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フェイン・マスタージュ伯爵子息
1話
しおりを挟むアリフィア様が婚約を破棄したと今学園では話題となっている。
それもそのはずで貴族の婚約というのは家同士の決まりや約束事があるため、そう簡単にはなかったことに出来ない、というのが当然だと思っていたからだ。
過去にも婚約解消した人たちがいるとは聞いたことがあるが、国や家の問題で仕方なくという理由がほとんどだ......と記憶しているし、実際に今婚約を結んでいる大半の人達は家の繋がり、国で決められたもののどちらかに当てはまっていると思う。
......つまり、今回すんなりと婚約がなくなったのはアリフィア様の家の爵位が低いということと、破棄することによる問題が大きなものではないからこそ出来たということだな。
とはいえ、今のキーン様は流石の俺も可哀そうになるくらいに衰弱していっているとは思うが.......。
自分には叶わなさそうなことに思わず苦笑をしながら今日も婚約者である『ミーナ・フレジレッド』伯爵令嬢の家の到着すると
「お父様ぁ~!」
という可愛い子ぶった甲高い声が玄関まで響いてきた。
はぁ......この声がいつも以上に耳障りに聞こえてしまうのはやはり婚約破棄できるかもしれない、という希望が少なからずあるからだろうか......?
なんて思いながら声のするところに行くと、今日もフレジレッド伯爵にべったりとくっ付いたミーナが満面の笑みで一方的に話をしていて、伯爵は面倒くさそうに対応をしている、という光景が目に入ってきた。
俺と同い年だというのにいつまでも子供の気持ちが抜けていないのか、伯爵の腕に絡みつけている反対の腕には白いうさぎのぬいぐるみを抱いていて、服装も5歳の令嬢が着るようなフリフリのドレス......加えて髪形までもが他の令嬢は幼すぎるという理由で絶対にやらない、高い位置でのツインテール。
流石に社交界の時はぬいぐるみを置いて来てくれるが、その格好だけでも隣にいて恥ずかしいと思ってしまうのは俺が厳しすぎるからなのだろうか?
なんて思いながら2人に近付いていくと、俺に気付いた伯爵は
「フェイン、来ていたのだな」
スッと腕に張り付いていたミーナを引き剥がして俺の近くに来てくれたから
「はい、たった今到着しました」
と軽く挨拶をしてチラッと隣のミーナに視線を向けると、婚約者に向ける表情とは真逆な......憎い人を見るような、そんな目で俺のことを睨みつけていた。
伯爵がミーナに視線を向けるとパッと顔が変わって再び満面の笑みなのだが
「ミーナ......私とフェインはやることがあるのだ、お前は自分の部屋に戻りなさい」
再び自分の腕に絡みついてこようとするミーナをさり気なく避けながら話をする伯爵の姿はこれがいつも通りのことなんだと察するのには十分なもので、俺も慣れてしまっている。
伯爵の言葉に
「えぇ~........」
と渋っていたものの、流石に言うことを聞かないのはマズいということくらいはわかっているようで、大人しく部屋に向かってくれたから今日はまだ良い方だな。
酷い時なんて俺と伯爵が話をしていても、何か作業をしていてもべったりとくっ付いてくるんだから......その時のことを考えると思わず苦笑してしまいそうになるのをグッと堪えて、
「さて、行こうか」
という伯爵の言葉に頷き、今日も執務室へと向かった。
なぜ俺が伯爵と一緒に執務室にいるのか。
それはこの家の子供はミーナしかいない為、本来の跡取りはミーナになるわけだが生憎ミーナにそのようなことが出来るとは思えないくらい…ハッキリと言ってしまえば頭が悪い。
学園のレポートはなんとか自分の力で完成させているもののその文章は褒められたものではなく、先生も頭を抱えているくらい、料理や裁縫も出来ない。
挙句の果てに生意気な性格のせいで領民達からの評判も悪い。
そんなミーナに伯爵は気付いているのか否か……いや、気付いているからこそ、俺に跡取りの仕事を教えこんでいるのかもしれないな。
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