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バブルフィッシュ

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    王都にはたくさんの人がいるから綺麗だろうなと期待してたのに…何で?
(たまにちょっとだけきらきらしてる人がいるけど、私みたいに集まってないよ?何で?)
(メイの魔力が美味しいからだと思うにゃ?)
    えええ…私一人でこんなにきらきらしてたら恥ずかしいじゃん!

(心配しなくても、精霊視のスキルを持っているのは他には妖精族位のものだ)
    エルフとかドワーフ、小人族の人か…それにしても、美味しいか…何で? 

     ちょっとお洒落なお店でバブルフィッシュのフライを食べた。
   うん。美味しい!てか、生でも行けそう。刺身…カルパッチョもいいかもね。
    タルタルソースが欲しいけど、このタレでもいいな。レモンベースで、さっぱりしている。
    こんなお洒落なお店でもお箸で食べるんだ…慣れてるからいいけど、ナイフとフォークの方が珍しいみたいだ。

    周囲を見ると、流石に肉料理はナイフが付いている。
    ライ麦パンはちょっと硬いけど、付け合わせのスープに浸すと美味しい。
    学校の給食はライ麦パンだから流石にこの硬さにも慣れた。

「ランス、食欲ないの?」
(どうも、酸味のあるソースは苦手だ…メイの料理なら食べられるのだがな)
(ランス、それは贅沢というものだ。主の為にも人の料理には慣れねばならない)
(ううむ…)
    肉にかかっているソースを少し貰った…そういえば、動物は酸味が苦手だ。

    ここのお店は酸味がある料理が多いし、ちょっと可哀想だったかも。シュガーはラビットシチューを頼んで正解だったね。

    亜空間に戻って、フレイムには作り置きのご飯をあげたらみんな羨ましそうな顔で見ていた。
「…仕方ないな。ちょっとスマホの中で作ってくる」
    もうお風呂に入って寝る時間だし、時間の経過しないスマホの中がいいよね。

    バブルフィッシュの刺身、カルパッチョ。やはり生がいいな。ちゃんとピュアをかけたから、寄生虫の心配もないし。
    滑かな舌触りと弾力のある食感。出荷もしてしまおう。

    もう今日の分の仕事は終わっているから、料理だけしてスマホを出た。
「バブルフィッシュ料理だよ。簡単な物だけど」
    あっというまに無くなった。みんな凄い食欲。
「やはり主の作る料理が一番だな」
「刺身でも?」
「何であれ、手がかかれば旨い」
    あ、そう。
    まあ、バブルフィッシュは美味しかったから、農園では釣れないし、ここで採るしかない。また明日もバブルフィッシュの日にしようかな。

    次の日。普通の槍に命中補正の付与をつけてバブルフィッシュに挑む。初めて使った付与だけど、結構変わる物だ。
    ただ、そのせいでちょっと私達の近くでバブルフィッシュを狙っていた冒険者に絡まれた。

    付与職人に頼めば付けてくれると思うし、この程度の事で絡んで来るような冒険者はヤブランやランスの敵にはなり得ない。
(まあ、メイ以外の職人に頼んでもここまでにはならないと思うがな)
(職人本人のスキル熟練度も関わって来ると、分かっているだろう?)
    ランスとヤブランに次々に言われたけど、命中のスキルはそう難しいスキルじゃないと思う。

    お陰でちょっと目立ってしまった。バブルフィッシュはまた日を改めて、今日は8階層に進もう。

    木の人形?変な動きをしている。
「こら!お前達!そう簡単に惑わされてどうする!」
    はっと後ろを振り向くと、ランスとシュガーがヤブランに攻撃している。

    これ、あの魔物のせい?
   
    鑑定    ウッドパペット    その動きで他者を混乱させる
「一旦ダンジョンの外に出よう」
    ヤブランは、ランスとシュガーの腕を掴んで魔法石に触れる。私も慌てて後に続いた。

    一旦麻痺させてから、癒しの聖域を使う。…さて、どうしたものか。けど、私にはどうして攻撃しなかったのかな?
「主に害をなすまでは行かなくて良かった。本能で拒否したのだろう…何かしらの対策が必要だな」
   うん。とりあえずはギルドで情報収集かな?

    ギルドの二階には銀貨一枚を払うと入れる部屋があって、冒険に必要な知識を記した本が置かれている。
    図書館と違うのは、ギルド職員が見張っている所かな。必要なら代読もしてくれるけど、荒っぽい人達の集まる所だから、監視の意味合いが大きい。

    鎮静香…なる程。錬金術で作れそうだな。売ってもいるけど、材料のブルーハーブはこの辺にたくさん生えてるみたいだし。

    ふうん…高下駄が…っと。攻略本は読み過ぎるとこれから面白くなくなるからね。2ページ先まで読んじゃったけど、9階層も厄介みたいだったからまあいいか。

    図書館と違ってここには他に興味をひく本はないし、なら早速採取に出掛けよう。

    元々王都から離れた所にゲートを開いてあったので、フレイムも外に出してあげた。

    時折ランスにフライングディスクを投げてあげながら、ヤブランと一緒に薬草採取。
「ヤブランも眠いならいいよ?寝てて」
    他に人はいないし、陽射しも傾いてきたから、そう暑くもなく、眠くなっても仕方ない。

    シュガーはとっくにお昼寝してるし、真面目過ぎるヤブランも、たまには気を緩めていいと思う。

    ブルーハーブの他にも、目についた薬草を採取していく。
    ランスがフライングディスクと一緒にラビットも咥えて持ってきた。
「よーしよし。偉いよ」
    狼だけど、犬と殆ど変わりないんだよね。
    血抜き処理して、またフライングディスクを投げてやる。

    私は薬作り。シュガーとアロカシアはそうめんを作る為、生地を踏んでいる。
「フレイムは錬金術に興味があるの?」
(んー。ボクにも出来る事ないかなーって)
「なら、今日採ってきた薬草を選別して?」
(うん。いいよー。名前とか色々教えてね?)

    鎮静香の香りを焚き染めて、明日の準備は出来た。
    フレイムに、薬草や錬金術について教えながら、私も料理に加わる。
「今日はそうめんと、冷しゃぶにしようかな」
「では、我は麺を茹でよう」
「にゃーは葉っぱをちぎるにゃ」

    精密魔力操作になってから、肉の薄切りも容易になった。本当は包丁で出来た方がいいんだろうけど、なかなか難しいのだ。
    素麺と呼ぶべきか、それとも冷麦か。ちょっと微妙な太さだな。

    ウッドパペット自体はそんなに強い魔物ではない。混乱が効かなければ、容易に剣で倒せる。

    …木材。薪に使うようにちゃんと切れている。
「何ていうか…微妙」
    燃焼石があるから、必要ないんだよね。一年位は余裕で持つし。
    そういえば、私には混乱は効いてなかったな。

    まあ、いい事だよね!
    次の階層は、事前に分かっていたのでみんなに高下駄を履いてもらう。
「この階層の通路は海苔が繁殖してるけど、毒持ちの魚もいるから気をつけて」
    手や足も、靴に刺さる位の勢いで刺してくるから、高下駄は必須アイテム。
    そしてこの網で海苔を掬う。
「メイはこのドロドロが欲しいにゃ?」
「これが海苔になるんだよ」
「うにゃ…これがあの黒い紙になるにゃ?」
「そうだよ。だからたくさん集めてね?」

    バランスを崩して倒れたり、滑って転ぶのさえ注意すれば、比較的安全な階層だ。
    何故かあんまり冒険者はいないけど、海苔は養殖されてるから安くしか売れないのかもしれない。
    楽しいし、自分で海苔を作るのも楽しみだから作るけどね。

    海苔の佃煮もいいな。ご飯に乗せて食べたい。
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