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56話
しおりを挟むヌミア山から出発して30分。
特に何も問題なくグレズリューン王国へと戻った私たちは、とりあえずコシューミアのことを話しておかないと、と思っていたんですが......そういえば陛下は仕事があるから、と執務室に行ってしまいましたのよね。
なんて思いながら、到着した応接室の中を見渡していると、リュックの中から
「ぴぃっ」
という可愛い鳴き声が聞こえてきましたわ。
さっき様子を見た時は、気持ちよさそうに眠っていたのでそっとしていましたが、目が覚めたみたいですわね。
せっかくですし、一度外に出してあげた方が......と思ってファスナーに手をかけると、それよりも先に
「鞄に入れたままだと狭いだろ」
と言ってディーヴァンがリュックのファスナーを開けましたわね。
やっぱり、そっけない態度をとっていますが、自分の妹の子供というのは可愛いものなんでしょう。
......あら?ということは、コシューミアにとってディーヴァンは伯父様......ですわよね?
チラッとディーヴァンを見ると、鞄から出てきたばかりのコシューミアが
「ぴぃぴぃっ」
と鳴きながら飛びついてくるのを焦った顔をして受け止めていましたわ。
最初はどうなるか、と思いましたが......これなら仲良くやって行けそうですわね。
そう思いながら2人の様子を眺めていると、コンコン、と応接室の扉をノックする音が聞こえてきましたわ。
きっと私たちが戻った、ということを聞いてリーファイ様が戻って来てくれたんだ、と思って扉を開けに行くと、そこにはリーファイ様ではなくカイロス様が立っていて、その後ろでは
「なんか面白いことがあるような気がしたんだよなぁ」
と言いながらニヤニヤと笑っているガルファーの姿が。
面白そうなこと、といえば確かにそうかもしれませんが........相変わらず人の姿をしたガルファーは意地の悪そうな顔をしていますわね。
まぁ、その顔と同様に性格も少し難があるので、そんなガルファーと契約をしているカイロス様を尊敬してしまいますわ。
なんて思いながら、扉の前でオロオロとしているカイロス様に
「え、えーっと......陛下から手紙を預かってきてくれたんじゃないんですの?」
と苦笑しながら尋ねると
「ごめんね。どうしてもガルファーが応接室に向かう、って騒いでて、こっちも何があるのか.......」
と答えている途中で、ガルファーが
「ちょっと失礼しまーす」
なんて言いながら応接室の中に入ってきたではありませんか。
あぁ、もちろんここは我が家ではありませんし、隣国の王宮ですからね?
入ってくるな、というのは無理なのはわかっていますわよ?
ただ、あまりにもガルファーが流れる様な動きで入ってきた物だから驚いてしまって
「え、えぇ!?」
と大きな声を出してしまいましたわ。
ま、まぁ......面白そうなこと、と言っても中にはディーヴァンとコシューミアがいるくらいですからね。
別に何も問題はないと思っていますが.........。
そう思ったときでしたわ。
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