私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

榎夜

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253話

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さて、準備が終わった、ということでここから我が家までは遠いですからね。

なるべく早めに出発をしないと、到着するのがどんどん遅くなってしまいますわ。

そう思った私は、ユーリ達に視線で馬車に乗り込むことを伝えると、いち早くそれに気付いたミリアがサッと馬車の扉を開けてくれましたわ。

それを見たレオンハルト様達も出発することを察したんでしょう。

少し寂しそうに微笑みながら

「とりあえず、来月には挨拶も兼ねてそっちに向かうことになると思うから」

「お元気で、ですわ」

と2人はそれぞれ声をかけてくれましたわね。

レオンハルト様の来月には.....ということに関して、私は何も聞いていなかったんですが.......とりあえず我が家に泊りに来る、ということですわよね?

ということは、帰宅してすぐにでも部屋を確保しないといけない、ということですが......帰宅したらメイド長に言っておかないとですわね。

......って、その件に関しては後からユーリ達と話をしておきましょう。

とにかく、2人とは最後のお別れ、というわけでもありませんし、私も寂しいのは確かですが、しんみりとした気分でお別れはしたくありませんわ。

なので、寂しそうに微笑む2人に、私は満面の笑みでこう言って馬車に向かいましたわ。

「また今度、とだけ言っておきますね」

そんな私の言葉を聞いた2人は、一瞬驚いた顔をしていましたが、すぐにニッコリと微笑んで頷いてくれました。

レオンハルト様とシャリア様に別れを告げた私は、ゆっくりと馬車に近付くと、今度は伯父様と伯母様、そしてブレイドが私に近付いてきましたわね。

なんだか本当に最後の別れのような気がして、落ち着きがなくなってしまいますが.......。

ソワソワとした気分の中、

「気を付けるのよ。国を出ても賊がいる可能性もあるから気を抜かないように」

という伯母様の顔があまりにも真剣で少し怖くなってきましたわ。

ただ、運が良いことに乗ってきた馬車には貴族の証ともいえる家紋は書かれていませんし、用意してくれたメイド長には申し訳ないですが綺麗な馬車だとも言えません。

そう考えると、襲われてしまう心配は少ないようにも思えますが........伯母様の言う通り油断しない方が良いですわね。

なんて思いながら、苦笑しながら伯母様の言葉に頷くと、今度は伯父様が

「またいつでも遊びに来なさい。待っているからな」

伯母様とは正反対に、物凄く優しい口調でそう言ってきたので、思わず涙が出てしまいそうになりましたわよ。

ただ、最後の最後で泣いてしまうとせっかく明るく帰ろうと思っていたのに無駄になってしまいます。

なんだか寂しい空気にもなってしまいますし、ここは泣くわけにはいきませんわ。

そう思った私は、既に溜まっていた涙を隠すようにパッと頭を下げてこう言いました。

「長い間、本当にお世話になりました」

伯父様たちにも無事にお別れを告げた私は、涙がこぼれてしまう前に逃げる様に馬車の中に乗り込みましたわ。

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