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78話
しおりを挟むさっきのお父様との会話で少し気分が落ちていましたからね。
ディアのこの笑みを見ていると物凄く癒されますし、私の方まで笑顔になりますわ。
とりあえず、せっかく見つけたものですし、ディアも作りたい、と言っているので一体何をやりたいのか.....。
そう思いながら、ディアが取り出した本を覗き込みましたわ。
ですが、そこに書いてあったのを見て思わず
「もしかして......これ、ですの?」
と言ってしまいましたわよ。
だって、確かにこの本で見たことがあるので存在は知っていましたが....本物は私も見たことがないものを作ろうとしているんですもの。
私の質問に対してディアは満面の笑みで
「はいっ!この、もち?とかいうの食べてみたいです!」
と言って本の絵を指さしていますが........餅、ですか。
「ち、ちょっと待ってね?私も本で見たことはあるけど本物は見たことがないのよ」
本当に存在するのか、もわかっていないので、咄嗟にディアにそう言うと
「そうなんですか!?というか、そもそも、もちというのはどうやって手に入れる物なんでしょう?」
どうやらディアも本で読んだから食べてみたい、と考えただけで、どうやって手に入れるのか、までは考えていなかったみたいですわね。
うーん.......この本には餅の中にヨモギを入れてー...という感じの説明が書かれているんですよね。
ただ、私も餅というのは何かわかっていなかったですし、作ることになるとは想像もしていなかったので、存在だけ知っている、みたいな状況だったんですのよ。
考えてもみないとわかりませんし.......ここはこうなったら
「と、とりあえず、料理長に聞いてみましょう。何か知っているかもしれないわ」
食べ物、ということで、料理長に聞いてみるのが一番ですわよね!
ー--------
早速料理長に話を聞くために調理場に来たのは良いですが......
「おい!まだ肉を入れるのは早いって言っただろう!」
「す、すみません!」
「冷蔵庫の中にあった刻み玉ねぎはどうした?」
「それはさっきあの鍋に入れました!」
な、なんだか物凄く慌ただしいですわね。
まだ夕食まで2時間もあるのに、普段からこのような状況ですの?
そう思った私は、ディアに確認を、と思って視線を送ると
「ま、まぁ.......忘れていましたが、この時間は一番忙しいですよね」
すぐに私の視線に気付いてくれたのは良いですが、なんとも言えないような複雑そうな表情でそう呟きましたわね。
これには私も
「そ、そうなんだ」
と答えるしかありませんでしたが、この時間から忙しい、って.......。
普段特に気にもせずに食べていた食事ですが、ここまで慌ただしいのを見ると毎日、しっかりと感謝しないといけない、と思いますわ。
なんて思いながら調理場を眺めていると、流石にディアもこの中に入るのは不可能と判断したみたいで
「流石にこの状況を止めて質問するのは申し訳ないですし、今度にします」
残念そうにしていましたが、そう言って調理場に背中を向けましたわ。
最終的に、その日は料理長が常に忙しそうだった、ということもあって餅のことは聞けませんでしたが......ディアも仕方ないと言ってくれているので、そっとしておこうと思いますわ。
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