326 / 344
326話 アーリアside
しおりを挟むお母様が男性達と部屋に籠って3時間後。
私は、というと特にやることもないから部屋の中に閉じこもって、ただただボーっとしていたわ。
はぁ......気のせいかしら?
お父様とお母様が離婚してから、ため息をつく回数が物凄く増えた気がするわ。
お父様が家にいても話なんてしなかったし、お母様も普段と変わらない生活を送っているだけなのに、なぜなのかしら?
そんなことを思いながら、何度見ても変わらないのに机の引き出しを開けては閉めてを繰り返して、時間を潰していると、
「ちょっと!」
という声と共にバンッ!と大きな音を立てて急に部屋の扉が開いた。
これには驚いて、ビクッと体が大きく反応してしまったけど、お母様の前だということもあって、なるべく冷静に驚いてしまったことがバレないように声のした方に向きを変えた。
すると、そこにはあの下品な黒いドレスを脱いでタオルを体に巻き付けたお母様が立っていて、私のことを憎々しく睨みつけてきていたわ。
本当に貴族としてありえないわね。
例え家の中でもこんな格好で歩き回るなんて非常識すぎるわ。
そう思いながら、お母様が何を話しにきたのか、と言葉を待っていると、お母様は
「あんた、お母様である私に対して気持ち悪いって言ったわね」
私のことを睨みつけながら、そう言ったわ。
わざわざそれに対して文句を言いに来たのか、と思うとつい笑ってしまいそうになったけど、それと同時に、言ったからなんだろう、としか思わなかった私は、睨みつけて来るお母様に対して
「それがなに?本当に気持ちが悪いんだもの」
冷静に、淡々とした口調でそう言ってやったわ。
すると、そんな私の態度が気に食わなかったんでしょうね。
私の言葉に対してお母様は
「親に向かってその態度、あり得ないわ!」
まるで癇癪を起した子供のように地面をダンっと踏んでそう言ってきたわ。
はぁ........これが母親だと思うと本当に恥ずかしいわよね。
侯爵家に入り浸っていた頃はお母様のこんな姿を見ても何も思わなかったけど.......やっぱり1つ嫌なところが見えてしまうとダメなのかしら?
それとも、自分でも気付かないうちに、元々嫌だと思っていたけど見て見ぬ振りをしていた、とかそんな感じなのかしら?
なんて思いながら、怒っているお母様を冷静に、無感情で眺めていると
「お、奥様.........アーリア様........」
蚊の鳴く声のような、本当に小さな声で、扉の近くから私とお母様を呼ぶ声が聞えてきたわ。
この声に対して
「何よ!」
と叫ぶお母様を横目にメイドに視線を向けると、怒鳴られたことに対して涙目になりながらも
「そ、その.......役人がいらっしゃっています」
そう言って、私たちが何かを言う前に
「お、応接室に案内をしています!」
とだけ言い残してその場を後にしたわ。
きっと、お母様があまりにも不機嫌だったから長居したくなかったんでしょうね。
私でも、この面倒なお母様を早く追い出したいもの。
はぁ......なぜ役人が来たのかもわからないし.......なんだか面倒なことになるような気がしてきたわ。
20
あなたにおすすめの小説
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?
朝陽千早
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」
そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち?
――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど?
地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。
けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。
はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。
ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。
「見る目がないのは君のほうだ」
「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」
格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。
そんな姿を、もう私は振り返らない。
――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。
ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
【完結】元お義父様が謝りに来ました。 「婚約破棄にした息子を許して欲しい」って…。
BBやっこ
恋愛
婚約はお父様の親友同士の約束だった。
だから、生まれた時から婚約者だったし。成長を共にしたようなもの。仲もほどほどに良かった。そんな私達も学園に入学して、色んな人と交流する中。彼は変わったわ。
女学生と腕を組んでいたという、噂とか。婚約破棄、婚約者はにないと言っている。噂よね?
けど、噂が本当ではなくても、真にうけて行動する人もいる。やり方は選べた筈なのに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる