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第2話
1
飲み会の会場は、雑居ビルの二階にある居酒屋だった。
チェーン店だが、比較的新しい店舗のため綺麗らしい。
会社から程近くにあるから営業部の飲み会によく使っているのだ、と道すがら吉野が教えてくれた。
大して飲み食いしたいわけでもないから、店はどこでも良かった。ただ会社と駅の間にあるのは有り難い。一次会が終わったらさっさと帰りたかったから。
吉野と貸切の座敷についたころには、およそ半分くらいの席が埋まっていた。
「春香ちゃーん、こっちこっち」と吉野を手招きしているのは、企画部の男性社員たちだろう。
「呼ばれてるよ?」
「先輩も一緒に座りましょうよ~」
営業部の人たちが座っている席の一角にお邪魔しようと思ったのに、ぐいぐい吉野に手を引かれて、その見知らぬ男性たちのテーブルに座らされてしまった。八人がけのテーブルで、知っているのは吉野だけ。あとは企画部の男性社員ばかりだった。なかなか最悪な状況だ。
糸川が「気をつけろ」、と言っていた声が耳の奥で響いて、慌てて頭を振る。
この見知らぬ社員たちも、糸川に比べたらマシだろう。
最初のビールを注文して、吉野がにこにこと話しているのを眺めていると、わあっと歓声が上がった。
座敷の入り口を見ると、ちょうど糸川がやってきたところで、早速女性社員に囲まれている。
「糸川さん、来てくれたんですね!」
「飲み会久しぶりじゃないですか?」
「今日も来られないんだと思ってた!嬉しい~!」
なんて、企画部の男性社員たちにちやほやされている吉野なんて目じゃないほど、持て囃されている。
糸川はへらへら笑って、女性社員たちに引きずられるまま、斜め向かいのテーブルに座らされていた。
吉野は「あーあ、糸川さん取られちゃった」と隣で頬を膨らませている。
「なーんだ、先輩がいるからこっちに来てくれると思ったのに」
「まさか。私のところに来るわけないでしょ」
仕事も一緒にしているのにわざわざ飲み会でまで一緒に過ごすことはない。
その私の言葉を聞いてか、吉野は大きくため息をついた。
「まあいいや。あとで呼んでこよーっと」
とすぐに機嫌を直したようだった。心なしか、同じテーブルに座っていた社員たちの間にほっとした空気が流れる。
もしかしたら彼らはいつも、吉野のわがままに振り回されているのかもしれない。
それでもいいと思えるほど、若くて可愛いということなんだろうけれど。
吉野とは反対側の私の隣に座った男性社員は、企画部の鈴木と名乗った。
年は私の一つ上らしい。年齢も入社年度も近いおかげで、親近感を持たれたようだった。
座ったテーブルでは、企画部の社員たちが吉野の若さと可愛さを褒め、謙遜した吉野に無理やり私が持ち上げられ、それに付き合って私まで褒められる……という地獄のような会話が続いていた。
だから、合間合間で鈴木さんが話しかけてくれて助かった。と言っても振ってもらった話題に「そうですか」「はい」「いいえ」くらいしか答えられなかったけれど。
途中から吉野より鈴木さんの方を向いていたからだろうか。
「相川先輩って、もしかして鈴木さんみたいな人がタイプなんですかあ?」
と吉野が笑いながら訊ねてきた。
その言葉を聞いて、まわりの社員たちも「ええ?」「まさか」なんてのってきて話が大きくなる。勘弁してほしい。
さすがに付き合っていられない。席をたとうかと思い始めたとき「でも」と隣の鈴木さんが口を挟んだ。
チェーン店だが、比較的新しい店舗のため綺麗らしい。
会社から程近くにあるから営業部の飲み会によく使っているのだ、と道すがら吉野が教えてくれた。
大して飲み食いしたいわけでもないから、店はどこでも良かった。ただ会社と駅の間にあるのは有り難い。一次会が終わったらさっさと帰りたかったから。
吉野と貸切の座敷についたころには、およそ半分くらいの席が埋まっていた。
「春香ちゃーん、こっちこっち」と吉野を手招きしているのは、企画部の男性社員たちだろう。
「呼ばれてるよ?」
「先輩も一緒に座りましょうよ~」
営業部の人たちが座っている席の一角にお邪魔しようと思ったのに、ぐいぐい吉野に手を引かれて、その見知らぬ男性たちのテーブルに座らされてしまった。八人がけのテーブルで、知っているのは吉野だけ。あとは企画部の男性社員ばかりだった。なかなか最悪な状況だ。
糸川が「気をつけろ」、と言っていた声が耳の奥で響いて、慌てて頭を振る。
この見知らぬ社員たちも、糸川に比べたらマシだろう。
最初のビールを注文して、吉野がにこにこと話しているのを眺めていると、わあっと歓声が上がった。
座敷の入り口を見ると、ちょうど糸川がやってきたところで、早速女性社員に囲まれている。
「糸川さん、来てくれたんですね!」
「飲み会久しぶりじゃないですか?」
「今日も来られないんだと思ってた!嬉しい~!」
なんて、企画部の男性社員たちにちやほやされている吉野なんて目じゃないほど、持て囃されている。
糸川はへらへら笑って、女性社員たちに引きずられるまま、斜め向かいのテーブルに座らされていた。
吉野は「あーあ、糸川さん取られちゃった」と隣で頬を膨らませている。
「なーんだ、先輩がいるからこっちに来てくれると思ったのに」
「まさか。私のところに来るわけないでしょ」
仕事も一緒にしているのにわざわざ飲み会でまで一緒に過ごすことはない。
その私の言葉を聞いてか、吉野は大きくため息をついた。
「まあいいや。あとで呼んでこよーっと」
とすぐに機嫌を直したようだった。心なしか、同じテーブルに座っていた社員たちの間にほっとした空気が流れる。
もしかしたら彼らはいつも、吉野のわがままに振り回されているのかもしれない。
それでもいいと思えるほど、若くて可愛いということなんだろうけれど。
吉野とは反対側の私の隣に座った男性社員は、企画部の鈴木と名乗った。
年は私の一つ上らしい。年齢も入社年度も近いおかげで、親近感を持たれたようだった。
座ったテーブルでは、企画部の社員たちが吉野の若さと可愛さを褒め、謙遜した吉野に無理やり私が持ち上げられ、それに付き合って私まで褒められる……という地獄のような会話が続いていた。
だから、合間合間で鈴木さんが話しかけてくれて助かった。と言っても振ってもらった話題に「そうですか」「はい」「いいえ」くらいしか答えられなかったけれど。
途中から吉野より鈴木さんの方を向いていたからだろうか。
「相川先輩って、もしかして鈴木さんみたいな人がタイプなんですかあ?」
と吉野が笑いながら訊ねてきた。
その言葉を聞いて、まわりの社員たちも「ええ?」「まさか」なんてのってきて話が大きくなる。勘弁してほしい。
さすがに付き合っていられない。席をたとうかと思い始めたとき「でも」と隣の鈴木さんが口を挟んだ。
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