悪役令嬢は溺愛される

昼食はふたりでまったり・・・

「あの・・・本当に今日、夜会は行われるのですか？」

エミリーにあーんをしながら昼食を食べさせているとエミリーがそんなことを聞いてくる。
まあ、不思議だよね。あれだけ騒ぎがおきたのに普通に夜会をするのは。

「エミリーは夜会は嫌い？」
「嫌いではありませんが・・・」

そこで言葉を濁すエミリー。まあ、昨日の騒ぎを体験した後すぐに夜会をやるのは気持ち的にもキツいだろう。本当ならエミリーのそういう気持ちもくんであげて夜会事態をやらないように仕向けることも出来たが・・・長い目で見れば必要なことなので俺は笑顔で言った。

「私は夜会が楽しみだよ。いや、エミリーと一緒に夜会に出るのが楽しみなんだ」
「私とですか？」
「うん。可愛い婚約者を皆に自慢したいのさ」

そう言うとエミリーは少し恥ずかしそうに視線を反らした。あーんができるくらいに近い距離にいるのであまり意味のないことだが・・・俺はそんな可愛いらしい反応をするエミリーに微笑みながら言った。

「本当なら私のエミリーが着飾った姿をあまり人目にはさらしたくないんだよ。エミリーの全部を誰にも渡したくないからね」
「ぜ、全部・・・」
「こんな面倒な男は嫌いかな？」

そう言うとエミリーは慌てたように言った。

「そ、そんなこと！私はアルト様を心から愛しく思って・・・おり・・・ま・・す」

言っていて恥ずかしくなったのだろう。赤くなるエミリー。そんな可愛らしい反応を愛でつつ俺は「それと・・・」と少しだけ大事なことを言っておくことにした。

「今夜の夜会なのだが・・・エミリーは何がおこっても私を信じて欲しい」
「・・・何かなさるのですか？」

不安そうに聞いてくるエミリー。まだ赤い顔をしつつも顔を曇らせるエミリーに俺は笑顔で言った。  

「大丈夫だよ。ただ少しだけ私もこの国のためにやることをやるだけだからね」

本当は国のためではなくエミリーのためなのだが・・・それを言うとエミリーがまた気にするだろうから俺はそう言葉を濁す。

そんな俺の言葉にエミリーは少し不安そうでも素直に頷いたが・・・エミリーにこんな表情をさせるのは嫌なので俺は気持ちを切り替えるために再びあーんを再開するのだった。