私のことを追い出したいらしいので、お望み通り出て行って差し上げますわ

258話

強張った空気の中、馬車に乗り込んできたネイトに対して、私は早速

「門番は何と言っていましたの？」

と質問をしてみましたわ。

皆が興味津々、という様子でネイトの言葉を待ちますが、話を聞いて私は思わず言葉を失ってしまいましたわ。

「それが........」

と真剣な表情で話し始めたネイトの話曰く、門番はネイトから色々と話を聞いて、後ろの馬車に乗っている人達の話を聞きに行ってくれたみたいなんですのよね。

それこそ、何が目的で、私たちの馬車を追いかけまわしていたのか、について理由を聞き出そうと門番なりに頑張ってくれたみたいなんですの。

まぁ、時間がかかってしまった理由というのが、それですわよね。

さて、そして後ろの馬車について、なんですが、何故私たちのことを追いかけまわしていたのかと言うと、嫌がらせ目的だ、とのことなんですのよね。

私たちのことを怖がらせることが目的.....みたいな感じで、無理やり襲いに行く、とかそんなつもりは全くないとのことなんですのよ。

ただ、私たちを怖がらせた結果、事故にでもあってしまったら.......それはそれで仕方がないくらいの、そんな感覚だったみたいですわ。

その話を聞いたユーリは、多分自分では気付いていないんでしょうけど、開いた口が塞がらない、という様子で唖然としてしまっていますわね。

一方のディアの方は

「い、いやいやいや.....ありえないでしょう..........」

と小さく呟いていますし、ミリアは無言ではありますが眉間に皺を寄せて静かに怒っているみたいですわ。

ちなみに、私は、というと何も言うことがないと言いますか.........言葉が思いつかないんですのよね。

だって、急にそのようなことを言われても困りますし......事故に遭っても仕方がない、ということは、死んでしまってもいい、とは思っていましたのよね？

なんだか暗殺の為に近付いてきた人よりも気分が悪くなりますわね。

そう思いながら、複雑そうな顔をしているネイトに

「一体なぜそのようなことをしたのか、わかりましたの？」

と質問をすると

「なんでも、お嬢様からの命令だ、というだけで、そのお嬢様が一体誰なのか、はわからないらしいんですよ」

とのことですわ。

これはネイトに何か言うのもおかしい話なので、とりあえず

「そうなんですのね........」

とは頷きましたが...........お嬢様、ですか。

つまり、貴族かお金持ちの家の人が犯人だということですわよね。

正直、そうだとは思っていましたが、自分の家の従者をまさかこのように使うとは想定外でしたわね。

頼むとしたら外部の人間か、犯人がバレないような人を選ぶんだろう、と思っていたので驚きですわよ。

まぁ、従者意外に頼めないくらい急ぎのお願いだったのかもしれませんわね。

なんて思っていると、ネイトは

「とりあえず、門番の方であの馬車に乗っている人達は全員拘束して公爵に判断を任せる、とのことなので、出発しても大丈夫だとのことでした」

そう言って、この話を締めましたわ。