私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜

文字の大きさ
235 / 344

235話

しおりを挟む
国に帰ることになっている前日、私の手には一通の手紙が握られていましたわ。

というのも、今日の朝に殿下からの手紙と一緒に届いたものなんですが、送ってきた人の名前を見て驚いてしまいましたのよね。

「これ......何が書かれていると思う?」

そう言って、名前が書かれている部分をユーリにも見せながら尋ねると

「なんでしょう.......領地経営が大変だから戻ってこい、とか、そんな感じでしょうか?」

と言って、私と同様に思いっきり眉間に皺を寄せていますわ。

まぁ、そうですわよね、という感じなんですが。

私とユーリが思わず眉間に皺を寄せてしまう相手........手紙の送り主というのは子爵....いや、叔父様だったんですのよね。

一応、この手紙を開ける前に殿下からの手紙も読ませてもらいましたが、叔父様が送りたい、と言ったから送ったけど読むか読まないか、は任せると書かれていましたわ。

きっと殿下と陛下はこの手紙の内容を見てから私に送ってきていると思っているので、読んでも大丈夫な内容だ、というのは確かなんですのよね。

ただ、叔父様からの、というのが読む気のなくなる.......い、いや、別に叔父様が嫌いなわけではありませんわよ?

領地経営も私の自由にさせてもらっていましたし、婚約破棄されるたびに新しく婚約者を用意してくれて叔父様なりに私のことを考えているのはわかりますのよ。

ただ、あの人たちに対しては何もしないと言いますか.....自分の妻と娘を蔑ろにしすぎていて、その結果私に被害が、ということを考えると好きにはならないんですのよね。

うーん......改めて叔父様の立場や立ち位置を考えてみたら、難しいのかもしれませんけどね。

なんて思いながら、封筒をジッと見つめていると

「でも、お母さんからの手紙には子爵は物凄く反省していて、お母さんたちにも謝罪をしに来た、って書いてありましたよ?」

ミリアが布団のカバーを抱えながらそう言いましたわね。

というのも、一昨日メイド長から手紙があって、家の状況は聞いていましたのよ。

その際に叔父様が急に侯爵家に来たかと思ったら、お屋敷に残っている従者たち全員に深々と頭を下げて謝罪して回ったんだとか..........。

これには

「まぁ、メイド長が嘘をつくとは思えないから本当のことなんでしょうけど、なぜこのタイミングなのかしら?しかも謝罪って......なんの謝罪なんでしょう?」

というのが私の本音ですわね。

だって、今更になって謝罪って.......何のための謝罪なのか、何を思っての謝罪なのか。

こう言ったら可哀そうかもしれませんが、私からすると何を意味しているのかさっぱりわかりませんわ。

そう思いながら苦笑していると、私の言葉にミリアは

「私も詳しくはわかりませんが、今まで申し訳ない、みたいな感じだった、とのことです」

と言ってつられて苦笑していますが、今までのことの謝罪、って、それこそ今更過ぎますのよ。

もしかして、この手紙も訳のわからない謝罪、とかそんな感じなんでしょうか?

そう思った瞬間、開けるか捨てるか、で悩んでいましたが急にこの手紙がいらなく思えてきましたわね。

ですが、そんな私に対して今までのやり取りを見ていたディアが

「とりあえず、開けてみましょうよ!読んでみないと始まりませんよ!」

と言ってニッコリと満面の笑みでペーパーナイフを渡してきましたわ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?

朝陽千早
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」 そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち? ――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど? 地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。 けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。 はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。 ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。 「見る目がないのは君のほうだ」 「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」 格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。 そんな姿を、もう私は振り返らない。 ――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。

BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。 だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。 女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね? けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

処理中です...