悪役令嬢は溺愛される

yui

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早く帰りたい・・・

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城を出てから重い足取りで向かったのは、とある伯爵家の屋敷・・・思いの外簡単にアポが取れたので俺はため息をついてから案内された応接室に入った。

「ようこそ殿下ーーー」
「普通に話せ」
「あら?お気に召さなかったかしら?」

くすりと笑うその人物に俺は表情をなるべく消して端的に言った。

「単刀直入に聞こう・・・続編関連で知ってることを教えてくれヒロイン様」
「せっかちね・・・まあ、とはいえ私もあまり長くあなたと一緒にいたくはないからいいけどね」

そう言って微笑むのは元ヒロインのジェシカだ。
今、続編に関して俺が知る限り一番情報を持っている人物がこいつなのだが・・・俺としてはあまり頼りたくない人物でもある。

こいつとはなるべく関わりあいになりたくないのだが・・・とはいえ、俺が知る転生者の中でもっとも真実に近い位置にいるので仕方ない。

「とはいえ、私がその話をするメリットがあるのかしら?」
「以前の借りを返すという意味なら話す義務があると思うが?」

以前、エミリーを守るために俺はこいつの思惑に乗ってやったことがある。まあ、普段ならエミリーのためにやったことだから気にもしないが・・・こいつに遠慮する必要はないだろうと思いそう言った。

いや、悪い意味で俺の中で元ヒロイン様は遠慮する必要性を感じないんだよね。腹黒だし、以前エミリーを危険にさらしたから本来なら敵に認定したいところだけど、まあ、こちらに手出しをしないなら無関心を貫きたいところだ。

「そうねぇ・・・」

しばらく考えるような仕草をしてからジェシカはため息をついて言った。

「まあ、いいわ。知ってる範囲で教えてあげるわ。その様子だと続編のヒロインとはすでに会ったのよね?」
「ああ」

脳裏に浮かぶのはあの青髪の女。電波なのか腹黒なのか計りかねる存在だが、あいつがエミリーに危害を加えようとしたことに違いはない。

俺のエミリーに危害を加えようとするなんて万死に値する!間一髪助けられたからいいようなものの、あれでエミリーを失っていたらあいつを殺して、あいつの故郷を滅ぼしてから俺もエミリーの後を追っていたかもしれない。

まあ、エミリーを失ったら俺が何をするのかはマジで予測がつかない・・・というか、想像すらしたくない。想定でもエミリーが消えることは考えたくない。絶対に失いたくない存在だ。

あぁ・・・可愛いエミリーに早く会いたい・・・

そんな俺の意志が届くわけもなく目の前のジェシカは面白そうな表情で言った。

「シル・アスター。アスター王国第二王女で、続編・・・アナザーストーリーのヒロイン。彼女の物語のヒーローはあなたなのよ。アルト様」




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