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44話
しおりを挟む私が客室に入ると、
「ユーフェミア!!」
今まで一度も向けたことのなかった満面な笑みでアレックス様が駆け寄ってきました。
その後ろには呆然としているリリアーナがいますね。
私の変わりように驚いたんでしょうか?
まぁ、それは仕方ありませんよね。
だって、この家に来てから毎日エルマたちが手間暇かけて私のお手入れをしてくれていますもの。
何もしていなかった頃と比べられても困りますわ。
なんてことを思いながら
「それで?今日は何の用事ですか?私も暇ではないので手短にお願いしますね」
と2人に向かってそう言いました。
あら?やっぱり2人とも驚いていますわ。
今まで私がこんなに強気で言うことはありませんでしたものね。
だって、言うだけ無駄でしたので。
冷めた目で2人を眺めていると、最初に口を開いたのはリリアーナでした。
「じゃ、じゃあ手短に話すわ!何なのよ、あの新聞は!勝手に私を悪者にしないでくれる!?なにがナルジェンダ国の次期王妃よ!私の方が適任よ!変わりなさい!」
相変わらず、めちゃくちゃですね。
隣にいるレオンハルト様なんて笑いをこらえるのに必死ですよ?
私はわざと大きめにため息をついて
「適任、ねぇ....貴方は大好きなアレックス様と結婚して、マーランナ国の王妃になるんでしょう?なんでそんな話になるのか理解できないわ」
と小馬鹿にしているような雰囲気を出しながら言いました。
案の定、バカにされていると気付いたみたいで顔を真っ赤にさせて目を見開いています。
私にこんなことを言われるなんて思ってなかったでしょうね。
アレックス様まで驚いた顔をして
「ユーフェミア...どうしたんだ?」
と呟いているのが聞こえてきました。
私が客室に向かう前、レオンハルト様に話したことはこの事なんです。
私はマーランナ国に居たとき大人しくて、口答えのしない、地味な奴を貫き通してきました。
ですが、それが原因でここまで調子に乗せてしまったので、小さな仕返し、ってやつですわ。
私の態度にイラついて無礼を働くと2人を捕まえられるし、一石二鳥ですよ。
すると、アレックス様は何を思ったのか
「お前のせいだな....」
そう言って、親の仇を見るような鋭い視線をレオンハルト様に向け始めました。
そして、
「お前がユーフェミアに何かしたんだろう!?」
目を血走らせながら叫んでいるアレックス様は異常としか表現が思いつきませんわ。
レオンハルト様は急にアレックス様に変な言いがかりをつけられましたが、
「はぁ....なんでこんな態度をとられるのかわかってないの?」
ため息をつきながら冷静に話し始めました。
「君はミアが婚約者だった時、何をした?そこの女と一緒になってミアのことをバカにして、散々な扱いをして....俺からしたら自業自得としか言いようがないよ」
本当にその通りですね。
私にこんな態度を取られる原因をなぜ考えられないんでしょう?
アレックス様はこんなに頭の悪い人でしたっけ?
.....あ、リリアーナと遊びだしてから悪くなったんですっけ?
レオンハルト様に図星をつかれたアレックス様は
「うるさいっ!」
と言いながら殴りかかろうとしましたが、鍛錬を怠ったアレックス様なんて、レオンハルト様からしたら軟弱すぎますよね。
レオンハルト様は殴りかかってきたアレックス様の拳を受け止めたあと、腕をひねりあげました。
すると、アレックス様は無様に床に転がってしまい、間抜けな顔をしています。
本当に格好悪いですわ。
レオンハルト様は
「ねぇ、ミア。やっぱりこいつらと話をするなんて無理な話なんだよ」
そう言って、私の手を取って客室を出ようとしたので
「そうみたいですね」
と頷いて、扉に手をかけようとすると後ろから
「待ちなさいよ!」
という甲高い声が響きました。
はぁ......こんなことになってもまだ話をしたいんですか?
今日で何度目かわからないため息をついてから
「私たちは暇じゃないって言ったわよね?こうやって話が出来ただけでも感謝しなさい」
と言うと
「はぁ?何言ってるの!?私にそんなこと言っても良いと思ってるの!?」
意味わからない!という様子ですね。
やっぱりマーランナ国から何も聞かされていないみたいです。
完全にこの2人は見捨てられましたね。
「えぇ、もちろんよ。だって貴方も言ってたじゃない。平民ごときが貴族と話そうなんて図々しいのよって」
私がそう言うと、リリアーナは今日1番の驚いた顔をして固まってしまいました。
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