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96 婚約パーティーの準備

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「面白い展開になったわね」

例によってローリエを訪ねてきたセレナ様が、例によって普通に執務室に入ってきての一言目がそれだった。俺は仕事の手を止めずに答えた。

「一番ローリエのためになりそうな選択肢を選んだまでです。仮にセリュー様がヒロインに惚れてもすぐに婚約破棄できるようにしてあげたんですよ」
「セリューがヒロインを好きになる可能性は低そうだけどね」
「何が言いたいんですか?」
「あら、わかってるんでしょ。セリューがローリエさんに少なからず好意を抱いてることに」

その言葉に俺はため息をつきながら答えた。

「でしょうね。なんとなくそんな気配はあったのでわかってました」
「ならこれはセリューにチャンスをくれたって認識でいいのかしら?」
「選択権はローリエにありますから。ローリエが好きになった人と結婚するならセリュー様でも構いません」

本当は複雑な気持ちがないこともないが、そんなことは口にはせずに俺は言った。

「むしろ、あなたがセリュー様を焚き付けたんじゃないかと睨んでたんですがね」
「焚き付けなんて人聞きの悪い。私は弟の背中を押してあげただけですよ」

やはりセリュー様にきっかけを作ったのは彼女だったか。まったく面倒なことをと思っているとセレナ様は笑って言った。

「まあ、何にしてもこれで乙女ゲームのフラグは順調に揃ってるみたいね。もっともピースの色は微妙に違うみたいだけど」
「ええ、ストーリー通りにヒロインが来ても対処は出来ます。問題は電波系ヒロインの時ですけど」
「そんなの来たら流石に弟の嫁にはしたくないわね」
「ブラコンなようで何よりです」

なんだかんだで弟に構う姿に少なからずそういう感想を漏らすとセレナ様はニヤリと笑った。

「嫁、娘中毒の人には言われたくないわね」
「家の嫁と娘を薬物扱いは許しませんよ」
「あら?でも間違ってないでしょう。にしても今日はえらくすんなりここに入れたけどもしかして待ってたのかしら?」
「ええ、ローリエの婚約パーティーのためのドレスをお願いしたかったんで待ってました。どうせからかいにくるだろうと思いましてね」

だからわざと警備を薄くしたのだ。ローリエとセリュー様の婚約パーティーが陛下主催で行われるのでそのためのドレスを用意したかったのだ。そんな俺の言葉にセレナ様は苦笑して答えた。

「なるほど、やっぱり油断できない人ね。まあローリエさんのドレスなら気合い入れてやりましょう」
「ええ、お願いします」

娘の婚約パーティーというのであまり気は乗らないが実際に婚約するわけではないので多少はマシだろう。そうして俺はローリエのドレスを調達するのだった。


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