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190話
しおりを挟むレオンハルト様に手を引かれて、ユーティン様から距離を取った私達は、再び目立たないように、と会場の端の方で立ち止まりましたわ。
てっきりさっきまでの刺さるような視線もそのままついてくると思っていましたが......ユーティン様の方が気になるみたいで、やっとあの不愉快な視線を感じなくなりましたわね。
はぁ......とりあえず、次に見つかってしまうまでの間とはいえ一安心ですわね。
なんて思いながら、ほぼ無意識にため息をついていると、そんな私を見たレオンハルト様が
「本当にごめんね」
と申し訳なさそうに謝罪をしてきましたわ。
ですが、この件に関しては私がレオンハルト様の隣にピッタリとくついていたら回避できたことですし、ユーティン様の見た目ではあのような行動をするなんて想像が出来ませんでしたからね。
眉を下げているレオンハルト様に
「いや、あれは誰も予想が出来ない行動でしたわ」
苦笑しながらそう言いましたが、
「そうだとはいえ、僕がもっと早い段階でユーティン嬢にハッキリと言っていたら、ここまで面倒なことにはならなかったのに.......」
本当に申し訳なく思っているみたいで、斜め下を向きながらそう呟きましたわ。
確かに、レオンハルト様がもっと早い段階で、ユーティン様に対して厳しい対応をしていたらあれほど調子に乗らなかったでしょうね。
とはいえ、レオンハルト様も想定外のことみたいでしたし、既に終わったことを言っても.....ということで、下を向いてしまっているレオンハルト様に
「仕方がありません」
と声をかけたんですが、なかなか立ち直れないみたいでシュンとした顔をしていますわ。
はぁ.....そのような顔をしていたら私とレオンハルト様が喧嘩をしてしまっている、みたいではありませんか。
どうにかして、レオンハルト様を立ち直らせる方法があればいいんですが.......。
そう思いながら辺りを見渡してみますが、レオンハルト様の交友関係を知らないので、助けを求めることも出来ませんわ。
うーん.....と、とりあえず、何か会話をしないとですわね。
なんとか会話の話題を、と思って咄嗟に
「それにしても、既に2人の令嬢を見ましたが本当に凄い勢いで言い寄ってきますのね」
そう言うと、私の言葉にレオンハルト様が
「うーん......ユーティン嬢があのような行動をとったのは今回が初めてなんだよね。だからこそ、僕も反応するのが遅れてしまったという.......言い訳に聞こえてしまうかもしれないけど」
とは言ったものの、再びシュンとした顔をしてしまったではありませんか。
ただ、ユーティン様は普段からあのような行動をするわけではないんですのね。
それを聞いたらレオンハルト様がユーティン様に対して強く言えなかった理由もわかりますわ。
幼馴染だから、ということもありますが、他の令嬢のような行動はとらないと思っていたんでしょう。
もしかして、ですが、ユーティン様はレオンハルト様の隣に私がいるのでわざと今回のような行動をとったんじゃないでしょうか?
自分の方がレオンハルト様と仲が良いんだ、ということを示したかった、みたいな感じで。
まぁ、そのようなことをしなくても幼馴染と争おうなんて思ってもいませんし、元々対抗心も持っていませんわよね。
なんて思いながら、眉を下げているレオンハルト様を見て苦笑しましたわ。
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