325 / 344
325話 アーリアside
しおりを挟むお父様とお母様が離婚した。
それでも、私たちの生活は全く変わらなかったわ。
お母様はお父様が居た時のように男漁りを辞めなかったし.....それどころか、お母様は領地内に留まらず隣の伯爵家の領地にまで行って平民の男たちを漁っているのよ。
しかもその平民達を我が家に連れてきて、今では毎日別の男たちが家に出入りしている、という状況になっているわ。
はぁ......それなのに、私にはまだ婚約者すら出来ないなんて......。
お母様のように色んな男性に声をかけているのに、一体どうしてなの?
そんなことを思いながら、家の廊下を歩いていると正面からお母様が歩いてきたわ。
今日のお母様の服装は誰かのお葬式でもないのに真っ黒なドレスに胸元が下品に開いたドレスで、スカート部分には大きなスリットが入っているわ。
誰がどう見て大胆なドレスで、男性が見たら皆顔を赤くするだろう。
........首から下だけを見たら、の話だけど。
首から上を見ると、普段通り濃い化粧をしたただのおばさんという感じで、私が男性だったら誘われてもすぐに断るくらい酷い顔をしているわ。
まぁ、お母様は自分の顔に自信があるみたいだし、お父様がいなくなったことで子爵家のお金もお母様が管理しているからね。
そう考えると、平民だったら良い相手なのかもしれないわ。
なんて思いながら、口も利きたくなかった私は無言でお母様の横をすり抜けようと足を速めた。
すると、そんな私を見たお母様は
「まだ婚約者の1人も出来ないの?私の娘なのに本当に情けないわね」
小馬鹿にするようにそう言ってきたけど.......自分は離婚されたくせに、よく私にそんなことを言って来るわよね。
貴族が離婚だなんて......もう少し恥じないといけないはずなのに。
そう思った私は、ヘラヘラと呑気に笑っているお母様をキッと睨みつけた。
でも、睨みつけるだけで何も言い返さなかったわ。
だって、言い返したら負けたような気分になるし、こんな女と同じようになりたくない、と思ったんだもの。
そんな私の気持ちを察したのか、お母様は
「都合の悪いことはすぐに黙ってしまうの、あの人にそっくりね。あんたもここから出て行ったらいいのに」
不機嫌そうにそう言うと、フンっと鼻で笑って私を見下したような目で見て来たわ。
確かにお父様はあまりしゃべらない人だったけど、それって言い返したらお母様がうるさいからだと思うのよね。
まぁ、当の本人はそれがわかっていないみたいだし、知らない方が幸せだということもあるから何もいわないけど。
なんて思っていると、お母様の両隣にいた男性は
「まぁまぁ、そんなこと言わないでさっさと行きましょうよ」
「子爵と違って可愛くないんだから、そう簡単に婚約者なんて出来ないですよ」
お母様の機嫌を取るように、私との会話の間に入ってきたわ。
正直、貴族の会話に割って入るなんてありえない、と思ったけど、それよりも
「もうっ!調子がいいんだから」
と言ったお母様が、仮にも娘がいる目の前で女になったのがただ気持ちが悪かった。
男たちに言われたからなのか、その後すぐにお母様たちは私の存在を無視するかのように廊下を歩いて行ったけど
「........気持ち悪」
と私が呟いたのは聞こえていたのか、一瞬だけ立ち止まっていたわ。
17
あなたにおすすめの小説
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?
朝陽千早
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」
そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち?
――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど?
地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。
けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。
はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。
ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。
「見る目がないのは君のほうだ」
「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」
格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。
そんな姿を、もう私は振り返らない。
――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。
ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。
BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。
だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。
女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね?
けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる