悪役令嬢は溺愛される

yui

文字の大きさ
45 / 79

夫婦歴の差なんて関係ない!

しおりを挟む
俺と父上は現在別室に移動していた。
理由はさっきの俺の発言に驚愕した父上が「話がある」と無理矢理気味に俺を引っ張ってきたからだ。

・・・なお、一瞬後で見えた赤い顔のエミリーに母上が爛々とした瞳で何かを質問しているのが見えたので、おそらく俺とエミリーの関係が赤裸々に語られることは間違いなのだろう。

「いきなりすまないな・・・動揺してしまってついな・・・」

「いえ・・・私も父上にお話がありましたので大丈夫です」

「そ、そうか・・・」

やはり俺の態度に違和感があるのか動揺している父上。
しばらく何やら考えてから父上は口を開いた。

「アルト・・・お前はエミリーとの婚約を破棄するつもりはないよな?」

「もちろんです。むしろそんなことは例え父上でも絶対に許しません。エミリーは私の妻にします」

これだけは譲れない。何があろうとエミリーとのハッピーエンドは俺のものだ!

「・・・・そうか。いや、すまないな。実は隣国のアスター王国の王女がお前に会いたいと言っているんだが・・・」

まさかいきなりアクションがあるとは・・・面倒な雰囲気がするけど・・・

「・・・確か第2王女でしたか?彼女は弟のバスに会いに来たと聞いておりますが?」

その俺の言葉に父上は視線を反らしてため息をついた。

「バスとはお互いに気が合わないようでな・・・あちらとしては、お前かバスに王女と結婚させたいらしいが・・・肝心のバスと王女が互いに敵視しているようでな」

「バスが敵視しているとは珍しい・・・」

弟であるバス・フォン・クロードは、記憶にある限りではかなり温厚な性格で、基本的にはあまり敵対なんてしない平和主義な優しい子なはずなのだ。
そんな弟が敵視しているとは一体・・・

「こう言ってはあれだが・・・あちらの王女は少し態度が大きくてな。最初は優しく接していたバスも途中からかなり苛立っていたよ。それに・・・何やら妙なことを言っていたらしい」

「妙なこと?」

「なんだったかな・・・そうそう、『もうすぐ運命の相手に会える』だとか、『邪魔な悪役令嬢を蹴散らしてヒロインになる』だとかそんな感じか?」

・・・・ヒロインだ。多分、続編のヒロインだよ。しかも記憶ありそうなんだけど・・・面倒な・・・

悪役令嬢ってエミリーのことだよな?ふざけんな!俺のエミリーを蹴散らしてヒロインなんぞさせてたまるか!

俺のヒロインはあくまでエミリーだけなの!それ以外に興味はない!

「そ、それでアルト・・・嫌だとは思うが会うだけあってやってくれないか?」

俺の内心の怒りを察したのか冷や汗を流しながら聞いてくる父上・・・ふ、そんなの答えは決まってる。

「慎んで・・・お断りします」

「そ、そこをなんとか頼む・・・面倒なのは分かるが・・・」

「違いますよ父上。私は婚約者以外の女性と会うのが嫌なだけです。エミリーに変な誤解をさせたくはありませんし、私自身エミリー以外には微塵も興味がありませんので」

唖然としていた父上は俺のその返事に・・・苦笑した。

「なるほど・・・お前にもエストの血が流れているんだとわかったよ」

「母上の?」

「あぁ・・・エストも私に求婚してきた時には今のお前と似たような瞳をしていたからな」

懐かしむようにそう言った父上・・・というか・・・

「母上から父上に求婚したんですか?」

「そうだ。話してなかったか?」

「初耳です」

というか、アルトさんが興味がなかったようです。

「私は隣国の貴族だったのだがな・・・エストーーーお前の母親で、当時のこの国の唯一の姫君に求婚されて婿入りしたんだよ」

ん?

「ですが、今、父上が国王ですよね?」

そういう場合は母上が女王になりそうなものだと思うけど・・・これは偏見なのかな?

「元々はそのつもりだったんだが・・・エストが『夫を支えるのが妻の仕事です!』と言って聞かなくてな・・・仕方なくお前の祖父を説得して必死になって色々勉強して国王になったんだよ」

「そうだったのですか・・・」

母上凄いな・・・あくまで自分は支える側に立ちたかったのか。
父上もかなり苦労したようだが・・・語っている時の表情は生き生きしていた。

「それにしても・・・お前にこんな話をする日が来るとは思わなかったよ」

「そうですか?」

「あぁ・・・前は私やエストのことを避けていたように思えたからな。こんなに真っ直ぐに視線を向けてくることがあるとは思わなかったよ」

まあ、人格が違いますから・・・とは言わず俺は苦笑気味に答えた。

「本当に大切なものが出来ると人間変わるものですよ父上」

「はは・・・まさかエミリーのことをそこまで大切に思うとは思わなかったがな。前は苦手にしていたように思えたが」

さすがに国王・・・観察力があるね。
まあ、前のアルトさんは確かにそうだった。
でもね・・・

「それはエミリーの魅力に気付けなかった愚かな私の過去ですから。今はエミリーのことを心から愛しておりますし、エミリーのためならどんなことでも出来ると言えます」

「ほほぅ・・・私もエストのことを愛しているからわかるが・・・その目は本気のようだな」

「ええ。愛情だけなら父上と母上にも負けないと思います」

「言うようになったな。夫婦歴の長い私達の絆がそう簡単に負けるとでも?」

「大事なのは時間ではなく、気持ちですから」

互いにそんな惚気をしながらも・・・父上の表情はようやく息子の本音を聞けたと言わんばかりに嬉しそうに微笑んでいた。







しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】悪役令嬢はおねぇ執事の溺愛に気付かない

As-me.com
恋愛
完結しました。 自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生したと気付いたセリィナは悪役令嬢の悲惨なエンディングを思い出し、絶望して人間不信に陥った。 そんな中で、家族すらも信じられなくなっていたセリィナが唯一信じられるのは専属執事のライルだけだった。 ゲームには存在しないはずのライルは“おねぇ”だけど優しくて強くて……いつしかセリィナの特別な人になるのだった。 そしてセリィナは、いつしかライルに振り向いて欲しいと想いを募らせるようになるのだが……。 周りから見れば一目瞭然でも、セリィナだけが気付かないのである。 ※こちらは「悪役令嬢とおねぇ執事」のリメイク版になります。基本の話はほとんど同じですが、所々変える予定です。 こちらが完結したら前の作品は消すかもしれませんのでご注意下さい。 ゆっくり亀更新です。

モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】

いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。 陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々 だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い 何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

処理中です...