まさかその程度で私の婚約者を奪ったつもりですか？

42話

待ち合わせ時間に10分遅れてきたユーフェミア様が、今何を思っているかなんてわかりませんが、とりあえずそれぞれ飲み物が来るまでは話をしない方が良いですわね。

そう思って、無言のまま再び5分後、やっと飲み物が届きましたわ。

これは、憶測ですが、ユーフェミア様は一応私の方が身分的に上だから私が黙っていても何も言わなかったんでしょうね。

普通なら、無言の空気に耐えられず、何かしら話しかけてきますもの。

なんて思いながら、今持ってきてもらったばかりの飲み物を一口飲んで

「なんだか久しぶりですわね」

とユーフェミア様に話しかけると

「そうですね。なんだか2人とも忙しそうにしていましたし.......」

なんだか悲しそうな顔をしていますわね。

正直、何を思ってそんな顔をしているのか、私には理解が出来ませんわ。

そう言いたくなりましたが、流石に言うことは出来ないので

「そればかりは仕方ありませんわ。ありもしない冤罪を着せられそうになったり、散々な噂を流されたりで調査していましたの」

と私が言うと、一瞬だけユーフェミア様の動きが止まったような気がしますわね。

まぁ、本当に一瞬なので気付かないと思いますけどね。

するとユーフェミア様は

「やっぱりそうだったんですのね。私はあの噂なんて信じていませんよ」

そう言って、ニッコリと微笑みました。

信じていない、ですか。

私もニッコリと微笑んで

「それは嬉しいですわ。でも、もう少しで解決しそうですの」

そろそろ始めましょうかね。

ユーフェミア様は私の言葉に

「そうなんですか？」

と目を見開いて驚いています。

正直、嘘なんですけどね。

いつ解決するか、なんてわかったものではありませんわ。

でもそれを伝えるわけにもいかないので

「えぇ、私の領地で目撃情報があったのよ。よく見かける馬車があるということで、今詳しく聞いていますわ」

私がそう言うと

「そ、そうなんですね」

今、明らかに動揺しましたわね。

まだわかっていないとはいえ、自分だとバレるのは怖いですもの。

でもそれにまだ気付かないふりをして

「えぇ。他にも証言が揃ってきているみたいで、明日アルフレッド様に話を聞くつもりですわ」

本当はもうわかっているんですけどね。

一応明日、ということにしていますわ。

「それは....良かったですね」

「嬉しいですわ。明日には全ての問題が解決しますもの」

すると、ユーフェミア様に変化が起きましたわ。

「どうされましたの？」

とつい私が尋ねると

「い、いえ.......何でもありません」

ユーフェミア様はそう言っていますが、隠せていませんわよ？

だって

「なんでもないって......震えていますわよ？」

ユーフェミア様が持っているカップがゆらゆらと震えています。

すると

「え？」

ユーフェミア様は気付いていなかったのか驚いた顔をして、自分の手を見ていますわ。

.........そろそろでしょうか？

ユーフェミア様を心配しているように一旦見せて、落ち着いたのを見計らって

「何かありましたの？」

なるべくユーフェミア様の目を見てそう尋ねました。

さぁ、どう答えるでしょう？

ここまで来たら逃げられませんわよ？