140 / 141
128 出発前の一幕
しおりを挟む
「メフィ!」
「きゃっ・・・ナナミ久しぶり」
馬車に乗る前にセリュー様とメフィが姿を現すと侍女のナナミがメフィに抱きつく。その行動に少しだけ俺は呆れてしまうが、まあ幸い人目も多くないのでそこまで怒ることはしない。
「ナナミ、嬉しいのはわかったけど、一応殿下の前だってことは忘れないでね」
「あ・・・も、申し訳ありません」
「気にしなくていいですよ。お友達なんですよね?」
「は、はい!そうです」
ガチガチに緊張するナナミにメフィは微笑んで言った。
「大丈夫ですよナナミ。セリュー様はとてもお優しい方ですから」
「そ、そうなの?」
「ええ、とても素敵な方です」
うっとりとそう言うメフィにナナミは何かを察したように聞いてきた。
「あの・・・もしかして、カリス様はこれがわかっていてメフィを殿下の元に送ったのですか?」
「まあね」
「そ、そうですか・・・凄いですね」
そうやって驚くナナミを置いておいてセリュー様が少しだけ申し訳なさそうに言った。
「すみませんフォール公爵。このようなことに巻き込んでしまって」
「お気になさらず。すぐに終わらせて帰ればいいだけですから」
「そう言っていただけると助かります。ここで味方を増やさないと僕も理想には届かないので」
メフィとの結婚。それは予想よりも難しいものだ。現状国を大きく変えなくてはそれは叶わない。古いことに固執した懐古主義の人間を一掃して国の在り方を替える必要があるのだ。そのための足掛かりに他国の支援を得るのは妥当だが。
「セリュー様。きちんと見極めてください。相手のことを」
「はい。きちんとこちらの味方になれる方を見つけます」
「ならば多くは言いません。貴方のしたいようにすればいい」
そして願わくば早く帰れることを祈る。早く帰って家族とのんびり過ごしたいのだ。それに可愛い盛りの子供に何日も会えないのも、サーシャの側にいられないのも嫌すぎる。厄介事は早く終わらせるに限るよ。
「カリス様。ところで本当に付き添いは私だけで良かったのですか?他の侍女や護衛は・・・」
「必要ないさ。基本的に私一人ならね。それに私にさく人員よりもサーシャやローリエの方に人手が多い方がいい。何しろ私の留守をきちんと守ってもらわなければならないからね」
「そういうものなんですか」
新米のナナミにはわからないのかそう納得するので、まあ、これでいいだろう。ナナミにはあまり仕事をあげられそうにないが、まあセリュー様やメフィと共にいて貰うのが一番かな。どのみち俺は俺でやることがあるしね。そんな感じで出発するのだった。
「きゃっ・・・ナナミ久しぶり」
馬車に乗る前にセリュー様とメフィが姿を現すと侍女のナナミがメフィに抱きつく。その行動に少しだけ俺は呆れてしまうが、まあ幸い人目も多くないのでそこまで怒ることはしない。
「ナナミ、嬉しいのはわかったけど、一応殿下の前だってことは忘れないでね」
「あ・・・も、申し訳ありません」
「気にしなくていいですよ。お友達なんですよね?」
「は、はい!そうです」
ガチガチに緊張するナナミにメフィは微笑んで言った。
「大丈夫ですよナナミ。セリュー様はとてもお優しい方ですから」
「そ、そうなの?」
「ええ、とても素敵な方です」
うっとりとそう言うメフィにナナミは何かを察したように聞いてきた。
「あの・・・もしかして、カリス様はこれがわかっていてメフィを殿下の元に送ったのですか?」
「まあね」
「そ、そうですか・・・凄いですね」
そうやって驚くナナミを置いておいてセリュー様が少しだけ申し訳なさそうに言った。
「すみませんフォール公爵。このようなことに巻き込んでしまって」
「お気になさらず。すぐに終わらせて帰ればいいだけですから」
「そう言っていただけると助かります。ここで味方を増やさないと僕も理想には届かないので」
メフィとの結婚。それは予想よりも難しいものだ。現状国を大きく変えなくてはそれは叶わない。古いことに固執した懐古主義の人間を一掃して国の在り方を替える必要があるのだ。そのための足掛かりに他国の支援を得るのは妥当だが。
「セリュー様。きちんと見極めてください。相手のことを」
「はい。きちんとこちらの味方になれる方を見つけます」
「ならば多くは言いません。貴方のしたいようにすればいい」
そして願わくば早く帰れることを祈る。早く帰って家族とのんびり過ごしたいのだ。それに可愛い盛りの子供に何日も会えないのも、サーシャの側にいられないのも嫌すぎる。厄介事は早く終わらせるに限るよ。
「カリス様。ところで本当に付き添いは私だけで良かったのですか?他の侍女や護衛は・・・」
「必要ないさ。基本的に私一人ならね。それに私にさく人員よりもサーシャやローリエの方に人手が多い方がいい。何しろ私の留守をきちんと守ってもらわなければならないからね」
「そういうものなんですか」
新米のナナミにはわからないのかそう納得するので、まあ、これでいいだろう。ナナミにはあまり仕事をあげられそうにないが、まあセリュー様やメフィと共にいて貰うのが一番かな。どのみち俺は俺でやることがあるしね。そんな感じで出発するのだった。
18
あなたにおすすめの小説
恋心を封印したら、なぜか幼馴染みがヤンデレになりました?
夕立悠理
恋愛
ずっと、幼馴染みのマカリのことが好きだったヴィオラ。
けれど、マカリはちっとも振り向いてくれない。
このまま勝手に好きで居続けるのも迷惑だろうと、ヴィオラは育った町をでる。
なんとか、王都での仕事も見つけ、新しい生活は順風満帆──かと思いきや。
なんと、王都だけは死んでもいかないといっていたマカリが、ヴィオラを追ってきて……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わんこ系婚約者の大誤算
甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。
そんなある日…
「婚約破棄して他の男と婚約!?」
そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。
その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。
小型犬から猛犬へ矯正完了!?
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
【完結】転生したので悪役令嬢かと思ったらヒロインの妹でした
果実果音
恋愛
まあ、ラノベとかでよくある話、転生ですね。
そういう類のものは結構読んでたから嬉しいなーと思ったけど、
あれあれ??私ってもしかしても物語にあまり関係の無いというか、全くないモブでは??だって、一度もこんな子出てこなかったもの。
じゃあ、気楽にいきますか。
*『小説家になろう』様でも公開を始めましたが、修正してから公開しているため、こちらよりも遅いです。また、こちらでも、『小説家になろう』様の方で完結しましたら修正していこうと考えています。
主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?
玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。
ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。
これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。
そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ!
そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――?
おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!?
※小説家になろう・カクヨムにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる