悪役令嬢の父親に転生したので、妻と娘を溺愛します

yui

文字の大きさ
5 / 141

5 最悪の想定

しおりを挟む
「うーん・・・」

書類を整理しながら俺は考えこんでしまった。
仕事の手を止めはしないがーーーここ数日、サーシャとローリエと共に過ごしていて実は少し引っ掛かることがあったのだ。
具体的に何がというわけではないがーーーローリエの顔を見るたびに喉の奥で何かが引っ掛かるような感覚になる。

「ローリエ・・・ローリエ・フォール・・・」

娘の名前を仕事中に呟く俺の姿は傍目から見たらかなり気持ち悪いだろうがーーー誰もいないので気にせずに考える。

「ローリエ・フォール公爵令嬢かーーーん?」

貴族らしい言葉に少しヒントがあるように思えた。
貴族か・・・前世、地球の日本の記憶と、今世、貴族のある世界の記憶が入り交じっているせいで、違和感があるようなないようなどっち付かず感じだが・・・いや、待てよ?

「ローリエ・フォール・・・俺はこの名前を知ってる・・・」

自分の娘なのだから当たり前のことだがーーーしかし、そうではなく、前世の貴族のない世界で聞いた覚えがある気がした。
そうーーー限りなく嫌な予感がしたきた。これ以上踏み込めば何か恐ろしい真実が見えてきそうなーーーそんな確信があった。

とはいえ・・・途中でやめることは出来ず俺は思考をさらに加速させて、記憶の糸を辿っていき、そしてーーー

「まさか・・・嫌、そんなはずは・・・」

ある可能性ーーー答えに行き着いてしまう。
喉は緊張からか、からからに渇いてしまい、動悸が激しくなりながら俺は答え・・を口にした。

「悪役令嬢、ローリエ・・・」

前世、地球の日本には、恋愛を疑似体験するゲームがある。その中の女性向けの恋愛シミュレーションゲームの一つでありーーー何故か俺が前世の記憶で一番始めに思い出したゲームのタイトルである『純愛姫様~お前とイチャラブ~』というゲームのヒロインの当て馬と言える存在ーーー攻略対象との恋愛を邪魔する存在である、悪役令嬢の名前が、ローリエ・フォール公爵令嬢。

「偶然ーーーではないか・・・」

前世の知識に悪役令嬢に転生したヒロインがバットエンドを回避する物語がちらつくがーーーそれと同じようなことがこの世界にも言えるかもしれない。そもそも、前世の記憶という超展開があるのだーーー類似の物語の世界というのもあながち間違いではないかもしれない。

しかし、そうなるとーーー

「ローリエが、悪役令嬢ねぇ・・・」

いまひとつあの天使のような可愛い娘が悪役令嬢になることが想像できないがーーーしかし、警戒するに越したことはないだろう。危険な要素は出来るだけ省いておくに越したことはない。

「思い出せ・・・確か、物語は・・・」

物語はよくある、貴族の男と平民の女が恋をする物語でーーーローリエが悪役令嬢になるのは、メインキャラクターの王子の物語がメインのはず。あとは、ローリエの義弟くんの話で少し出てきたはずだがーーー今のところ、我が家は養子を迎えていないので、ひとまずそれは置いておける。

問題は王子のルートだがーーー今のところ縁談の話は来ていない。確かにローリエと近い年頃の王子がいたはずだがーーー我が家以外にも公爵家はあるので、これもすぐにどうこうなる話ではないはずだ。

問題があるとすれば、それはーーー

「ローリエが王子に惚れた場合か・・・」

そこばかりはわからなかった。まだ会ったことのない相手にローリエが恋をするのかどうか・・・ゲームのローリエは確か王子にかなり片想いを拗らせてヒロインに嫉妬から嫌がらせをするわけだけどーーーそれが、逆に二人の仲を深める結果になって、最後にはこれまでの悪事をバラされて、ざまぁエンドという結末になったはず・・・これは、王子のルートの共通とも言えるイベントなのだ。

本編では詳しく描写はされてないがーーー前に読んだこのゲームの設定資料では、このあと、ローリエは家からも追放されて、路頭に迷い、路地裏で男達に蹂躙されてから、殺されるというなんとも酷い結末らしいがーーー俺が、ローリエを家から追放することはあり得ないのでここまで酷くはならないはずだ。

とはいえ・・・よくよく考えると、ローリエは本来そこまで悪くないんだよね。好きな婚約者にちょっかい出されたらそりゃあ、嫌がらせぐらいするでしょ人間なら。まあ、やり過ぎはよくなかったが・・・それ以前に優柔不断な王子が頭にくる。

婚約者がいるのに、他の女に興味持つとかあり得ないでしょ?まあ、とりあえずあんな馬鹿な王子になるなら、俺の可愛い娘をわざわざ奴にやる必要はないだろうという結論にはなる。

しかしだ・・・万が一、ローリエが王子に惚れてしまった場合はーーー仕方ない。俺はなるべく二人の仲を取り持って、もしヒロイン様に王子が惚れたら、最低でもローリエに早めに婚約破棄を申し入れるようには促すしかないか・・・とにかく!

「俺はーーー絶対にローリエを・・・可愛い娘を見殺しにはしない」

そうーーー結局、やることは一つだ。サーシャと二人でローリエを可愛がって、ローリエに普通に恋をしてもらって、幸せになってもらうーーーもちろん、嫁をほったらかしにしないで、俺は娘と嫁を今以上に可愛がってやるさ。

そう決意すると、少しすっとした。うん、難しく考える必要はないーーーストーリーにさえ入らなければローリエは安全なはずだ。もちろん、ストーリーばかり気にして現実を疎かにはできないがーーー結局、やることは何も変わらないだろうと、改めて確認できた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...