うよ?)

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やる事は山積み。リアを可愛がりつつ外堀を埋めて、俺自身のスペックをあげる。そしてそのために出来れば協力して貰いたい人がいるので俺は現在滅多に来ない場所へと来ていた。

「珍しいな。ヴィルから訪ねてくるとは」
「お久しぶりです。兄上」

我が兄にしてグリム王国の第一王子のヤーコプ・グリム。眼鏡が似合うクールな兄は変わらぬ表情で聞いてきた。

「それで?お前から来たということは何か火急の用か?」
「はい。結構大切な用事です」
「ふむ、確か今日は婚約者との顔合わせだったな。それに関係してるのか?」

流石我が兄。頭のキレと察しの良さは尋常じゃないな。こういう優秀な兄だからこそ、前のヴィルヘルムは兄上を避けていたが・・・今の俺にはこの優秀さが頼もしく感じる。

「その前に質問です。兄上は本気で王位を継ぐ気はないんですね?」
「それが話の本題に関係するんだな。まあ、そうだな。僕にはその気は一切ない。だからお前が王太子になったんだしな」

スペック的には兄上の方が王太子としては相応しい。にも関わらずその気がないとその座から退いたのだ。それは何故か?

「兄上は侍女のリリスと結婚したいから王位継承権を放棄したのですよね?」
「・・・驚いたな。誰から聞いたんだ?」
「簡単な予測です」

なんてことはない単純な理由。侍女という立場では正妃として迎えることは出来ない。側妃でも反発する者が多いとなれば、王位継承権を手放してフリーになる必要があるのだろう。

「そんな兄上にお願いがあるのです」
「ふむ。内容によるな」
「簡単です。私が早く王位を継げるように手伝って欲しいのです」
「それは婚約者のためか?」
「はい。端的に言えば婚約者にベタ惚れしてしまったので早めに自分のモノにしたいのです」

その言葉にしばらく兄上は考えを巡らせてから聞いてきた。

「僕のメリットは何だ?」
「兄上とリリスとの関係を私が支持します」
「なるほど・・・王太子、いや次期国王からの後押しは確かに魅力的だ」
「それともう1つ・・・もしも、私が突然婚約者のリアに冷たくなったりしたら私を王族から排除して欲しいのです。どんな手を使っても」
「・・・何か起こるのか?」
「もしもの為です。例えば婚約破棄なんて言い始めたら殺しても構いません」

有り得ないとは思いたいが・・・例えば乙女ゲームの強制力なんてものが働いたり、あるいは今の俺の人格が消えたりした時にリアを助ける術が欲しいのだ。

転生なんて馬鹿げた現象と、乙女ゲームに似た世界。となればこの先何が起こるかわからないしね。俺の言葉に兄上はしばらく探るような視線を向けてたが・・・ため息をついて言った。

「わかった。その場合は面倒だが僕がお前の変わりに国王になって国を変えるとしよう」
「お願いします」
「ただ、リリスに何かあれば弟のお前だろうと容赦はしないが構わないな?」
「ええ、私もリアに何かあったら兄上だろうと容赦はしません」

そうして黒い笑みを浮かべる兄上と握手を交わすが・・・我が兄ながらなんともブラックだなぁと他人事のように思うのだった。だって俺は別に腹黒くないしね。うん。いや、マジで。


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