悪役令嬢は溺愛される

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閑話 大人のキスとは・・・(エミリー)

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「エミリー・・・大丈夫?」

ぼーっとしている私にお母様は心配そうに声をかけてきますが・・・私はそれに対してなんと答えてよいかわかりませんでした。

アルト様が用事があると出ていってから、入れ替わりでお母様が私を訪ねてくださったのですが、私の頭の中に浮かぶことはひとつだけでした。

先程の非日常的な光景もそうなのですが・・・それよりも脳裏に浮かぶのはアルト様のお姿ばかり。

微笑みかけて、私を抱き締めてくださるアルト様の笑みと抱き締められた時のアルト様の逞しさ・・・それに、く、唇をあわせた時のダイレクトな感触が頭から離れません。

ふ、ふしだらな女かもしれませんが・・・私はアルト様のことばかり考えてしまいます。

「それにしても・・・本当にアルト様には感謝しないといけませんね」
「感謝・・・」
「あなたを救ってくれたことにですよ」

そう、確かに私は先程普通では起こりえないような人どうしによる争いに巻き込まれて、ピンチになったところをアルト様に救っていただきました。

白馬に乗った凛々しいお姿のアルト様が私を横抱きにして助けてくださったときに私は場違いかもしれませんがとても安堵してしまいました。アルト様の温もりと感触に恥ずかしながら心から安心して思わず涙までみせてしまいましたが・・・うぅ・・・アルト様には恥ずかしいところばかりみせてしまっています。

「お母様・・・私はどうしたらいいのでしょうか?」
「どうとは?」
「私は・・・いつもアルト様に迷惑ばかりかけて・・・何も返せていません」

泣いている私をそっと抱き締めて屋敷までずっと側にいてくださったアルト様・・・アルト様は夫婦になるのだから当然だと仰っていましたが、普通はこんな重い女は面倒に思うのではないかとも思ってしまいます。

いつも私を助けてくださるアルト様に私は何を返せるのか・・・何度悩んでも答えは出ません。アルト様は愛情で答えてくれればいいと言ってくださいましたが、それでは私ばかり幸せになってしまいます。

そんな風に色々と考えが纏まらなくなり、気付けば、思わずお母様に相談をしてしまいました。すると、お母様は何故か苦笑気味に答えました。

「なんというか・・・幸せな悩みね」
「幸せ・・・ですか?」
「ええ。だって、それだけあなた達が互いのことを真剣に考えているからこその悩みですからね。利益、損得・・・そういったものをすべて凌駕する互いの深い愛があればこその悩みよ。だから貴女はもっと自分に自信を持っていいと思いますよ」
「自信・・・」
「そう。キャロライン公爵家の娘としての自信だけではなく一人の女としての自信ですよ」

お母様の口からそんな言葉が出てくるとは思わず私は思わずお母様に視線を向けるとーーーお母様は私に優しげな視線を向けて言いました。

「公爵夫人としてではなく、私の可愛い娘に対する一人の母親としての助言です。エミリー。あなたはアルト様のことをもっと信じて頼りなさい」
「でも、これ以上迷惑をかけるのは・・・」
「迷惑なんてアルト様は考えませんよ。それに・・・あんまりそういうことばかり言っていたらアルト様にお仕置きされちゃうかもしれませんよ?」
「お仕置き?」
「ふふ・・・大人のキスって何かしらね」

その言葉に私は思わず顔を赤くしてしまいます。思い出すのはアルト様のあの少し意地悪な笑み・・・はわぁ・・・いえいえ、いけません。それよりも・・・

「き、聞いていたのですか!?」
「盗み聞きするつもりはなかったのですが・・・あまりにも情熱的なアルト様に私もお父様も驚いてしまいましたよ」
「はぅ・・・」

まさかお父様とお母様まで聞いていたとは思わず私は手で顔を覆ってしまいます。
恥ずかしい!という気持ちもそうですが、何よりもその時のアルト様の様子などを思い出してしまって私の体温は上がります。

そんな私をお母様は微笑ましげに見ていましたが・・・私を慰めてくださったのだとわかって少し嬉しくなりました。

でも、アルト様の言った『大人のキス』というもののことに思いを馳せてしまったのは・・・秘密です。



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