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仕舞われた簪
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「あー…、昨日はみっともないとこ見せちまって悪かったよ…」
ネロは、ばつがわるそうに私に声を掛けた
昨夜のブラッドリーとの大喧嘩で二人共身体中痣だらけだ
「いえ…ネロは私の為に怒ってくれたんですよね」
「まぁ、あいつの態度に腹が立ったってのが一番の理由だが…。あんた、ブラッドに騙されて連れてこられたってのに、怒らないだろ?一度くらい怒ったっていいんだぜ?」
「でも、なにも疑わずについて来たのは私ですし…」
「はぁ…お人好しだな。よほどの箱入り娘らしい…。
親御さんも心配してるだろうし、会いたくねぇの?」
「…本当は帰りたいです。だけど…あの血判状がある限り、このお店の掟に従わないといけないんですよね?」
「…ああ、この街には訳ありの奴が大勢いるからな。
そういう街だからこそ掟が必要なんだ。
掟を破れば指を詰められる…それならまだ軽い方さ。
最悪、殺される…此処は、そういう街なんだよ」
ネロの言葉が私の心に重く伸し掛かる
取り返しがつかない状況に、最早怒りすら湧いてこない
こんな愚かな私を、フィガロにだけは知られたくない…
「はっ、まだ辛気臭ぇ顔してやがんな?」
気落ちしている私の元に、ブラッドリーがやって来た
「てめえは俺様が水揚げしてやるよ」
「ブラッドリーに水揚げされるくらいなら、ネロにしてもらいます」
「えっ、あ…ハイ…」
「ははっ、水揚げの意味も知らねぇガキが生意気言いやがる。誰の入れ知恵だ?」
「涼宮太夫がブラッドリーに迫られたらそう言い返せ、と」
「ミアの奴…まだ根に持ってやがんのか…」
「ははっ!また監禁されねぇように気をつけな!」
「…あんなヘマ、二度としねぇよ」
二人のやり取りを見ているうちに、幾らか気分も落ち着いてきた
気の置けない仲とは、彼等のような関係を言うのだろう
「…ふふっ」
「お?やっと笑ったな。てめえは阿呆みてぇに笑ってりゃいいんだよ」
「後で餅焼いてやるから、楽しみにしてな」
「はい!」
その日、私はフィガロから貰った簪を抽斗の奥へそっと仕舞った
この街で生きる為の、私なりのケジメだ
貴方との思い出はかけがえのないものだけど、過去に縋ってばかりはいられない
「やあ、きみがブラッドリーだね。
俺の婚約者を攫って行った盗っ人君?」
ネロは、ばつがわるそうに私に声を掛けた
昨夜のブラッドリーとの大喧嘩で二人共身体中痣だらけだ
「いえ…ネロは私の為に怒ってくれたんですよね」
「まぁ、あいつの態度に腹が立ったってのが一番の理由だが…。あんた、ブラッドに騙されて連れてこられたってのに、怒らないだろ?一度くらい怒ったっていいんだぜ?」
「でも、なにも疑わずについて来たのは私ですし…」
「はぁ…お人好しだな。よほどの箱入り娘らしい…。
親御さんも心配してるだろうし、会いたくねぇの?」
「…本当は帰りたいです。だけど…あの血判状がある限り、このお店の掟に従わないといけないんですよね?」
「…ああ、この街には訳ありの奴が大勢いるからな。
そういう街だからこそ掟が必要なんだ。
掟を破れば指を詰められる…それならまだ軽い方さ。
最悪、殺される…此処は、そういう街なんだよ」
ネロの言葉が私の心に重く伸し掛かる
取り返しがつかない状況に、最早怒りすら湧いてこない
こんな愚かな私を、フィガロにだけは知られたくない…
「はっ、まだ辛気臭ぇ顔してやがんな?」
気落ちしている私の元に、ブラッドリーがやって来た
「てめえは俺様が水揚げしてやるよ」
「ブラッドリーに水揚げされるくらいなら、ネロにしてもらいます」
「えっ、あ…ハイ…」
「ははっ、水揚げの意味も知らねぇガキが生意気言いやがる。誰の入れ知恵だ?」
「涼宮太夫がブラッドリーに迫られたらそう言い返せ、と」
「ミアの奴…まだ根に持ってやがんのか…」
「ははっ!また監禁されねぇように気をつけな!」
「…あんなヘマ、二度としねぇよ」
二人のやり取りを見ているうちに、幾らか気分も落ち着いてきた
気の置けない仲とは、彼等のような関係を言うのだろう
「…ふふっ」
「お?やっと笑ったな。てめえは阿呆みてぇに笑ってりゃいいんだよ」
「後で餅焼いてやるから、楽しみにしてな」
「はい!」
その日、私はフィガロから貰った簪を抽斗の奥へそっと仕舞った
この街で生きる為の、私なりのケジメだ
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