悪役令嬢は溺愛される

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《マリーナ&ロイン》廊下でのプロポーズ

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「エミリー・・・良かったね」

廊下で様子を見守っていたマリーナは親友の姿に思わずそう漏らしていた。

マリーナは、昔からエミリーがアルトに好意を抱いてることを知っていて・・・同時にアルトがエミリーから距離を置いていることを分かっていたので、心からそう思えた。

好きな人のために頑張っていたエミリーと、そんなエミリーのことを妬ましげに思っていたアルト・・・交わることがないと思っていた二人がここ最近になり急接近したことに率直に言って、マリーナは驚いていた。

いや、きっとエミリーは何も変わっていないんだ。
変わったのはアルトの方・・・まるで人格が変わったかのようにエミリーのことを愛する・・・というか、溺愛しているアルトに、しかし、マリーナはむしろ好感を抱いていた。

どこか卑屈だった影のある親友の婚約者が・・・一転して、親友を溺愛するようになった経緯はわからないが・・・

「ロインは何か知ってる?」

「何がだい?」

「アルト様の変化についてよ」

アルトの腹心とも言える彼なら知っているかと思い、そう聞いてみるとロインは首を横にふって答えた。

「さてね・・・アルトに心変わりがあったのは間違いないけど・・・残念ながら何も知らないよ」

「そっか・・・でも、少しエミリーが羨ましいな・・・」

部屋の中では膝枕をして寝てしまったエミリーのことを優しく撫でているアルトの姿があり・・・思わずマリーナはそう呟いてしまった。

その時にマリーナの脳裏を過るのはかつての婚約者のサンデーのこと。

マリーナは別にサンデーのことを好きなわけではなかった。
婚約者としては親しくしていたが・・・異性間のそれと比べるとやはりどこか違う感情が芽生えていたのだと思う。

それでも長年の付き合いの相方が突然裏切ったことには少なからずマリーナの心を痛める要因にはなったわけで・・・少なからずマリーナはエミリーに対して、羨ましいという気持ちが強かった。

「ならさ・・・」

そんな少し悲しげな表現を見たロインは・・・マリーナの手を引くと自分の方に寄せて驚くマリーナに言った。

「マリーナも恋しない?」

「ろ、ロイン・・・?どういう・・・」

「端的に言えばさ・・・」

ロインは驚くマリーナの唇に自身のそれを寄せて・・・そっと・・・重ねた。

「ん・・・え、あ、ろろ、ロイン?い、今のは・・・」

「僕の気持ち・・・だよ。好きなんだマリーナのことが」

「え・・・?」

ロインの唐突な告白に目を丸くするマリーナだが・・・しだいにキスをされたことと、告白の意味に気づいて顔を赤くする。

「そ、それって・・・」

「マリーナ・・・君は一度サンデーに裏切られて酷く傷ついてると思う。だからもっと時間をかけて口説くつもりだったんだけど・・・我慢が出来なかったんだ」

エミリーを羨ましそうに見つめる瞳と、長年の思いがロインの限界を超えてしまった。
いつもは紳士で他人のことを思いやるはずのロインが・・・この時ばかりは強引にでもマリーナに迫っていた。

「マリーナ・・・僕と婚約・・・いや、結婚して欲しい」

「ロイン・・・でも、私は・・・世間じゃ売れ残りの・・・婚約破棄されたみたいな欠陥品で・・・」

非がサンデーにあろうと、婚約破棄という事実はかわりない。世間がマリーナを見る目はそんな感じだ。
それでロインのステータスに傷をつけることが・・・マリーナは堪らなく嫌だった。

しかし・・・そんなマリーナに対してロインは静かに首をふった。

「僕が聞きたいのは君の気持ちの話だよ・・・自惚れでなければ少しは意識してもらえてると思うんだけど?」

「そ、それは・・・」

図星だった。
婚約破棄されたマリーナのことを甲斐甲斐しく守ってくれ、助けてくれるロインに・・・マリーナはいつしか恋をしていた。

好感から好意を抱くのにそんなに時間はかからなかった。

でも・・・

「マリーナ」

あと一歩踏み込めないマリーナに対してロインは少し強引に・・・でも、優しく言った。

「マリーナの・・・本心を聞きたい。僕のことは嫌いかい?」

「そ、そんなことない!で、でも・・・」

「なら・・・答えはひとつだと思っていいかい?」

そのロインの言葉に・・・マリーナは顔を赤くして負け惜しみのように・・・呟いた。

「す、好きにしてよ・・・」








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