私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜

文字の大きさ
252 / 344

252話

しおりを挟む

正直、国に帰る今日まで、シャリア様がなぜ私に対して仲良くしてくれるのか、そして良くしてくれるのかわからないままでしたが.........理由はわからない、ということで良いのかもしれませんわね。

だって、仲良くなるのに理由はいらないですし、シャリア様が私のことを気に入ってくれた、ということだけは変わらないことですもの。

私としてもこの国で友人が出来て本当に嬉しいですし、相手がシャリア様で本当に良かった、と思っていますわ。

色々と言いたいことはありますが、私の目の前にあるシャリア様の手をギュッと握って

「本当ですわね.......私も同じ気持ちですわ」

と私が言うと、寂しそうに苦笑していたシャリア様でしたが

「まぁ、私も遊びに行きますわね。セリスティアの家に泊めてもらう、というのも良いけど、どうせ隣国の王太子たちとはお茶会を開いたりもあるだろうし」

さも当然のようにそう言いましたわね。

え?今の流れっていうのは、少し寂しそうにしながらも友情を誓い合う、みたいな流れだったんじゃありませんの?

しかも、王太子とお茶会を開く、なんて知りませんでしたわよ?

想定外の展開に思わずキョトンとしながらシャリア様を見ると、私の思ったことが伝わったんでしょうね。

いたずらが成功した子供のように二ッと笑って

「ほら、私って悲しい空気みたいなのが嫌いなんですの」

そう言ってきましたわ。

なんだかシャリア様の普段とは違った一面が見られたような気がして嬉しいですが.....でも状況が状況なので、反応に困りますわね。

なんて思いながら、何も言わずにただただ苦笑をしていると

「お嬢様、馬車の準備が終わりましたが、すぐに出発しますか?」

いつの間に近くに来たのかわかりませんが、ミリアにそう言われましたわね。

準備が終わった、と言っているのにも関わらず反射的にさっきまで荷物が置いてあった場所や、ユーリ、ディア、ネイトの姿を確認すると、確かにさっきまでの慌ただしさはなくなって、今では落ち着いていますわ。

ただ、皆メイド服や調理着のままなんですが........着替えたりはしないのか、と疑問に思った私は

「ありがとう、皆も準備は終わっているの?」

と尋ねると

「まぁ、私たちの準備なんてあるようでないようなものですし......」

ミリアがそう言って苦笑していますわね。

ただ、やっぱり着替える様子はありませんし、もしかして気付いていないのか、と思った私は、最初は遠回しに言っていましたがもう諦めて

「着替えは?メイド服で帰るの?」

と率直に聞いてしまいましたわ。

だって、このまま疑問に思っているのもモヤモヤしますし、気付いていないだけなら私が言うことによって気付くことも出来ますしね。

なんて思いながらミリアの答えを待っていると、私の質問に一瞬キョトンとしていたミリアでしたが、すぐに、あぁ、と納得したように頷くと

「とりあえず最初はこの服で帰って、途中で着替えようと思いまして......ほら、お嬢様も最初はドレスを着ているので、私たちが私服なのはおかしいじゃないですか」

そう言ってメイド服の裾をクイっと持ち上げましたわ。

ミリアの言葉に、後ろで話を聞いていたユーリも頷いている、ということは本当なんでしょうけど.....私がドレスだから、ってわざわざ気を遣ってくれていましたのね。

それに気付かないなんて.....私もまだまだですわね......。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?

朝陽千早
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」 そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち? ――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど? 地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。 けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。 はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。 ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。 「見る目がないのは君のほうだ」 「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」 格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。 そんな姿を、もう私は振り返らない。 ――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。

BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。 だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。 女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね? けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。

処理中です...