6 / 88
5話 フレグリッドside
しおりを挟むアリスティアとフージュン辺境伯が立ち去った後、会場はシーンと静まり返っていた。
まぁ、それも当然だな。
だって、会場にいる人全員が、初めて竜の姿を見たんだから。
はぁ......まさかあの田舎者が竜騎士になっていたとは思ってもいなかった。
婚約者である俺にそんな大事なことを教えないなんて..........やはり婚約破棄して正解だな。
そもそも、俺を差し置いて竜騎士になるなど女のくせに生意気だとは思わないか?
そう思いながら、アリスティア達がいなくなった窓を呆然と見ている父上に
「さぁ!邪魔者はいなくなりました!パーティーを再開しましょう!」
と声をかけた。
それなのに、父上はなぜか俺の言葉に対して
「邪魔者だと........?」
と呟くだけで、待ってみてもその場を動くことはなかった。
なんだ........?
あぁ、もしかして、婚約破棄するときはこのような形ではなくもっとやんわりと伝えたかった、と言うことなんだろうか?
まぁ、父上がそう思うのも理解が出来る。
だって、竜騎士を敵に回す、というのは最初は恐ろしい事だもんな。
だが、竜騎士ということを以外は田舎者の金食い虫だ。
辺境伯などいなくても我が国はどうにでもなる。
そう思いながら父上を見たが、俺に対して何かを話すわけでもなく、ただただその場に立ち尽くすだけだった。
会場にいる貴族たちも、父上が動かないものだからどうすればいいか悩んでいるらしく、固まってしまっているし、会場の雰囲気だって最悪だ。
はぁ......これも、アリスティアがわざわざ竜なんて呼んでしまったから、こんなことに。
そう思いながら、可愛らしく俺の腕を掴んでいるベネッサに
「ベネッサ、まだダンスは始まらないみたいだ。せっかくだし料理を取りに行こうか」
そう言って微笑むと、急に話しかけられたことに一瞬だけ驚いていたが、すぐに
「えぇ、フレグリッド様」
と優しく微笑んで、俺が差し出したばかりの手に自身の手を置いてくれた。
うん、やはり王妃になるような令嬢はこれくらい大人しくないとな。
アリスティアのような令嬢と結婚しても何かと文句を言ってきて面倒そうだ。
そんなことを思いながら、誰も手を付けていなかった料理の乗ったテーブルへ移動していると、その途中急に俺たちの周りを兵士たちが取り囲んだではないか。
これには咄嗟に
「な、なんだ!?お、お前たち!誰の命令でこんなことをしているんだ!」
と叫んでしまったが.........今まで大人しかった兵士たちが、しかも主である俺のことを取り囲むなんて何事だ!?
無礼にも程がある!
そう思いながら、ベネッサを守るように兵士達から隠すと、俺の正面に立っている兵士が
「大人しくしろ!これは陛下の命令だ!」
と叫んだのが聞こえてきた。
はぁ?俺たちを取り囲んだのが父上の命令だと?
今まで動くこともなく、黙っていたのに、急に何が起こっているんだ!?
そう思って顔だけを父上に向けると、近くにいる兵士に、静かに
「この者たちを会場から追い出してくれ」
と指示をしているのが聞こえてきた。
それと同時に、俺たちは兵士達に両脇をしっかりと抱えられて、会場にいる貴族達にクスクスと笑われながら会場を後にすることになったんだ。
くっそ.....俺がこんな惨めな思いをするのも、全てアリスティアのせいだ!
75
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです
ほーみ
恋愛
「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」
その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。
──王都の学園で、私は彼と出会った。
彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。
貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
「お前との婚約はなかったことに」と言われたので、全財産持って逃げました
ほーみ
恋愛
その日、私は生まれて初めて「人間ってここまで自己中心的になれるんだ」と知った。
「レイナ・エルンスト。お前との婚約は、なかったことにしたい」
そう言ったのは、私の婚約者であり王太子であるエドワルド殿下だった。
「……は?」
まぬけな声が出た。無理もない。私は何の前触れもなく、突然、婚約を破棄されたのだから。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる