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25話 リリー・アバズリー
しおりを挟む~王宮の牢屋にて~
「はぁ......また騒いでんのか?」
とある令嬢が牢屋に入ってから、毎日騒ぎ立てて牢屋の見張りの兵士達はうんざりしていた。
「あいつが来るまでは静かだったのになぁ......そういえば、なんで牢屋に入ってんだ?」
「お前、知らないのか?なんでも公爵家の当主を追い出したんだろ?自分の家だ、とか言って」
「は!?マジかよ!そんな頭のおかしい奴って居るんだな!......いや、でもそれだけで牢屋に?」
「それがな、追い出した人が、この国の聖女だったらしいぞ」
「うわっ、じゃあ最近魔物が強くなったりとか全部あいつのせい!?」
「もう色んなところで噂になってんぞ。処分は聖女様が帰ってきてから決めるとか」
「なるほどなぁ...うるさいし、早く帰ってきて欲しいよな」
「全く、その通りだよな」
笑いながら立ち去る兵士に対して、噂の令嬢.........リリー・アバズリーは怒り狂っていた。
あの女が聖女!?
そんなの知らないわよ!子供が出来たとか、ちょっと言ってみただけじゃない!
それを真に受けて勝手に出ていったのは、あの女でしょ!?
大体、学生時代からムカつくのよ!
生まれた時から私より立場が上で、見た目も私ほどじゃないけどそこそこ良いし、友達だって私より沢山いたし!せめて、社交界で目立とうと思って頼み込んで作ったドレスだって敵わない。
だから、結婚相手がマノンだった時には歓喜したわ。
だって、あのバカ男、私に夢中だったもの!
しかもお父様曰く、当主になったとか言うじゃない!
だから誘惑してあげたの。
たかが伯爵子息だったときは振ったけど、まぁ、あんなに夢中だったからいけるでしょって思ったから。
.........それなのに、金もあんまり持ってなかったし、既成事実を作れば良いって思ったけど凄い下手くそだし!
でも、あの女とは1回も関係を持っていないって聞いた時には凄い優越感だったわ。
だから、わざと家にも帰さないように毎日誘惑した。あの女が悔しがっている顔が見たかったから。
子供を作ったらその顔が見れるって思った。
...............でも、想像してた反応とは全く違った。
傷付くことも無く、ただ冷静に対応されただけだった。
せっかく、愛している夫を奪ってあげたのに、あの反応には愛なんて感じられなかった。
どこで間違えた?
どこで失敗した?
いや、間違いも失敗も無い。勝手に出ていったあの女が悪い。
私はお父様とマノンに騙されていただけ。
ここから出たら今までと同じように...いや、今まで以上にいい生活が出来る。
だって私は可愛いんだから。
だって私は皆に好かれているから。
だって私は被害者なんだから。
そうよ!私は悪くない。
全部、あのシエラ・ハーヴェストが悪いのよ!
そんなことを考えているリリーの体から、真っ黒なオーラが溢れていたが、それに気付くものは誰もいなかった。
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