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海色の剣、榛のまなざし
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妓楼の外が騒がしい…
お客様の話によると、妓楼の前で喧嘩が起きているらしい
シノが「見に行こうぜ」と、私を誘う
ちょっと怖いけれど好奇心に負けた私は、シノと共に妓楼の外へ出た
店の前には、大勢の人集りが出来ていた
みな、喧嘩騒動を楽しんでいるようだ
どちらが勝つか賭け事を始める者もいた
「ブラッドリー!負けるんじゃねーぞ!」と野次を飛ばす男
どうやら、ブラッドリーが誰かと戦っているらしい
たしかにブラッドリーは妓楼の用心棒のような存在だが、またこの間のような怪我はしてほしくない
私はシノと人集りを潜り抜けてブラッドリーに近づいた
するとそこで、此処にいるはずのない人物を目撃する
「フィガロ!」
私は思わず叫んだ
ずっと会いたくて堪らなかったその人が目の前にいる!
以前より背が伸びていて、昔は和服に身を包んでいた彼は今、外つ国の貴公子を思わせる出で立ちをしていた
フィガロは細剣を構えており、脇差を構えるブラッドリーと対峙していた
「晶!」
私に気づいたフィガロが私の名を呼ぶ
「オラッ!」
私に気を取られたフィガロの隙を突いて、ブラッドリーがフィガロに斬りかかる
「くっ…!」
反応が遅れたフィガロの左腕から血が滴る
「フィガロ…!ブラッドリー!もうやめてください!」
「喧嘩吹っかけといて、女に気を取られるこいつが悪いんだよ」
私はフィガロに駆け寄った
左腕を押さえて止血を試みるフィガロの肩に手を添える
「女に庇われるなんざ情けねえ奴だな」
痛みに歪んだ顔に不敵な笑みを浮かべたフィガロは「羨ましいでしょ?俺の晶は健気なんだ」と、嘯いた
ブラッドリーは「てめえには、お貴族さまの矜持はねえのかよ」と、呆れている
フィガロは「そんなものより、俺は恋人に甘やかされる方が好きなんだ」と、返す
「チッ…シラけた。やめだやめだ!野次馬共、勝ったのは俺様だぜ!」
野次馬の一人が「試合に勝って勝負に負けたってやつか!」と、ブラッドリーを煽る
ブラッドリーは「馬鹿言ってると、てめえを斬っちまうぞ!」と、野次馬を脅す
次第に野次馬達も離れていき、その場にはフィガロと私だけが残された
フィガロは「きみに言いたい事はたくさんあるけど…取り敢えず、きみに手当してもらいたいな」と、おどけてみせる
私はフィガロを妓楼に案内しながら「私もフィガロに伝えたい事があります」と、応えた
フィガロの指示を受けて応急処置をする
包帯の巻き方が甘いが、フィガロは嬉しそうだ
「ありがとう。初めてにしては上出来だよ」
「…フィガロは、どうして此処にいるんですか?」
「きみを探しに来たに決まってるじゃない。きみの母上が心配していたんだ。娘がいなくなった後、身に覚えのない金貨が届いたって」
「母様…」
「きみの母上は金貨と引き換えに娘を連れ戻してほしいと、俺に頼み込んできたよ。まったく、こんな無茶をして…」
「うぅっ…ごめんなさい…」
「はぁ…お説教をしようと思ってだけど、そう可愛い顔で泣かれちゃあ怒れないじゃない」
「ぐすん…フィガロ…」
「よしよし、一人でこんな街に来て不安だったろう?
俺がきみを母上の待つ家まで連れて行ってあげるよ」
「…あっ」
「どうしたんだい?」
「…それは、できません…」
「どうして?」
「私…血判状に、此処の掟に従うって…」
「…血判状?誰かに傷つけられたの?」
「…ブラッドリーに噛まれて…」
「あいつか…」
フィガロは一瞬とても冷たい表情をしたけど、すぐに私を安心させるように穏やかな笑みを浮かべた
「大丈夫だよ。俺が楼主と話をつけてくるからね」
「…はい」
「…っと、その前に」
「…?」
「折角、恋人と再会したんだ…ちょっとくらい、いいよね?」
「んっ…」
久しぶりの接吻に、私の心臓は早鐘を打った
お客様の話によると、妓楼の前で喧嘩が起きているらしい
シノが「見に行こうぜ」と、私を誘う
ちょっと怖いけれど好奇心に負けた私は、シノと共に妓楼の外へ出た
店の前には、大勢の人集りが出来ていた
みな、喧嘩騒動を楽しんでいるようだ
どちらが勝つか賭け事を始める者もいた
「ブラッドリー!負けるんじゃねーぞ!」と野次を飛ばす男
どうやら、ブラッドリーが誰かと戦っているらしい
たしかにブラッドリーは妓楼の用心棒のような存在だが、またこの間のような怪我はしてほしくない
私はシノと人集りを潜り抜けてブラッドリーに近づいた
するとそこで、此処にいるはずのない人物を目撃する
「フィガロ!」
私は思わず叫んだ
ずっと会いたくて堪らなかったその人が目の前にいる!
以前より背が伸びていて、昔は和服に身を包んでいた彼は今、外つ国の貴公子を思わせる出で立ちをしていた
フィガロは細剣を構えており、脇差を構えるブラッドリーと対峙していた
「晶!」
私に気づいたフィガロが私の名を呼ぶ
「オラッ!」
私に気を取られたフィガロの隙を突いて、ブラッドリーがフィガロに斬りかかる
「くっ…!」
反応が遅れたフィガロの左腕から血が滴る
「フィガロ…!ブラッドリー!もうやめてください!」
「喧嘩吹っかけといて、女に気を取られるこいつが悪いんだよ」
私はフィガロに駆け寄った
左腕を押さえて止血を試みるフィガロの肩に手を添える
「女に庇われるなんざ情けねえ奴だな」
痛みに歪んだ顔に不敵な笑みを浮かべたフィガロは「羨ましいでしょ?俺の晶は健気なんだ」と、嘯いた
ブラッドリーは「てめえには、お貴族さまの矜持はねえのかよ」と、呆れている
フィガロは「そんなものより、俺は恋人に甘やかされる方が好きなんだ」と、返す
「チッ…シラけた。やめだやめだ!野次馬共、勝ったのは俺様だぜ!」
野次馬の一人が「試合に勝って勝負に負けたってやつか!」と、ブラッドリーを煽る
ブラッドリーは「馬鹿言ってると、てめえを斬っちまうぞ!」と、野次馬を脅す
次第に野次馬達も離れていき、その場にはフィガロと私だけが残された
フィガロは「きみに言いたい事はたくさんあるけど…取り敢えず、きみに手当してもらいたいな」と、おどけてみせる
私はフィガロを妓楼に案内しながら「私もフィガロに伝えたい事があります」と、応えた
フィガロの指示を受けて応急処置をする
包帯の巻き方が甘いが、フィガロは嬉しそうだ
「ありがとう。初めてにしては上出来だよ」
「…フィガロは、どうして此処にいるんですか?」
「きみを探しに来たに決まってるじゃない。きみの母上が心配していたんだ。娘がいなくなった後、身に覚えのない金貨が届いたって」
「母様…」
「きみの母上は金貨と引き換えに娘を連れ戻してほしいと、俺に頼み込んできたよ。まったく、こんな無茶をして…」
「うぅっ…ごめんなさい…」
「はぁ…お説教をしようと思ってだけど、そう可愛い顔で泣かれちゃあ怒れないじゃない」
「ぐすん…フィガロ…」
「よしよし、一人でこんな街に来て不安だったろう?
俺がきみを母上の待つ家まで連れて行ってあげるよ」
「…あっ」
「どうしたんだい?」
「…それは、できません…」
「どうして?」
「私…血判状に、此処の掟に従うって…」
「…血判状?誰かに傷つけられたの?」
「…ブラッドリーに噛まれて…」
「あいつか…」
フィガロは一瞬とても冷たい表情をしたけど、すぐに私を安心させるように穏やかな笑みを浮かべた
「大丈夫だよ。俺が楼主と話をつけてくるからね」
「…はい」
「…っと、その前に」
「…?」
「折角、恋人と再会したんだ…ちょっとくらい、いいよね?」
「んっ…」
久しぶりの接吻に、私の心臓は早鐘を打った
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