悪役令嬢は溺愛される

《ジェシカ》ヒロインになりたくないヒロイン

「げっ・・・よりによって『茨の園』のヒロインか・・・」

私がジェシカとしての認識したときの一言目がこれだ。
本来なら少女漫画に転生とか嬉しすぎるはずなのに・・・私はちっとも嬉しくなかった。

『茨の園』のジェシカは平民でありながら学園で王子と恋をして後に玉の輿になるのだけど・・・冷静に考えてみてよ。婚約者いる相手を口説いて蹴落としてイケメンと結ばれるとか、婚約者可哀相すぎるでしょ。

いや、少女漫画だからしょうがないで済むのは他人事の時だけで・・・ヒロインになれたのにこれっぽっちも嬉しくなかった。

「確か・・・エミリーだったっけ？悪役令嬢の名前は」

公爵家のお嬢さんでかなり優秀な婚約者・・・ヒーローのアルトが大好きで、横から入ってきたジェシカ（私）に嫌がらせをするとかなんとか・・・そんなんだっけ？

いや、実はこれ、この漫画、私あんまり好きじゃなかったからあんまり覚えてないんだよね。
そもそも、私、ヒーローのアルトみたいなイケメンはタイプじゃないんだよね。

浮気しなさそうな優しげなおっとりタイプっていう、かなり特殊な・・・まあ、友達で終わりそうなタイプじゃないとダメなのよね。

イケメンは鑑賞にはいいけど・・・恋愛事にはパスで。顔がいい男はあんまり当たりがいない（偏見）が私の中にはあったからね。

「さて・・・テンプレだと、悪役令嬢のエミリーあたりに同じような記憶持ちがいて、ざまぁ展開が予測できるけど・・・」

『悪役令嬢に転生したからヒロインにざまぁ』のテンプレ展開はわりと有名だし予測できないことではないが・・・私としては別にイケメンさんには興味ないので余計な荒事は避けたいところだ。

でも・・・

「ここで変に流れに逆らうと先が読めなくなるのが問題か・・・」

悪役令嬢が流れを変えていたらわからないが・・・少なくとも、私にまつわる出来事を予測するなら変に流れに逆らうとかえって逆効果な気がする。

「どうしたものか・・・」

「あの・・・」

そんなことを考えていたら何やら後ろから声をかけられて振り替えると・・・そこには私好みの大人しめな容姿の同いどしくらいの男の子がいた。

「あの・・・変なこと聞くけど・・・前世の記憶って信じる？」

この言葉に私は一瞬でピンときた。
同類だと喜んで話すと彼も、同じ記憶持ちだが、ここが『茨の園』の世界だとは知らなかったようだった。

「少女漫画・・・君がヒロインなの？」

「・・・恥ずかしながら」

「確かに可愛いもんね」

ニッコリと微笑んだその笑みに・・・私は一瞬で虜にされました。
私は彼の手を取って一息に言った。

「結婚してください！」

「・・・はい？」

このときわずか5才の子供が・・・実は伯爵子息だったと後で聞いて恐れ知らずな自分に心から敬意を払ったよ。