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リアンは明るいうちに軽い食事をとり、夕刻には風呂に入った。準備といっても毎日することは同じなのだが、新規の客が久しぶりすぎて落ち着かない。
リアンの客は上品といえば聞こえがいいが、平たくいうと枯れかけた年齢が多く、そうでなくとも何年も肌を合わせている馴染みばかりだ。ここしばらくは、あまつさえ男娼という身でありながら、長年連れ添った夫婦のような穏やかであっさりとした交合しかしていないことに思い至り、少し気が遠くなる。
(せっかく選んでもらえたんだから、頑張らないと…)
どんな縁で選ばれたのかは分からないが、がっかりされないように、リアンはなるべく念入りに体の隅々まで磨き上げた。色素の薄い肌はなめらかで触り心地がいいと、客からはいつも褒めてもらっているし、長く伸びた銀髪も手入れを続けている。年齢はどうしようもないが、男娼としての見目はまだそんなに悪くないはずだ、と己に言い聞かせ、今日の仕事場へ向かう。
「う…ここでするのか…」
リアンは思わず呻いて頭を抱えた。娼館では客の格や金払いで部屋も変わる。指定された部屋は館で一番豪奢なつくりをしている。特別な客にしか使わせない貴賓室だ。大きな窓は庭の一等地に面していて、天井は高く、絨毯は厚い。寝台は呆れるほど大きく、美しく刺繡が施された天蓋がついていた。リアンの人気がそれなりにあった16、7の頃でも、片手で足りるほどしか使ったことがない。
これは、困った。万が一にも粗相はできない。
リアンは悩んだ末、自室である大部屋へ戻り、私物の奥からかつて体を慣らすために使っていた張型の箱を引っ張り出してきた。豪奢な部屋へ取って返し、隅に置かれた長椅子に四つ這いになりながら、なるべく大きい物を選んで、風呂で拡げた孔にはめ込む。
「んっ…」
薄闇に沈む広い室内に、思わず漏れた声がやけに響く。ずるずると奥まで押し込み、しばらく馴染むのを待ってから、絞めたり緩めたりしてみる。情けない恰好だが、これも仕事だ。
後ろを使うのはいつまでたっても慣れないし、違和感は大きい。きつくて苦しいが、耐えられないことはない。そして、今はそれだけしか感じない。
(あー…やっぱり、よくわからないや)
硬い張型の馴染みを確かめて徐々に動かしながら、リアンは思わずため息をつく。
14で店に出される前には半年以上かけて、館主に体を拓かれ手ほどきを受けたが、リアンは快感を拾うのがあまり得意ではなかった。感じるところを弄られればそれなりに感じるし、最後までいけもする。でもいつもそれを遠くから眺めているような、冷めた感覚がぬぐえず、快楽に集中できないのだ。
館主は「頭で考えて抱かれてるからだ」と一言評して、早々にリアンの開発を諦めた。叩き込んだのは、派手な痴態は演じずに、つつましく恥じらう役に徹すること。客を喜ばせ、反応を見ながら、喘いだり身をよじったり、それらしい反応を返すことで、閨での評価はそれなりに得られた。男娼としてはある意味で中途半端な仕上がりでここまで続けてこられたことを思うと、運がいいとしか言いようがない。
(…でも仕事なのにあんまり感じたら、疲れると思うんだけど)
男娼の中には、心底男とのまぐわいが好きで、尻はおろか喉でも簡単にいける者がいることは、リアンも知っている。まったく一体、どんな感覚なのか。
「…失礼します」
扉を叩く音がして、使用人が足音も立てずに部屋へ入ってきた。リアンの来る前からここで働いている、よく見知った中年女性だ。衣装の裾をからげて尻を弄っているリアンを見ても、顔色ひとつ変えない。
「準備をお手伝いいたします」と無表情に切り出す。
「わかりました」
足の間の始末をして、素直に従う。
窓の外が暗くなってきた。
「これを身に着けるように、と館主から言いつかっております」
使用人が卓の上に用意したのは、目元を覆う革製の道具だった。幅広の目隠し部分から、左右に二本ずつ帯が伸びていて、ご丁寧に小さな鍵まで付いていた。この構造では確かに、手伝いなしで装着するのは難しい。
眉から鼻のすぐ上まで覆う目隠しは、肌にあたる部分が布で覆われていて、革が直接顔に触れないようになっている。革製の帯は耳の上下を挟んで頭を一周し、側頭部で金具を引き締めて留めると、目隠しがぐっと顔に密着する。
金具に小さな鍵をかけて、リアンに目隠しを装着し終えた使用人は、
「鍵は館主が明日の朝、開けに来られます。それまでは決して外されませんよう」
と冷ややかに言い残して、部屋を去っていった。
チリ、と耳元で鍵と金具のぶつかる小さな音がする。
真っ暗で、何も見えない。
周囲を探ってみる。長椅子の背に触れ、ひじ掛けに触れる。距離をつかむのも難しい。布で覆う程度の目隠しなら、戯れにされたことはあるが、ここまで念入りにされるのは初めてだ。
(絶対に顔を見られたくないお客様?それとも、僕の顔を見たくないのか?)
顔はどうでもいい?いや、いっそ誰でもいいという一見客なら、それはそれで気楽だ、と自分をなぐさめる。
視界を封じられたせいか、いつもより耳がよく聞こえる気がする。誰もいない部屋では、静寂を拾い過ぎて痛いほどだ。そわそわと落ち着かす、じっとしているのが限界に達して、リアンが長椅子から立ち上がった頃、ようやく扉が開いた。
絨毯を踏み込む靴の音。部屋の空気を侵食する、自分以外の人の気配。
足音を頼りに歩み寄ったリアンと、ゆっくり大股で踏み込んできた客が、寝台の横で出会った。
「はじめまして。リアンと申します。よろしくお願いします」
リアンは前方にある人の気配に向かって名乗り、会釈をしたが、しばらく待っても返事はなかった。
(やっぱり…変な客だ)
しかし、仕事だ。気持ちを奮い立たせて、覚悟を決める。
会話を楽しんだり、酒を飲んだりという時間を挟む余地は、どこにもなさそうだ。
触れはしなかったが、相手は案外近い位置にいる。リアンの頭より高い位置から微かな息遣いが聞こえ、ほんのりと体温が感じられる。
(たぶん、体格の良い人だ…)
筋肉量が多いと、体温が高くなる。
「触れてもよろしいですか?」
とお伺いを立てるが、やはり何も返ってはこない。
こういう場所が初めてで、緊張しているのかもしれない。リアンはなるべく口角を上げて微笑んでみせてから、男に触れた。目元を使った感情表現ができないというのは、思ったより面倒だ。
予想したより高い位置にある肩に触れ、手探りで襟元を辿り、上着を脱がせてゆく。リアンよりゆうに頭一つ分は背が高い。脱がせた上着を手近な寝台の隅に置き、跪いて脚衣に手を掛けると、置物のように動かなかった男がほんのわずかに身じろいだ。
「失礼します」
リアンは声をかけてから、丁寧に前をくつろげる。
(わ…)
取り出したものの大きさに、思わず声を上げそうになる。見えていないので手触りで想像するしかないが、かなり立派だ。
そしてこの迅速な反応は、若い客だ。
ふ、と力を抜いて覚悟を決めると、両手で髪を後ろにまとめながら、口ですくって咥える。
半勃ちのものはすぐに硬く膨れ上がり、リアンの口腔を満たす。慌ててあごの力をさらに抜くが、全ては入りきらない。滑らかな舌触りが妙に鮮明に感じられて、背筋がぞくりと泡立った。ちゅ、と音を立てながら出し入れし、手で竿を撫でる。唇で亀頭を食み、鈴口を舐める。あふれてくる濃い先走りを呑み込み、また喉の奥へとくわえ込む。
(こんな立派なものをお持ちで、年増の男娼を買うって…どんな人なんだろう…)
ふと唐突にリアンは、姿も見えない相手に奉仕をしている、という倒錯的な状況に気づいた。恐ろしいことに相手からだけは、リアンが見えているのだ。妙な道具で目隠しし、口いっぱいに肉棒を頬張り、ゆらゆらと頭を動かす自分を、どんな男が、どんな顔をして見ているのだろうか。
「んんっ…」
急に這い上がってきた羞恥と恐怖に、リアンは思わずむせそうになった。
(いつもやっていることなのに、落ち着け!)
自分に言い聞かせてさらに奥まで咥えようと喉を開いた瞬間、大きな手に頭を掴まれ、ぐいっと押し込まれた。
「うぐっ…ん、んんーっっ!」
そのまま前後に強制的に動かされて、リアンの体が跳ねる。思わず男の脚を掴んで引き離そうと踏ん張るが、びくともしない。
「んんっ!うっ、ぐっ!んうぅーー」
じゅぶじゅぶと唾液のたてる音が響き、リアンの呻きに男の息が重なる。
客のペースで奉仕させられることは珍しくもないが、今夜の男は大きすぎる。喉の奥までこじ開けられて、反射を押し殺すのに必死になった。
(…飲み込んだら、絶対吐く…)
懸命に喉から力を抜き、男の律動に身を任せる。唾液も先走りも口からあふれるままにして無心でゆすられていると、口内のものがさらに張り詰めていく。
唇に触れる下生えの感触、若々しい匂い。頭上から聞こえる息遣いが荒くなってゆく。
髪の間にもぐりこんだ男の手が、地肌に触れて熱い。
苦しくて、息ができなくて、暗いはずの視界が真っ赤に染まっていく。
喉奥で熱いものがはじけて、目隠しの中でリアンは涙ぐんだ。
「うっぐ…ああっ…は、はぁ…ぅふ、はぁ」
引き抜かれた途端、どろりとした精液が口からあふれ、顎から喉へと伝っていく。何とか耐えられた。口内に残った分を飲み込んで、急いで頭を下げる。
「申し訳っ、ありません。失礼を、いたしました…」
呼吸を整えながら、衣装の裾で口元をぬぐう。
客の男が息をのんで、体を強張らせる気配がする。
(しまった、機嫌を損ねたか…?)
動揺を胡麻化すように衣装の紐を解いて立ち上がり、薄布を床に脱ぎ落とすと、もう一度手探りで距離を詰めて男の胸元に触れる。
「申し訳ありません、旦那様のものが立派で…」
恥じらうように首を傾げて寄り添い、腕を引いて寝台の方へと誘う。
男の手が、はじかれたように腰を掴む。
「え?」
ぐら、と体が傾いて足が床を離れ、浮き上がった感覚がして、次の瞬間にリアンは寝台へ放り込まれていた。大きな体にのしかかられて体が沈んだかと思うと、間髪おかずに脚を開かれる。
「ひっ、や」
見えないから次に何が起きるか全く予測できない。怖い。
「ああっ」
後ろを探られたかと思うと、太い指をぐいと入れられて、リアンの腰が逃げた。逃さないとばかりに、前も握られてせわしなくこすられる。
「待って、旦那様、待って…!」
性急な感覚の変化に慌てて、リアンが悲鳴じみた声を上げた。
いつもと全然違う、痛いほどの刺激に眩暈がしそうだ。
口淫の最中に立ち上がりかけていた前は一気に高められ、あっという間に張り詰める。張型で慣らしたはずの後ろはきゅうきゅう窄まって、出し入れされる指を絞めつけてしまう。
「あっ、あ、や、旦那様っ」
指が増やされて、リアンの下腹部をぐいと押し上げると、性器からあっけなく精が漏れた。一瞬頭が真っ白になった後で、腹を濡らす感触がじわりと追ってくる。
「ひあ、あぁ、ごめんなさい…」
落ち着いて謝罪する余裕もない。こんなに翻弄されてすぐ果てるなんて、初めての経験だった。視界が遮られることで感覚が増幅されて、いつもの何倍も快感を拾ってしまう。
息も絶え絶えのリアンは、だるい脚をより高く掲げられるのに気づいて、身をよじる。男の息遣いがリアンに近づいてきたかと思うと、尻に濡れたものをあてがわれ、一気に埋め込まれた。
「ああああっ!」
急に押し込まれた衝撃に、リアンが叫び声を上げた。
「そんっ、な、急にしなっ…あっ、あ…」
ずるりと奥まで入れ、ぎりぎりまで抜く。
あらかじめ仕込んだ軟膏と男の先走りで、中は潤っている。問題なく滑ることを確かめると、容赦ない抜き差しが始まった。
「いやぁ、あ、ああっ、激しっ…」
体の力を抜こうとしても、後ろが自然に締まってしまい、とても制御できない。締め付けた内側を硬くて太いものがこすって、リアンの感じる場所を強引に嬲っていく。
(なにっ…これ…っ)
強制的に快感が引きずり出されるような、恐怖と歓喜が体を満たした。
男の熱い息が首筋にかかる。
鎖骨にがぶりと歯を立てられて、「ひっ」とリアンがのけ反った。男は白くなめらかな胸元にいくつも口づけを落としては、噛みつき、吸い上げる。
唇の熱さと鋭い痛みに耐えきれず、リアンが無意識に男の首に手を回して縋り付くと、男はびくりと体を硬くして、リアンの中のものをいっそう大きくした。
「やだっ、だめ!あああっ」
強く突き入れて、男が達する。体の奥の柔らかいところが熱くなって、リアンもとろりと性器から蜜をこぼす。
「ひぁっ、あぁっ、あ」
いつの間にか細い腕で力いっぱい男にしがみついていることに、リアンは気づいていない。
細かく痙攣するリアンから男のものが引き抜かれて、こぼれた体液が尻を伝っていく。体が離れて冷たく感じられたのも一瞬だった。くるりとひっくり返されて這わされたかと思うと、ほぐれた孔をすぐに塞がれてしまう。
「あぁっ、旦那さま!少し、ゆっくり…っ!」
身も世もなく懇願するリアンの声は、敷布に吸い込まれて男には届かない。激しい出し入れに水音が立ち、研ぎ澄まされた耳からもリアンを犯してゆく。
「んぐっ、あ、う、ああっ」
腰をきつく掴む手が熱い。前は触られていないのに、またゆるく勃ち上がっていた。
敷布にしがみつくリアンの肩や背中に、男が歯を立てて口づける。肌が触れたところから男の高い体温が流れ込んできて、リアンの体もどんどん熱くなるようだ。
「ああっ、あ…」
喘ぐリアンを背後から突き上げながら、男が長い髪に手を伸ばした。乱れた銀の髪を片方に寄せ、細い首をむき出しにする。そして、指で探るように撫でる。
「ひぃっ、あっ、んんん!」
うなじの生え際に近いところを強く嚙まれて、リアンはあっけなく達した。
「申し訳ありません…こんな時間まで」
三回目をされている最中に意識を失ったらしい。客の姿はとっくにない。
館主が目隠しを外しに来るまで、リアンは泥のように眠っていた。普段から眠りは浅く、寝起きはいい方なのに。真っ暗にされていたことを差し引いても、リアンらしからぬ寝坊だった。
きつく押さえつけられていた目元は皮膚がすれたのか少々痛むが、それ以上に光がまぶしくてなかなか目を開けられない。見事に寝乱れた敷布の海の中で、何度も瞬いてようやく、のそりと体を起こす。
「すぐ、支度をします」
窓の外の陽は高く、おそらくすでに昼に差し掛かっている。遅刻はもちろんのこと、部屋の準備に支障が出ても罰金を科されることがあるのだ。
売れっ子でもない自分の遅刻だし、ここだってめったに使わない部屋だから、見逃してもらえないだろうか…などと考えながら視線を落とすと、うっ血や噛み跡が派手に散った胸元が目に入った。
(うわぁ…)
がっくりと肩を落とすリアンに、館主は手ずから水差しの水を注ぎ、渡した。
館主が男娼に気を遣うなんて、どういう風の吹き回しか。不審に思っていることが顔に出ないように気を付けながら、おっかなびっくり受け取る。
「ありがとう、ございます」
カサカサになった喉に水がしみこんで、甘露のように美味い。こくこくと喉が鳴る。
館主はそんなリアンをじっと見つめてから、おもむろに口を開いた。
「お前はとりあえず一週間、昨夜の御仁に買い上げられた。常連客には私の方から説明しておく」
「へ…?」
思わず間抜けな声を出して、館主を見つめ返す。
(一週間…)
しばらく言葉の意味を考えてから、リアンは猛烈な勢いでかぶりを振った。
「無理っ!無理です!一週間ずっと昨夜のお客様のお相手は、絶対できません…!」
なんだかもう、訳が分からない一夜だった。あんなのが毎日続いたら死んでしまう!
「誤解するな。王都にお住まいの方で、夜明けには帰られた。次にお見えになるのは早くても一週間後らしい。それより長くなったとしても買い上げは続けてくれと、金はすでに多めに貰っている」
リアンのあまりの慌てぶりに一瞬ひるんだ館主だったが、すぐに気を取り直して淡々と告げる。次に訪れるまで、リアンに他の客を取らせるな、ということらしい。
何日も買い上げて娼館に居続け、恋人ごっこをするような客は稀にいる。それは娼館を宿代わりに使える上、長時間お気に入りの男娼と過ごせるから買い上げているのであって、ここを離れていては意味がない。全くの無駄金だ。
(強引に抱いた詫びに、一週間休みをやろうということか…?)
変な客だ。全く腑に落ちないが、買われたものは仕方ない。ありがたく享受しておくことにする。
「承知しました」と殊勝に頷いたリアンに館主は、「ゆっくり休め」と似合わない言葉を掛けた。
ものすごく体が重くてだるい。あちこち痛むのは想定の範囲内だが、芯を抜かれたような、ふわふわとしたこの疲労感は一体何なのだろうか。
夢見るように視線をさまよわせるリアンをまたじっと見つめて、館主がニヤリと笑った。
「お前、こういうのが好きだったんだな」
目を丸くしたリアンは、しばらく考えてから両手で体を抱え、耳まで真っ赤に染めた。
「っ…違いますっ!」
リアンの客は上品といえば聞こえがいいが、平たくいうと枯れかけた年齢が多く、そうでなくとも何年も肌を合わせている馴染みばかりだ。ここしばらくは、あまつさえ男娼という身でありながら、長年連れ添った夫婦のような穏やかであっさりとした交合しかしていないことに思い至り、少し気が遠くなる。
(せっかく選んでもらえたんだから、頑張らないと…)
どんな縁で選ばれたのかは分からないが、がっかりされないように、リアンはなるべく念入りに体の隅々まで磨き上げた。色素の薄い肌はなめらかで触り心地がいいと、客からはいつも褒めてもらっているし、長く伸びた銀髪も手入れを続けている。年齢はどうしようもないが、男娼としての見目はまだそんなに悪くないはずだ、と己に言い聞かせ、今日の仕事場へ向かう。
「う…ここでするのか…」
リアンは思わず呻いて頭を抱えた。娼館では客の格や金払いで部屋も変わる。指定された部屋は館で一番豪奢なつくりをしている。特別な客にしか使わせない貴賓室だ。大きな窓は庭の一等地に面していて、天井は高く、絨毯は厚い。寝台は呆れるほど大きく、美しく刺繡が施された天蓋がついていた。リアンの人気がそれなりにあった16、7の頃でも、片手で足りるほどしか使ったことがない。
これは、困った。万が一にも粗相はできない。
リアンは悩んだ末、自室である大部屋へ戻り、私物の奥からかつて体を慣らすために使っていた張型の箱を引っ張り出してきた。豪奢な部屋へ取って返し、隅に置かれた長椅子に四つ這いになりながら、なるべく大きい物を選んで、風呂で拡げた孔にはめ込む。
「んっ…」
薄闇に沈む広い室内に、思わず漏れた声がやけに響く。ずるずると奥まで押し込み、しばらく馴染むのを待ってから、絞めたり緩めたりしてみる。情けない恰好だが、これも仕事だ。
後ろを使うのはいつまでたっても慣れないし、違和感は大きい。きつくて苦しいが、耐えられないことはない。そして、今はそれだけしか感じない。
(あー…やっぱり、よくわからないや)
硬い張型の馴染みを確かめて徐々に動かしながら、リアンは思わずため息をつく。
14で店に出される前には半年以上かけて、館主に体を拓かれ手ほどきを受けたが、リアンは快感を拾うのがあまり得意ではなかった。感じるところを弄られればそれなりに感じるし、最後までいけもする。でもいつもそれを遠くから眺めているような、冷めた感覚がぬぐえず、快楽に集中できないのだ。
館主は「頭で考えて抱かれてるからだ」と一言評して、早々にリアンの開発を諦めた。叩き込んだのは、派手な痴態は演じずに、つつましく恥じらう役に徹すること。客を喜ばせ、反応を見ながら、喘いだり身をよじったり、それらしい反応を返すことで、閨での評価はそれなりに得られた。男娼としてはある意味で中途半端な仕上がりでここまで続けてこられたことを思うと、運がいいとしか言いようがない。
(…でも仕事なのにあんまり感じたら、疲れると思うんだけど)
男娼の中には、心底男とのまぐわいが好きで、尻はおろか喉でも簡単にいける者がいることは、リアンも知っている。まったく一体、どんな感覚なのか。
「…失礼します」
扉を叩く音がして、使用人が足音も立てずに部屋へ入ってきた。リアンの来る前からここで働いている、よく見知った中年女性だ。衣装の裾をからげて尻を弄っているリアンを見ても、顔色ひとつ変えない。
「準備をお手伝いいたします」と無表情に切り出す。
「わかりました」
足の間の始末をして、素直に従う。
窓の外が暗くなってきた。
「これを身に着けるように、と館主から言いつかっております」
使用人が卓の上に用意したのは、目元を覆う革製の道具だった。幅広の目隠し部分から、左右に二本ずつ帯が伸びていて、ご丁寧に小さな鍵まで付いていた。この構造では確かに、手伝いなしで装着するのは難しい。
眉から鼻のすぐ上まで覆う目隠しは、肌にあたる部分が布で覆われていて、革が直接顔に触れないようになっている。革製の帯は耳の上下を挟んで頭を一周し、側頭部で金具を引き締めて留めると、目隠しがぐっと顔に密着する。
金具に小さな鍵をかけて、リアンに目隠しを装着し終えた使用人は、
「鍵は館主が明日の朝、開けに来られます。それまでは決して外されませんよう」
と冷ややかに言い残して、部屋を去っていった。
チリ、と耳元で鍵と金具のぶつかる小さな音がする。
真っ暗で、何も見えない。
周囲を探ってみる。長椅子の背に触れ、ひじ掛けに触れる。距離をつかむのも難しい。布で覆う程度の目隠しなら、戯れにされたことはあるが、ここまで念入りにされるのは初めてだ。
(絶対に顔を見られたくないお客様?それとも、僕の顔を見たくないのか?)
顔はどうでもいい?いや、いっそ誰でもいいという一見客なら、それはそれで気楽だ、と自分をなぐさめる。
視界を封じられたせいか、いつもより耳がよく聞こえる気がする。誰もいない部屋では、静寂を拾い過ぎて痛いほどだ。そわそわと落ち着かす、じっとしているのが限界に達して、リアンが長椅子から立ち上がった頃、ようやく扉が開いた。
絨毯を踏み込む靴の音。部屋の空気を侵食する、自分以外の人の気配。
足音を頼りに歩み寄ったリアンと、ゆっくり大股で踏み込んできた客が、寝台の横で出会った。
「はじめまして。リアンと申します。よろしくお願いします」
リアンは前方にある人の気配に向かって名乗り、会釈をしたが、しばらく待っても返事はなかった。
(やっぱり…変な客だ)
しかし、仕事だ。気持ちを奮い立たせて、覚悟を決める。
会話を楽しんだり、酒を飲んだりという時間を挟む余地は、どこにもなさそうだ。
触れはしなかったが、相手は案外近い位置にいる。リアンの頭より高い位置から微かな息遣いが聞こえ、ほんのりと体温が感じられる。
(たぶん、体格の良い人だ…)
筋肉量が多いと、体温が高くなる。
「触れてもよろしいですか?」
とお伺いを立てるが、やはり何も返ってはこない。
こういう場所が初めてで、緊張しているのかもしれない。リアンはなるべく口角を上げて微笑んでみせてから、男に触れた。目元を使った感情表現ができないというのは、思ったより面倒だ。
予想したより高い位置にある肩に触れ、手探りで襟元を辿り、上着を脱がせてゆく。リアンよりゆうに頭一つ分は背が高い。脱がせた上着を手近な寝台の隅に置き、跪いて脚衣に手を掛けると、置物のように動かなかった男がほんのわずかに身じろいだ。
「失礼します」
リアンは声をかけてから、丁寧に前をくつろげる。
(わ…)
取り出したものの大きさに、思わず声を上げそうになる。見えていないので手触りで想像するしかないが、かなり立派だ。
そしてこの迅速な反応は、若い客だ。
ふ、と力を抜いて覚悟を決めると、両手で髪を後ろにまとめながら、口ですくって咥える。
半勃ちのものはすぐに硬く膨れ上がり、リアンの口腔を満たす。慌ててあごの力をさらに抜くが、全ては入りきらない。滑らかな舌触りが妙に鮮明に感じられて、背筋がぞくりと泡立った。ちゅ、と音を立てながら出し入れし、手で竿を撫でる。唇で亀頭を食み、鈴口を舐める。あふれてくる濃い先走りを呑み込み、また喉の奥へとくわえ込む。
(こんな立派なものをお持ちで、年増の男娼を買うって…どんな人なんだろう…)
ふと唐突にリアンは、姿も見えない相手に奉仕をしている、という倒錯的な状況に気づいた。恐ろしいことに相手からだけは、リアンが見えているのだ。妙な道具で目隠しし、口いっぱいに肉棒を頬張り、ゆらゆらと頭を動かす自分を、どんな男が、どんな顔をして見ているのだろうか。
「んんっ…」
急に這い上がってきた羞恥と恐怖に、リアンは思わずむせそうになった。
(いつもやっていることなのに、落ち着け!)
自分に言い聞かせてさらに奥まで咥えようと喉を開いた瞬間、大きな手に頭を掴まれ、ぐいっと押し込まれた。
「うぐっ…ん、んんーっっ!」
そのまま前後に強制的に動かされて、リアンの体が跳ねる。思わず男の脚を掴んで引き離そうと踏ん張るが、びくともしない。
「んんっ!うっ、ぐっ!んうぅーー」
じゅぶじゅぶと唾液のたてる音が響き、リアンの呻きに男の息が重なる。
客のペースで奉仕させられることは珍しくもないが、今夜の男は大きすぎる。喉の奥までこじ開けられて、反射を押し殺すのに必死になった。
(…飲み込んだら、絶対吐く…)
懸命に喉から力を抜き、男の律動に身を任せる。唾液も先走りも口からあふれるままにして無心でゆすられていると、口内のものがさらに張り詰めていく。
唇に触れる下生えの感触、若々しい匂い。頭上から聞こえる息遣いが荒くなってゆく。
髪の間にもぐりこんだ男の手が、地肌に触れて熱い。
苦しくて、息ができなくて、暗いはずの視界が真っ赤に染まっていく。
喉奥で熱いものがはじけて、目隠しの中でリアンは涙ぐんだ。
「うっぐ…ああっ…は、はぁ…ぅふ、はぁ」
引き抜かれた途端、どろりとした精液が口からあふれ、顎から喉へと伝っていく。何とか耐えられた。口内に残った分を飲み込んで、急いで頭を下げる。
「申し訳っ、ありません。失礼を、いたしました…」
呼吸を整えながら、衣装の裾で口元をぬぐう。
客の男が息をのんで、体を強張らせる気配がする。
(しまった、機嫌を損ねたか…?)
動揺を胡麻化すように衣装の紐を解いて立ち上がり、薄布を床に脱ぎ落とすと、もう一度手探りで距離を詰めて男の胸元に触れる。
「申し訳ありません、旦那様のものが立派で…」
恥じらうように首を傾げて寄り添い、腕を引いて寝台の方へと誘う。
男の手が、はじかれたように腰を掴む。
「え?」
ぐら、と体が傾いて足が床を離れ、浮き上がった感覚がして、次の瞬間にリアンは寝台へ放り込まれていた。大きな体にのしかかられて体が沈んだかと思うと、間髪おかずに脚を開かれる。
「ひっ、や」
見えないから次に何が起きるか全く予測できない。怖い。
「ああっ」
後ろを探られたかと思うと、太い指をぐいと入れられて、リアンの腰が逃げた。逃さないとばかりに、前も握られてせわしなくこすられる。
「待って、旦那様、待って…!」
性急な感覚の変化に慌てて、リアンが悲鳴じみた声を上げた。
いつもと全然違う、痛いほどの刺激に眩暈がしそうだ。
口淫の最中に立ち上がりかけていた前は一気に高められ、あっという間に張り詰める。張型で慣らしたはずの後ろはきゅうきゅう窄まって、出し入れされる指を絞めつけてしまう。
「あっ、あ、や、旦那様っ」
指が増やされて、リアンの下腹部をぐいと押し上げると、性器からあっけなく精が漏れた。一瞬頭が真っ白になった後で、腹を濡らす感触がじわりと追ってくる。
「ひあ、あぁ、ごめんなさい…」
落ち着いて謝罪する余裕もない。こんなに翻弄されてすぐ果てるなんて、初めての経験だった。視界が遮られることで感覚が増幅されて、いつもの何倍も快感を拾ってしまう。
息も絶え絶えのリアンは、だるい脚をより高く掲げられるのに気づいて、身をよじる。男の息遣いがリアンに近づいてきたかと思うと、尻に濡れたものをあてがわれ、一気に埋め込まれた。
「ああああっ!」
急に押し込まれた衝撃に、リアンが叫び声を上げた。
「そんっ、な、急にしなっ…あっ、あ…」
ずるりと奥まで入れ、ぎりぎりまで抜く。
あらかじめ仕込んだ軟膏と男の先走りで、中は潤っている。問題なく滑ることを確かめると、容赦ない抜き差しが始まった。
「いやぁ、あ、ああっ、激しっ…」
体の力を抜こうとしても、後ろが自然に締まってしまい、とても制御できない。締め付けた内側を硬くて太いものがこすって、リアンの感じる場所を強引に嬲っていく。
(なにっ…これ…っ)
強制的に快感が引きずり出されるような、恐怖と歓喜が体を満たした。
男の熱い息が首筋にかかる。
鎖骨にがぶりと歯を立てられて、「ひっ」とリアンがのけ反った。男は白くなめらかな胸元にいくつも口づけを落としては、噛みつき、吸い上げる。
唇の熱さと鋭い痛みに耐えきれず、リアンが無意識に男の首に手を回して縋り付くと、男はびくりと体を硬くして、リアンの中のものをいっそう大きくした。
「やだっ、だめ!あああっ」
強く突き入れて、男が達する。体の奥の柔らかいところが熱くなって、リアンもとろりと性器から蜜をこぼす。
「ひぁっ、あぁっ、あ」
いつの間にか細い腕で力いっぱい男にしがみついていることに、リアンは気づいていない。
細かく痙攣するリアンから男のものが引き抜かれて、こぼれた体液が尻を伝っていく。体が離れて冷たく感じられたのも一瞬だった。くるりとひっくり返されて這わされたかと思うと、ほぐれた孔をすぐに塞がれてしまう。
「あぁっ、旦那さま!少し、ゆっくり…っ!」
身も世もなく懇願するリアンの声は、敷布に吸い込まれて男には届かない。激しい出し入れに水音が立ち、研ぎ澄まされた耳からもリアンを犯してゆく。
「んぐっ、あ、う、ああっ」
腰をきつく掴む手が熱い。前は触られていないのに、またゆるく勃ち上がっていた。
敷布にしがみつくリアンの肩や背中に、男が歯を立てて口づける。肌が触れたところから男の高い体温が流れ込んできて、リアンの体もどんどん熱くなるようだ。
「ああっ、あ…」
喘ぐリアンを背後から突き上げながら、男が長い髪に手を伸ばした。乱れた銀の髪を片方に寄せ、細い首をむき出しにする。そして、指で探るように撫でる。
「ひぃっ、あっ、んんん!」
うなじの生え際に近いところを強く嚙まれて、リアンはあっけなく達した。
「申し訳ありません…こんな時間まで」
三回目をされている最中に意識を失ったらしい。客の姿はとっくにない。
館主が目隠しを外しに来るまで、リアンは泥のように眠っていた。普段から眠りは浅く、寝起きはいい方なのに。真っ暗にされていたことを差し引いても、リアンらしからぬ寝坊だった。
きつく押さえつけられていた目元は皮膚がすれたのか少々痛むが、それ以上に光がまぶしくてなかなか目を開けられない。見事に寝乱れた敷布の海の中で、何度も瞬いてようやく、のそりと体を起こす。
「すぐ、支度をします」
窓の外の陽は高く、おそらくすでに昼に差し掛かっている。遅刻はもちろんのこと、部屋の準備に支障が出ても罰金を科されることがあるのだ。
売れっ子でもない自分の遅刻だし、ここだってめったに使わない部屋だから、見逃してもらえないだろうか…などと考えながら視線を落とすと、うっ血や噛み跡が派手に散った胸元が目に入った。
(うわぁ…)
がっくりと肩を落とすリアンに、館主は手ずから水差しの水を注ぎ、渡した。
館主が男娼に気を遣うなんて、どういう風の吹き回しか。不審に思っていることが顔に出ないように気を付けながら、おっかなびっくり受け取る。
「ありがとう、ございます」
カサカサになった喉に水がしみこんで、甘露のように美味い。こくこくと喉が鳴る。
館主はそんなリアンをじっと見つめてから、おもむろに口を開いた。
「お前はとりあえず一週間、昨夜の御仁に買い上げられた。常連客には私の方から説明しておく」
「へ…?」
思わず間抜けな声を出して、館主を見つめ返す。
(一週間…)
しばらく言葉の意味を考えてから、リアンは猛烈な勢いでかぶりを振った。
「無理っ!無理です!一週間ずっと昨夜のお客様のお相手は、絶対できません…!」
なんだかもう、訳が分からない一夜だった。あんなのが毎日続いたら死んでしまう!
「誤解するな。王都にお住まいの方で、夜明けには帰られた。次にお見えになるのは早くても一週間後らしい。それより長くなったとしても買い上げは続けてくれと、金はすでに多めに貰っている」
リアンのあまりの慌てぶりに一瞬ひるんだ館主だったが、すぐに気を取り直して淡々と告げる。次に訪れるまで、リアンに他の客を取らせるな、ということらしい。
何日も買い上げて娼館に居続け、恋人ごっこをするような客は稀にいる。それは娼館を宿代わりに使える上、長時間お気に入りの男娼と過ごせるから買い上げているのであって、ここを離れていては意味がない。全くの無駄金だ。
(強引に抱いた詫びに、一週間休みをやろうということか…?)
変な客だ。全く腑に落ちないが、買われたものは仕方ない。ありがたく享受しておくことにする。
「承知しました」と殊勝に頷いたリアンに館主は、「ゆっくり休め」と似合わない言葉を掛けた。
ものすごく体が重くてだるい。あちこち痛むのは想定の範囲内だが、芯を抜かれたような、ふわふわとしたこの疲労感は一体何なのだろうか。
夢見るように視線をさまよわせるリアンをまたじっと見つめて、館主がニヤリと笑った。
「お前、こういうのが好きだったんだな」
目を丸くしたリアンは、しばらく考えてから両手で体を抱え、耳まで真っ赤に染めた。
「っ…違いますっ!」
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