まさかその程度で私の婚約者を奪ったつもりですか?

榎夜

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11話

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「私はこの国の次期王妃になるハニーアと申しますわ」

これが留学初日のハニーア様の挨拶でしたわ。

まだなれるかどうかもわからないのに、凄い自信ですわね。

そのおかげで、最近は私の様子を窺う人がとても増えてしまいましたわ。

本当に厄介なことになりましたね。

「マリアンヌ様!あれは一体何ですの!?」

とエリザベス様にそのことについて問い詰められましたので、肩をすくめながら

「さぁ.....それは私も聞きたいですわ」

とだけ返しておきました。

ハニーア様は王妃教育を受けたことがないので、何を頑張るのか、この1週間注目してみていましたが、なにやら王妃というものを勘違いしていらっしゃいますね。

その証拠に

「あら?まだアルフレッド様の婚約者のマリアンヌ様ではありませんか」

ちょうど本人様が話しかけてきましたわ。

後ろに10人くらいの取り巻きを連れて.......。

前回のリリアさんもそうですが、人からの支持があれば王妃になれるとか勘違いしているんでしょうかね?

ハニーア様がこの1週間でやったことは、自分の派閥を作り上げる、ということでした。

しかも、前回のことが凝りていないのかリリアさんのときと同じような顔が見えますわね。

もうここまでくると、今回ハニーア様の方についている人たちは私のことが嫌いなのでは?と思いますわ。

なんてことを考えながら

「ハニーア様、ごきげんよう」

しっかり挨拶は返しますわ。

ほら、挨拶のできない人は信用も失いますからね。

一方、ハニーア様は自慢げに

「うふふ、ほら私の方がアルフレッド様に相応しいから沢山の人達が集まっていますわ」

と小さな胸を張っています。

相応しいから、ですか。

そう思いながら取り巻きの方を見ると、何人かは私から目を逸らしました。

そりゃあ、地位の高い人についたほうが有利ですものね。

別に責めたりなんかしませんわ。

なので

「そうですか」

とだけ返してエリザベス様と一緒にその場を後にしようとすると、

「何よ!その態度は!」

あら?何も言わず立ち去ろうとしましたがそうはいかないみたいですね。

はぁ.....面倒ですが、何もわかっていないであろうハニーア様にアドバイスをしてあげましょうか。

クルリ、と向きを変えて、ハニーア様を見ると少し怯みましたね。

こうやって面と向かって話すのは初めてです。

ふぅ.....と一呼吸をしてから

「あのですね....知っていると思うので言いませんでしたが、人気があるだけでは王妃になんてなれません」

というと、ハニーア様はキョトンとした顔をしながら

「はぁ?皆が慕っている人が王妃になるべきでしょう?」

と首を傾げました。

一応王族なのに、そんなこともわからないんですね、と言いたくなったのをぐっと堪えて

「いえ、違います。王妃というのは陛下に何かがあった時に国のトップに立っても問題のない人です。もちろん何かなくても陛下の補佐が出来るということも求められます。ただ皆から慕われている、というのは良いことです」

「そうでしょう!?」

「ですが、それだけです。国の財政は?隣国との関係性は?他にも沢山のことを気にしなければならないんですよ。側室は寵愛を受けていればなれます。ですが、王妃は違うのです」

きっとハニーア様は王妃が仕事をしているのを見たことが無いのでしょう。

それに、ハニーア様の母親はとても性格が良さそうな方でした。

きっと、隣国の陛下もそんな姿に惚れたんでしょうね。

ただ、教養がなかったから側室になったという感じなんでしょう。

そう思っていると

「マリアンヌ様も私のお母様のことをバカにするのね!」

あぁ、そうですよね。

今の私の言い方だったら側室は陛下に愛してもらってれば誰でもなれる、みたいな言い方でしたものね。

それは申し訳ないですわ。

「いえ、バカになどしていませんわ。寵愛というのは簡単に受けることは出来ませんし、側室だって王室に大切なことです」

私がそう言うと、ハニーア様は何か言いたそうにしていましたが

「.......もういいわ!」

と言って取り巻きを引き連れて立ち去っていきました。

はぁ....こうやって毎回絡まれるのは厄介ですわね。

アルフレッド様に言ってどうにかなればいいですが、対処するのは難しいでしょう。
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