桃太のおだんご(隠語)は大人気

ぱぴっぷ

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何かしらのトラブルがあったのか?

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「おじさん達、遅いね…… 既読も付かないし」

 帰宅予定の18時を過ぎても帰って来ない親父達。
 千和が連絡してみても返事どころか既読すら付かないみたいだ。

「きっとどこか寄り道して帰ってるんだろ、仕方ないな」

 最初はそう思っていたのだが、二時間、三時間と音沙汰もないと少し不安になってくる。

 最後に連絡が来たのは『もうすぐ港に着く』というメールなので、もしかしたら着港の時に何かしらのトラブルがあったのか? でもそれなら連絡してくるよな。

 そう考えると電車のトラブルも無さそう…… もしかして、帰り道で事故に遭ったとか……

 俺も電話をしてみたが電波がないのか電源が切れているのか繋がらない。

「桃太、電車は普通に動いてるみたいだ」

「私、旅行会社に連絡してみますね」

「ええ、ありがとう…… 桃太様、部下に電話で聞いてみましたが、この辺で事故があったという情報は今の所ありませんわ」

「桃くん、きっと大丈夫だからもう少し待ってよう?」

 親父…… 母さん…… 連絡ぐらい取れるようにしておいてくれよ!

 寄り道ならまだいい、最悪の事態を想像すると、一気に不安になってくる。

 そんな俺を落ち着かせるために千和は抱き着いて背中を撫でてくれている。

「旅行会社の話だと、船は無事港に着いて、乗客も全員降りたのを確認しているみたいです」

 ということは日本には無事帰って来てはいる、じゃあどこに……

「桃太、顔色が悪いぞ…… ほら、大丈夫だから……」

 輝衣も近付いてきて、リンゴが顔に当たるように俺の頭を抱えながら撫でている。

「桃太さん…… ご両親は無事変え来ますから、大丈夫です」

 そう言って美鳥は俺の右手を両手握ってくれた。

「今、部下達に連絡して帰りのルートを予想して捜索させてますから安心して下さいまし……」

 安心させるためか葵は俺の左手を取り、自分の二つのスイカの間に挟んだ。

「……ありがとうみんな、とりあえず待ってみよう」

 もうすぐ帰って来るかもしれないし、もし帰って来なかったら…… その時は警察に連絡してみよう。

 あまり余計な事を考えると、どんどん悪い方に思考がいってしまうから、今は目の前いる四人に甘えさせてもらう。

 そして、夜中まで待ってみたが、親父達は帰って来ず、みんなでいつ帰って来てもいいようにリビングで仮眠を取る事にした。



 窓の外が明るくなって来たが、まだ帰って来ない……

「帰って来ないね…… どうしたらいいんだろう」

 一睡もする事が出来ず、ただ横になっていただけだが、その間ずっと四人に落ち着くようにと交代で抱き締められていた俺。

 おだんごを食べさせる気分になんてならなかったが、誰かが寄り添っていてくれている事で、少しは不安な気持ちが和らいでいたので感謝している。

「千和ちゃんは少し寝て下さい、桃太さん…… こちらにどうぞ……」

 少し前に眠った輝衣と葵の寝息が横から聞こえる中、スイカから離れ、大福に導かれるように抱き締められた。

「うふふっ、私達が付いてますから、桃太さんも少し眠って下さい、寝不足な顔をしているとご両親も心配しますよ」

 頭を撫でられながら優しい声を掛けられる。
 普段は甘えん坊な美鳥もこういう時だからか大人の女性としての包容力を見せてくれて、今の俺にはとても心強く感じる。

「桃太さん……」

 美鳥…… ありが…… とう……


 ◇


 お嬢様に頼まれ、お嬢様の恋人である吉備さんのご両親を捜索している。

 情報によると、旅行帰りに連絡がつかなくなったらしいのですが…… 正直何の手がかりも見つかっていない。

「…………」

 そんな中、美鳥さんから紹介された人物にも協力してもらってるのだが……

「…………」

 無口で何を考えてるか分からなくて、ちょっと怖い!

 なんとか探偵事務所で働いている女性らしいのだが、180センチはあるんじゃないかという高身長に帽子にサングラス、白いワンピース姿でとにかく怪しい!

 しかもお化けスイカにビッグピーチで横にも大きく見える、なのにウエストはほっそりしているのが分かってかなり驚いた。

 いや、この人の事は正直どうでもいい、今はとにかくお嬢様に頼まれ仕事に集中しないと!

「……事件ではなさそう」

「何故そう思うんですか?」

「……港から駅までの道の防犯カメラにはしっかり映ってた、その後は分からない」

 い、いつの間に防犯カメラを!? しかも一般人じゃ防犯カメラなんて確認させてもらえないはず……

「……お店の人に言ったら見せてくれた」

 や、優しいお店だったんですね。

「……何故か私を見て怯えてた ……悲しい」

 そ、そうですか…… それはショックですね。

「……いつもそう、私が急に現れたとか、お化けとか言われる ……ショウちゃんに慰めてもらわないと」

 ……あ、あぁ、酷いですね、ショウちゃんって、か、彼氏さんですか? 

「……違う」

 あ、あははっ、じゃあ好きな人ですか? 

「……違う、私の運命の人」

 お、重っ!! っ、いけない、口にする所だった……

「……この辺はもういい、次の場所に行く」

 あぁっ! ちょっと待って下さい! ……もう! さっきから勝手に動き回らないで下さいよ! 


 ◇


「……そう、分かりました、引き続き頼みましたわ」

「葵さん、どうだった?」

「船から降りて駅へ向かう姿は確認出来たみたいです、その後はまだ調査中らしいですわ」

「事件…… なのか? でも寄り道するなら連絡くらいするよな」

「うーん…… おじさんは分からないけどおばさんはそういう所はしっかりしてるから連絡くれると思うんだけど」

 千和達が話している声で目が覚める。
 親父達はまだ帰ってないみたいだ……

「あら、もう少し寝ていなくて大丈夫ですか?」

 美鳥に頭を撫でられているうちに、気が付けば大福に顔を埋め、しがみつくように眠っていたみたいだ。

「桃太様、おはようございます、ご両親についてなんですが……」

 葵から話を聞くと、葵の部下と美鳥がいつの間にか連絡していた、探偵をやっている美鳥の高校時代の同級生が合流して親父達を捜索しているらしい。

 そして今分かっているのが船を降りて駅へは向かっていた事、あとは今調査中……

 何してるんだよ、人に心配や迷惑をかけて……

 ただ、どうして帰って来ないかが分からないからどうするべきか……

「また連絡が来ると思いますわ、それまで桃太様は下手に動かずここで待っていましょう、わたくしがお母様にも捜索の手伝いを頼んでみますから」

「葵…… すまない」

「ふふっ、桃太様は気にしなくていいんですのよ? だからわたくし達に任せて下さいまし」

「ありがとう……」

「さて! みんなお腹空いたでしょ? 私はご飯作ってくるね!」

 台所に向かう千和の後ろ姿を見て、心の中で感謝をしながらもう一度スマホを手に取り、両親に電話をしてみる。

 だが親父と母さん、両方のスマホはやはり電源が入ってないみたいで繋がらなかった。

 すると美鳥のスマホが鳴り、何やら話をしているみたいだ。

「……もしもし、はい、ありがとうございますヤエちゃん、今日もよろしくお願いします…… はい、分かりました、伝えておきます」

 電話をしながらチラチラと俺を見ているが、何かあったのだろうか。

「桃太さん、今、捜索に協力してくれている高校時代の同級生から連絡が来たんですけど、どうやらご両親はこの家からの最寄駅より二駅手前の駅で下車したのを確認出来たみたいです」

 二駅手前? ……あそこの駅で降りて何かあったか? 

「今日はその周辺を探してみるみたいなので、また連絡くれるみたいです」

「分かった、あとでありがとうございますと伝えておいてくれないか」

 だが、その日も親父達は見付からず、俺の不安は更に大きくなった。
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