私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜

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189話

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とりあえず、と思ってユーティン様同様、私もなぜレオンハルト様がユーティン様と婚約していなかったのか、疑問に思いながらチラッと隣にいるレオンハルト様に視線を向けましたわ。

すると、レオンハルト様はユーティン様の質問に対して、はぁ.....と深いため息をついたかと思ったら

「逆に聞くけど、僕のことを知っている、と言ったけど、何を知っているの?セリスティア様には自分のことを隠さずに話したけど、ユーティン嬢には僕のことを話したことがないよね」

淡々とそう言いましたの。

これには、私も驚きましたが、ユーティン様も相当驚いているみたいで

「なっ.......」

と顔を真っ赤にさせていますわ。

レオンハルト様の何を知っているのか、ですか.....。

確かに、婚約するにあたって変に隠し事をしても後に厄介になることがわかっているので、出来るだけ包み隠さずレオンハルト様とはお話していますわ。

そのおかげで、レオンハルト様がこの国の令嬢をどう思っているのか、しっかりと把握することが出来ていますし、私自身そのような令嬢にならないように気を付けよう、と意識が出来ていますもの。

幼い頃から仲良くしていた、とのことなので、てっきりユーティン様にも私と同じような話をしているものだと思っていましたが......ユーティン様の様子を見ると、レオンハルト様の言っていることは本当ですのね。

長年一緒に居るのに相手のことを知らないなんて.....一体今まで何をしていたのか、逆に気になりますわ。

なんて思っていると、顔を真っ赤にして固まっているユーティン様に容赦なく、レオンハルト様は

「毎回会うたびに自分の事ばかり話して、自慢ばかりして.....僕の話を聞いてくれた?自分のことばかりだったよね」

と言葉を続けていますわね。

あー.....なんだか納得ですわ。

さっきの2人の様子を見て私も思っていましたが、自分が聞き手に回る、ということをしない人ですのね。

どうりでさっきの2人のやり取りも、ユーティン様の一方的なものだったわけですわ。

そう思いながら、少し気になって辺りを見渡してみると、どうやらユーティン様はレオンハルト様以外にも同じようなことをしているみたいで

「確かに、私も普段はユーティン様の一方的な話を聞いているだけですわね」

「今まで気にしたことがありませんでしたが、私も......」

という声が聞こえてきましたわ。

あらまぁ.......ユーティン様の第一印象としては、男性の一歩後ろで大人しくニコニコ微笑んでいそうな人、だったんですが、どうやら真逆だったみたいですわね。

まぁ、人の婚約者を奪う気満々で近付いてくる令嬢にいい人はいない、ということですわね。

心の中でそう思いながらユーティン様を眺めていると、一通り言いたいことは伝えたんでしょう。

レオンハルト様が大きくため息をついて

「じゃあ、僕は自分の婚約者と一緒にいたいから失礼するよ」

と言って、私の腰に手を置いたまま、ユーティン様の近くを後にしましたわ。

立ち去る前に、ユーティン様から何か言われると思って身構えていましたが......レオンハルト様の言葉が余程ショックだったんでしょうね。

呆然としたまま立ち尽くすだけで、少し安心しましたわ。

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