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一日の終わりに嫌な顔を見るとは・・・
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「では・・・また、明日」
夕食が終わり・・・お茶を楽しんでから俺は現在エミリーを部屋まで送りにきていた。
本当ならもっと一緒にいたいが・・・残っている仕事を片すのと、時間的な問題で仕方なく、でもなるべくゆっくり安全に部屋まで送ってきた。
端的に言えば、デート気分でゆっくりと送り届けにきました。
「あぁ・・・おやすみエミリー」
「はい・・・」
そうはいいつつもなかなかその場から動けない俺と・・・エミリーも名残惜しいと感じているのかその場で沈黙してしまっていた。
ふむ・・・
「エミリーちょっとこっちに・・・」
「はい?」
言われた通りに素直に近づいてくるエミリーの手を引き寄せそのまま軽く額にキスをした。
「!?あ、アルト様・・・」
「また明日・・・おやすみエミリー」
「は、はぃ・・・」
最後に真っ赤なエミリーの顔を見れて俺は満足してエミリーが部屋に入ってからその場を後にした。
これで一日が終われれば良かったんだけど・・・
「・・・・・・そろそろ出てきたらどうだ?」
しばらく歩いてから俺は後ろにそう問いかけてみた。
別に気配が読めるとはではないが・・・なんとなく接触がありそうな気がしたからだ。
その人物はしばらくしてから柱の影から姿を表して・・・くすりと笑った。
「気づかれていたんだ」
「ああ。それで?満足の行く結果にはなったのか?ヒロイン様?」
「やっぱり・・・あなたも記憶持ちだったんだ。ええ、概ねあなたのお陰よヒーローさん?」
互いに含みのある言い方をするが・・・なんてことはない、互いに原作の知識をもつ者同士の会話だ。
「それで・・・なんか用があるのか?俺は急がしいんだ。手短に頼む」
「へぇー・・・やっぱりエミリーさんが絡んでないと途端にやる気なくなるんだね。まあ、まさかヒーローとヒロイン・・・両方に記憶持ちが付くとは思わなかったけどね」
「皮肉にも原作とは違う展開だしな」
本来のメインヒロインとヒーローが一緒なのにその場にあるのはピンクなオーラではなく、どこまでも平行な・・・敵対はしないが交わることがない無関心の色しかお互いになかった。
「まあね。悪役令嬢を溺愛するメインヒーローとモブを溺愛するヒロイン・・・皮肉かもしれないわね」
「モブ・・・やっぱりお前は俺にごみ掃除をさせたのか?」
「あら?気づいてやってくれたんでしょ?」
ジェシカのその言葉に俺は顔をしかめる。
「勘違いするな。俺はエミリーの安全のためにごみ掃除をしただけだ。お前のためじゃねぇよ」
「アルト様こわーい」
馬鹿にしたように笑わうジェシカ・・・こいつは素の性格も苛つくな。
一頻り笑ってからジェシカは「まあ、でも・・・」と表情を変えていった。
「お陰で邪魔な取り巻きは排除出来たわ。そこは素直にお礼を言ってあげる」
「・・・・・・お前の目的はどうでもいいんだよ。二度とエミリーと俺に関わらなければどうでもいい」
「同じ記憶持ちなのに冷たいわね・・・まあ、確かに好きな相手を危険にさらされたらそうなるかしから?」
「・・・さっさと用件を言え」
俺の苛立ちに対してジェシカはくすりと笑ってから言った。
「用件は2つ。ひとつはお別れを言いに来たのよ。私、もう学園から去って、彼の家に入るから」
「・・・セルゼ・マルート伯爵子息のことか?」
「やっぱり知っていたんだ。そうよ。彼の実家で色々勉強するのよ」
「あっそ・・・」
正直、ヒロインのことはどうでもいいが・・・気になったことがひとつある。
「なんでお前は、取り巻きを一度形成してから俺にばらされた?結構前から記憶あったんだろ?」
ヒロインの経歴をジークフリードに調べさせてみると、どうやら幼い頃に頭を打ってから急に色々と利発になったという情報があったからこその疑問だ。
それこそ取り巻き形成前になんとか出来たはずだろうに・・・
その俺の疑問にヒロインは首を竦めて言った。
「まあ、単純に流れが変わると予測が出来なくなるからよ。元来のストーリー通りに動けば未来は同じだけど、変に変えると予想外の連続になって困るからね。あとは・・・時間稼ぎのためかな?」
「時間稼ぎ?」
「セルゼの家の説得のための時間よ。彼も記憶持ちなんだけど・・・家がなかなか認めてくれなくてね。仕方なく取り巻き作ってあとは学園を卒業したら自然解体する予定だったんだけど・・・運よく、あなたも記憶持ちだったから楽に終わったわ」
「俺のエミリーへの態度だけでわかったのか?」
「まあ、普通にストーリー知ってるからだろうとは思ったわ。だって、イベントの時にいないんだもん。しかも社交パーティーであれだけ熱烈に婚約者口説いてればわかるわよ」
やっぱり・・・ジェシカはあの社交パーティーでの出来事でそういう方針に行ったのか。
「まあ、私のことはいいのよ。2つ目は警告よ。続編には気を付けなさい」
夕食が終わり・・・お茶を楽しんでから俺は現在エミリーを部屋まで送りにきていた。
本当ならもっと一緒にいたいが・・・残っている仕事を片すのと、時間的な問題で仕方なく、でもなるべくゆっくり安全に部屋まで送ってきた。
端的に言えば、デート気分でゆっくりと送り届けにきました。
「あぁ・・・おやすみエミリー」
「はい・・・」
そうはいいつつもなかなかその場から動けない俺と・・・エミリーも名残惜しいと感じているのかその場で沈黙してしまっていた。
ふむ・・・
「エミリーちょっとこっちに・・・」
「はい?」
言われた通りに素直に近づいてくるエミリーの手を引き寄せそのまま軽く額にキスをした。
「!?あ、アルト様・・・」
「また明日・・・おやすみエミリー」
「は、はぃ・・・」
最後に真っ赤なエミリーの顔を見れて俺は満足してエミリーが部屋に入ってからその場を後にした。
これで一日が終われれば良かったんだけど・・・
「・・・・・・そろそろ出てきたらどうだ?」
しばらく歩いてから俺は後ろにそう問いかけてみた。
別に気配が読めるとはではないが・・・なんとなく接触がありそうな気がしたからだ。
その人物はしばらくしてから柱の影から姿を表して・・・くすりと笑った。
「気づかれていたんだ」
「ああ。それで?満足の行く結果にはなったのか?ヒロイン様?」
「やっぱり・・・あなたも記憶持ちだったんだ。ええ、概ねあなたのお陰よヒーローさん?」
互いに含みのある言い方をするが・・・なんてことはない、互いに原作の知識をもつ者同士の会話だ。
「それで・・・なんか用があるのか?俺は急がしいんだ。手短に頼む」
「へぇー・・・やっぱりエミリーさんが絡んでないと途端にやる気なくなるんだね。まあ、まさかヒーローとヒロイン・・・両方に記憶持ちが付くとは思わなかったけどね」
「皮肉にも原作とは違う展開だしな」
本来のメインヒロインとヒーローが一緒なのにその場にあるのはピンクなオーラではなく、どこまでも平行な・・・敵対はしないが交わることがない無関心の色しかお互いになかった。
「まあね。悪役令嬢を溺愛するメインヒーローとモブを溺愛するヒロイン・・・皮肉かもしれないわね」
「モブ・・・やっぱりお前は俺にごみ掃除をさせたのか?」
「あら?気づいてやってくれたんでしょ?」
ジェシカのその言葉に俺は顔をしかめる。
「勘違いするな。俺はエミリーの安全のためにごみ掃除をしただけだ。お前のためじゃねぇよ」
「アルト様こわーい」
馬鹿にしたように笑わうジェシカ・・・こいつは素の性格も苛つくな。
一頻り笑ってからジェシカは「まあ、でも・・・」と表情を変えていった。
「お陰で邪魔な取り巻きは排除出来たわ。そこは素直にお礼を言ってあげる」
「・・・・・・お前の目的はどうでもいいんだよ。二度とエミリーと俺に関わらなければどうでもいい」
「同じ記憶持ちなのに冷たいわね・・・まあ、確かに好きな相手を危険にさらされたらそうなるかしから?」
「・・・さっさと用件を言え」
俺の苛立ちに対してジェシカはくすりと笑ってから言った。
「用件は2つ。ひとつはお別れを言いに来たのよ。私、もう学園から去って、彼の家に入るから」
「・・・セルゼ・マルート伯爵子息のことか?」
「やっぱり知っていたんだ。そうよ。彼の実家で色々勉強するのよ」
「あっそ・・・」
正直、ヒロインのことはどうでもいいが・・・気になったことがひとつある。
「なんでお前は、取り巻きを一度形成してから俺にばらされた?結構前から記憶あったんだろ?」
ヒロインの経歴をジークフリードに調べさせてみると、どうやら幼い頃に頭を打ってから急に色々と利発になったという情報があったからこその疑問だ。
それこそ取り巻き形成前になんとか出来たはずだろうに・・・
その俺の疑問にヒロインは首を竦めて言った。
「まあ、単純に流れが変わると予測が出来なくなるからよ。元来のストーリー通りに動けば未来は同じだけど、変に変えると予想外の連続になって困るからね。あとは・・・時間稼ぎのためかな?」
「時間稼ぎ?」
「セルゼの家の説得のための時間よ。彼も記憶持ちなんだけど・・・家がなかなか認めてくれなくてね。仕方なく取り巻き作ってあとは学園を卒業したら自然解体する予定だったんだけど・・・運よく、あなたも記憶持ちだったから楽に終わったわ」
「俺のエミリーへの態度だけでわかったのか?」
「まあ、普通にストーリー知ってるからだろうとは思ったわ。だって、イベントの時にいないんだもん。しかも社交パーティーであれだけ熱烈に婚約者口説いてればわかるわよ」
やっぱり・・・ジェシカはあの社交パーティーでの出来事でそういう方針に行ったのか。
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