まさかその程度で私の婚約者を奪ったつもりですか?

榎夜

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13話

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「はぁ....疲れましたわ」

学園から帰ってきて家に着くなり倒れ込むように座り込むとコンコン、と控えめなノックと共にお父様が現れました。

わざわざ部屋に来るなんて珍しいですわね。

普段なら書斎に呼び出すとかしますのに......。

なんて思っていると

「マリアンヌ、殿下が王宮に来るよう伝令があったぞ」

早速要件を伝えてきましたわ。

しかもとてつもなく面倒くさそうな要件ですわね。

思わず、はぁ......と溜息をついた後に

「嫌ですわ。アレックス様のせいで変な人に絡まれて大変な思いをしていますのに」

そう言うとお父様は

「だが重要な話だと聞いたが?」

と言ってきましたが別に重要な話でも関係ありませんわ。

そう思いながら

「なんの話なんでしょうねぇ」

とりあえずとぼけてみることにしました。

「仕方ないから行ってあげようとは思わんのか?」

「思いませんわ。面倒くさい話なのは想像出来ますもの」

私がそう言うと、お父様は困った顔をしながら笑っていました。

そして

「これは殿下が可哀そうだな」

と言ってきたので、ついつい

「まぁ!どうしてそんなことを言いますの?大体、今回のことはアルフレッド様が任せろと言っていたのに全然任せられていませんのではありませんか?」

そう言うと

「まぁまぁ、殿下だって忙しいんだろう」

お父様もタジタジですわね。

はぁ......忙しい、ですか。

「そうは言っても......私だって忙しいですわ」

そうです。私だってこう見えてやることが沢山ありますわ。

それなのに

「毎日毎日、訳の分からないことで喧嘩を売ってこられて、しかも用事がある、ない、構わずですわよ?」

本っ当に、そういうことは暇な人の間でやって欲しいものですわ。

王妃教育がなくても私はとてつもなく忙しいんです。

普通にこの国で生活している人なら皆知っていると思ったんですが、ね。

「だがそれは殿下が悪いわけではないんじゃないか?」

「甘いですわね。アルフレッド様がきつめに言っておいてくれれば多少の被害は収まりますわよ。現に私もそうだったじゃないですか」

「確かになぁ......」

.........なんだかお父様が可哀想になってきましたわ。

面倒ですが、行くしかないんですかね。

......とその前に、お父様に聞きたいことがあるんでした。

「そういえば、前に求婚してきたあの方、どこの国の人でしたっけ?」

実は今から3年前、とてつもなくしつこくて熱心に求婚されたことかありますの。

ただ、その時にはもうアルフレッド様の婚約者でしたし相手の態度も気に食わなくてお断りしましたが。

すると

「ん?あぁ、あの失礼な奴か」

お父様も気に食わなかったんですわね。

確か王太子だとか、なんとかで、自分が断られるわけがないと自信満々に求婚の手紙を送ってきたんですよね。

もちろん、その手紙は陛下に見せましたわ。

大爆笑でしたわね。

お父様は少し考えた後に

「確か、タタルット国じゃなかったか?」

と答えてきました。

......なるほど。

タタルット国ですか。

「どうしたんだ?」

お父様はなぜそんなことを聞いたのか、という感じですが、アルフレッド様のところに用事が出来てしまったので重たい腰をあげながら

「仕方がないので王宮に行ってきますわ。多分夕飯は食べてくると思うので皆で食べてくださいませ」

私がそう言うと、お父様はあからさまにホッとした顔をしていますわ。

なんか少し腹が立ちますが、行ってきましょうか。
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