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夫婦歴の差なんて関係ない!
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俺と父上は現在別室に移動していた。
理由はさっきの俺の発言に驚愕した父上が「話がある」と無理矢理気味に俺を引っ張ってきたからだ。
・・・なお、一瞬後で見えた赤い顔のエミリーに母上が爛々とした瞳で何かを質問しているのが見えたので、おそらく俺とエミリーの関係が赤裸々に語られることは間違いなのだろう。
「いきなりすまないな・・・動揺してしまってついな・・・」
「いえ・・・私も父上にお話がありましたので大丈夫です」
「そ、そうか・・・」
やはり俺の態度に違和感があるのか動揺している父上。
しばらく何やら考えてから父上は口を開いた。
「アルト・・・お前はエミリーとの婚約を破棄するつもりはないよな?」
「もちろんです。むしろそんなことは例え父上でも絶対に許しません。エミリーは私の妻にします」
これだけは譲れない。何があろうとエミリーとのハッピーエンドは俺のものだ!
「・・・・そうか。いや、すまないな。実は隣国のアスター王国の王女がお前に会いたいと言っているんだが・・・」
まさかいきなりアクションがあるとは・・・面倒な雰囲気がするけど・・・
「・・・確か第2王女でしたか?彼女は弟のバスに会いに来たと聞いておりますが?」
その俺の言葉に父上は視線を反らしてため息をついた。
「バスとはお互いに気が合わないようでな・・・あちらとしては、お前かバスに王女と結婚させたいらしいが・・・肝心のバスと王女が互いに敵視しているようでな」
「バスが敵視しているとは珍しい・・・」
弟であるバス・フォン・クロードは、記憶にある限りではかなり温厚な性格で、基本的にはあまり敵対なんてしない平和主義な優しい子なはずなのだ。
そんな弟が敵視しているとは一体・・・
「こう言ってはあれだが・・・あちらの王女は少し態度が大きくてな。最初は優しく接していたバスも途中からかなり苛立っていたよ。それに・・・何やら妙なことを言っていたらしい」
「妙なこと?」
「なんだったかな・・・そうそう、『もうすぐ運命の相手に会える』だとか、『邪魔な悪役令嬢を蹴散らしてヒロインになる』だとかそんな感じか?」
・・・・ヒロインだ。多分、続編のヒロインだよ。しかも記憶ありそうなんだけど・・・面倒な・・・
悪役令嬢ってエミリーのことだよな?ふざけんな!俺のエミリーを蹴散らしてヒロインなんぞさせてたまるか!
俺のヒロインはあくまでエミリーだけなの!それ以外に興味はない!
「そ、それでアルト・・・嫌だとは思うが会うだけあってやってくれないか?」
俺の内心の怒りを察したのか冷や汗を流しながら聞いてくる父上・・・ふ、そんなの答えは決まってる。
「慎んで・・・お断りします」
「そ、そこをなんとか頼む・・・面倒なのは分かるが・・・」
「違いますよ父上。私は婚約者以外の女性と会うのが嫌なだけです。エミリーに変な誤解をさせたくはありませんし、私自身エミリー以外には微塵も興味がありませんので」
唖然としていた父上は俺のその返事に・・・苦笑した。
「なるほど・・・お前にもエストの血が流れているんだとわかったよ」
「母上の?」
「あぁ・・・エストも私に求婚してきた時には今のお前と似たような瞳をしていたからな」
懐かしむようにそう言った父上・・・というか・・・
「母上から父上に求婚したんですか?」
「そうだ。話してなかったか?」
「初耳です」
というか、アルトさんが興味がなかったようです。
「私は隣国の貴族だったのだがな・・・エストーーーお前の母親で、当時のこの国の唯一の姫君に求婚されて婿入りしたんだよ」
ん?
「ですが、今、父上が国王ですよね?」
そういう場合は母上が女王になりそうなものだと思うけど・・・これは偏見なのかな?
「元々はそのつもりだったんだが・・・エストが『夫を支えるのが妻の仕事です!』と言って聞かなくてな・・・仕方なくお前の祖父を説得して必死になって色々勉強して国王になったんだよ」
「そうだったのですか・・・」
母上凄いな・・・あくまで自分は支える側に立ちたかったのか。
父上もかなり苦労したようだが・・・語っている時の表情は生き生きしていた。
「それにしても・・・お前にこんな話をする日が来るとは思わなかったよ」
「そうですか?」
「あぁ・・・前は私やエストのことを避けていたように思えたからな。こんなに真っ直ぐに視線を向けてくることがあるとは思わなかったよ」
まあ、人格が違いますから・・・とは言わず俺は苦笑気味に答えた。
「本当に大切なものが出来ると人間変わるものですよ父上」
「はは・・・まさかエミリーのことをそこまで大切に思うとは思わなかったがな。前は苦手にしていたように思えたが」
さすがに国王・・・観察力があるね。
まあ、前のアルトさんは確かにそうだった。
でもね・・・
「それはエミリーの魅力に気付けなかった愚かな私の過去ですから。今はエミリーのことを心から愛しておりますし、エミリーのためならどんなことでも出来ると言えます」
「ほほぅ・・・私もエストのことを愛しているからわかるが・・・その目は本気のようだな」
「ええ。愛情だけなら父上と母上にも負けないと思います」
「言うようになったな。夫婦歴の長い私達の絆がそう簡単に負けるとでも?」
「大事なのは時間ではなく、気持ちですから」
互いにそんな惚気をしながらも・・・父上の表情はようやく息子の本音を聞けたと言わんばかりに嬉しそうに微笑んでいた。
理由はさっきの俺の発言に驚愕した父上が「話がある」と無理矢理気味に俺を引っ張ってきたからだ。
・・・なお、一瞬後で見えた赤い顔のエミリーに母上が爛々とした瞳で何かを質問しているのが見えたので、おそらく俺とエミリーの関係が赤裸々に語られることは間違いなのだろう。
「いきなりすまないな・・・動揺してしまってついな・・・」
「いえ・・・私も父上にお話がありましたので大丈夫です」
「そ、そうか・・・」
やはり俺の態度に違和感があるのか動揺している父上。
しばらく何やら考えてから父上は口を開いた。
「アルト・・・お前はエミリーとの婚約を破棄するつもりはないよな?」
「もちろんです。むしろそんなことは例え父上でも絶対に許しません。エミリーは私の妻にします」
これだけは譲れない。何があろうとエミリーとのハッピーエンドは俺のものだ!
「・・・・そうか。いや、すまないな。実は隣国のアスター王国の王女がお前に会いたいと言っているんだが・・・」
まさかいきなりアクションがあるとは・・・面倒な雰囲気がするけど・・・
「・・・確か第2王女でしたか?彼女は弟のバスに会いに来たと聞いておりますが?」
その俺の言葉に父上は視線を反らしてため息をついた。
「バスとはお互いに気が合わないようでな・・・あちらとしては、お前かバスに王女と結婚させたいらしいが・・・肝心のバスと王女が互いに敵視しているようでな」
「バスが敵視しているとは珍しい・・・」
弟であるバス・フォン・クロードは、記憶にある限りではかなり温厚な性格で、基本的にはあまり敵対なんてしない平和主義な優しい子なはずなのだ。
そんな弟が敵視しているとは一体・・・
「こう言ってはあれだが・・・あちらの王女は少し態度が大きくてな。最初は優しく接していたバスも途中からかなり苛立っていたよ。それに・・・何やら妙なことを言っていたらしい」
「妙なこと?」
「なんだったかな・・・そうそう、『もうすぐ運命の相手に会える』だとか、『邪魔な悪役令嬢を蹴散らしてヒロインになる』だとかそんな感じか?」
・・・・ヒロインだ。多分、続編のヒロインだよ。しかも記憶ありそうなんだけど・・・面倒な・・・
悪役令嬢ってエミリーのことだよな?ふざけんな!俺のエミリーを蹴散らしてヒロインなんぞさせてたまるか!
俺のヒロインはあくまでエミリーだけなの!それ以外に興味はない!
「そ、それでアルト・・・嫌だとは思うが会うだけあってやってくれないか?」
俺の内心の怒りを察したのか冷や汗を流しながら聞いてくる父上・・・ふ、そんなの答えは決まってる。
「慎んで・・・お断りします」
「そ、そこをなんとか頼む・・・面倒なのは分かるが・・・」
「違いますよ父上。私は婚約者以外の女性と会うのが嫌なだけです。エミリーに変な誤解をさせたくはありませんし、私自身エミリー以外には微塵も興味がありませんので」
唖然としていた父上は俺のその返事に・・・苦笑した。
「なるほど・・・お前にもエストの血が流れているんだとわかったよ」
「母上の?」
「あぁ・・・エストも私に求婚してきた時には今のお前と似たような瞳をしていたからな」
懐かしむようにそう言った父上・・・というか・・・
「母上から父上に求婚したんですか?」
「そうだ。話してなかったか?」
「初耳です」
というか、アルトさんが興味がなかったようです。
「私は隣国の貴族だったのだがな・・・エストーーーお前の母親で、当時のこの国の唯一の姫君に求婚されて婿入りしたんだよ」
ん?
「ですが、今、父上が国王ですよね?」
そういう場合は母上が女王になりそうなものだと思うけど・・・これは偏見なのかな?
「元々はそのつもりだったんだが・・・エストが『夫を支えるのが妻の仕事です!』と言って聞かなくてな・・・仕方なくお前の祖父を説得して必死になって色々勉強して国王になったんだよ」
「そうだったのですか・・・」
母上凄いな・・・あくまで自分は支える側に立ちたかったのか。
父上もかなり苦労したようだが・・・語っている時の表情は生き生きしていた。
「それにしても・・・お前にこんな話をする日が来るとは思わなかったよ」
「そうですか?」
「あぁ・・・前は私やエストのことを避けていたように思えたからな。こんなに真っ直ぐに視線を向けてくることがあるとは思わなかったよ」
まあ、人格が違いますから・・・とは言わず俺は苦笑気味に答えた。
「本当に大切なものが出来ると人間変わるものですよ父上」
「はは・・・まさかエミリーのことをそこまで大切に思うとは思わなかったがな。前は苦手にしていたように思えたが」
さすがに国王・・・観察力があるね。
まあ、前のアルトさんは確かにそうだった。
でもね・・・
「それはエミリーの魅力に気付けなかった愚かな私の過去ですから。今はエミリーのことを心から愛しておりますし、エミリーのためならどんなことでも出来ると言えます」
「ほほぅ・・・私もエストのことを愛しているからわかるが・・・その目は本気のようだな」
「ええ。愛情だけなら父上と母上にも負けないと思います」
「言うようになったな。夫婦歴の長い私達の絆がそう簡単に負けるとでも?」
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