水魚の交わり

夜千流

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他者の絆を見つめて

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十七歳になった私はお客様への接客にも慣れ、舞や三味線も上達した
シャイロックからは、定期的に房中術の手解きを受けている
和歌や茶道、書道に古典…様々な教養を身に着けた私は、大貴族のご子息であるフィガロ・ガルシアの妻に相応しい女になれただろうか?
未だ逢うことの叶わぬ恋人を待ち続けるうちに、独り寝の夜にも慣れてしまった
もし、こうしている間にもフィガロが他の女を抱いていたら?
私は妓楼の窓から身を投げてしまうかもしれない…
フィガロを想い、ひとり遊びに耽る度に遊女らしい淫らな身体になっていく自分に嫌気が差した
楼主様は私が十八歳になる頃には、本格的にお客様と床入りさせるつもりらしい
そう考えると『初めて』をフィガロに捧げられたのは、本当に幸運だった
もし、フィガロが迎えに来てくれなければ…私は愛する人に抱かれる悦びを知らずに朽ちていく運命だったのだから…

翌日、今日はヒースクリフの定期検診の日だ
フィガロの後を任されたファウストがヒースの診察をする
レノックスがファウストの助手を務める

「ふむ…薬のお陰で梅毒の進行は緩やか…完治はしないが今の所、問題はないよ」

「ありがとうございます、ファウスト先生」

ヒースクリフは、その美貌と才覚から十歳でお客様の相手をさせられている
私が八歳の頃、彼は十一歳で花魁の地位に就いていた
それは、とても恐ろしいことだ
何も知らない無垢な子供を、大人達は寄って集って穢したのだ

診察を終えたヒースと共にフィガロの診察室から出ようとすると突然、乱暴に扉が蹴破られた

「怪我人だぜ」

ブラッドリーが怪我を負ったシノを担いでいた
シノはヒースの身請け金と薬代を払う為に、以前にも増して危険な仕事を引き受けているようだ
ヒースはシノに無茶をさせたくないので、シノを止めようとしてよく口論になる
二人は昔、「いつか、二人でこの街を出よう」と約束をしたのだという
ヒースは、シノが自分を励ますための些細な口約束だと思っていたが…シノは本気だったのだ
寝台に寝かされたシノを見つめ、ヒースが口を開く

「あんな約束しなければ…」

強い後悔の言葉に、私は自分の率直な思いを伝えた

「たとえ…約束がなくても、シノはヒースの為に同じ事をしたと思います。ヒースも、本当はわかっているんでしょう?」

ヒースは困ったような、はにかむような笑みを浮かべて頷いた
自分の為に己の全てを捧げようとするシノをヒースが慈しみ、愛さないわけがないのだ
二人の絆の強さを羨ましく思う
私も、フィガロの為に全てを捧げる事ができるだろうか…
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