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事の顛末と、仕返し

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    取り敢えず今日もエマさんの家に寄ってみた。スキルのお陰で顔色は良くなっているものの、目覚める様子はない。
「フレイムは大丈夫?」

「平気なの。ボク自身も癒してくれるから。ボクも状態異常回復の魔法を試したり色々してみたけど、何も起こらなかったの」

「何か…見落としているのかな?」
「かもしれないの」

    改めて部屋の中を見渡す。女性らしい気遣いが各所に見受けられる。あの花束は、ガイさんからのプレゼントだろうか?それとも例の男爵の…
「メイもあの花が気になるの?」
「私もって…」

    部屋にあってもおかしくない物だけど、何かそぐわない気もする。客観的に見ておかしくはないんだけど…
「うーん。おかしいといえば、一番変なのは、呪いの術者、或いはそれを頼んだ人がいなさそうって事だけど」

「まさか、一晩中スキルを?エマの為に…済まない」
「あ、おはようございます。スキルのお陰で、体は大丈夫になりましたけど…元を断たないと、根本的な解決にはなりませんから、気休めにしかなりませんけど」

「それでも、ありがとう。もしエマが目覚めたら、自分に出来る限りの事をすると誓うよ」
    まあ、それはいいんだけど。ギルドを介さない依頼だけど、中途半端にはしたくない。
    ここでフレイムを撤退させてスキルを止めてしまったら、長くはもたないだろう。

「そういえばあの花は、あなたから?」
「いや、俺じゃないけど、奴からの贈り物とはいえ花には罪はないし、捨てたりしたら、きっとエマは怒ると思う」

    うーん。恋人としてそれはいいのかな?
    確かに花に罪はないけど…

「でも、存在感のある花ですよね?」
「まあ…薔薇は高級感あるけど、金持ちって気がして好きじゃないな」

    んー?

    看破     エマに繋がる花    呪いの代替え品であり、対象

    あー。うん。水分補給の謎は解けたかな?じゃあ本人は…

    看破    エマ    仮死状態

「そっか…だから切り花が元気だったんだね」

「メイ、何か分かったの?」
「一応ね…」
    可哀想だけど、このままじゃ本人死んじゃうからね。
    花に解呪をかけると、花は消滅した。
「え?何を…!エマ!」

    エマさんが、体を起こした。
「あ、無理せずゆっくりと。スキルである程度は活動できますけど、ずっと動いてなかったので」
「エマ…良かった」
「ごめんなさい…ガイ。私…呪いの魔法を使おうとして、怖くなって…対象を花にしたら、意識がそっちに移ってしまったみたい…自分ではどうにも出来なくて…ありがとうございました」

「ううん。偶々役に立つスキルを持っていただけなの」
「でも…起きたと分かったら、私…また男爵様に喚ばれるのかしら…折角元の体に戻れたのに」

「じゃあ、ちょっと嫌がらせしちゃいましょう!私の仲間達が色々と調べてくれてたので」
「ええ?!…そんな、貴族の方に嫌がらせなんて、不敬罪に問われるわ!」
「大丈夫。あの男爵の人も呪いは怖がっていたし、元々薄かった頭頂部を更に悲劇的にして、それを呪いのせいだと思わせれば。そうすれば呪いが怖くてもう人の物に手を出そうとは思わないよ」

「でも、どうやって?失敗したらあなたが」
「それは大丈夫です。私の仲間達は優秀ですから」

「メイ…悪い顔してるの」
「だって、大好きな人がいるのに権力で引き離そうとするなんて、いけない事だよ」
    鬘とかウイッグとか、この世界にだってあるのだ。みんな髪色がカラフルだから、作るのはちょっと大変かもだけど。

「方法は敢えて聞かないけど、敵には回したくないな…エマを助けてくれたのだし、お仲間にも充分なお礼をさせて貰うよ」

「それは、気持ちだけで充分だけど…今更だけど、フレイムにエマさんがどうにかされるとは思わなかったんですか?」
「えっ…そういえば、どうしてだろう?」
    エマさんは、とても綺麗な人だ。フレイムが手を出すとは思わないけど、恋人としては不安にならなかったのかな?

「多分…君の瞳が子供のように純粋で、そういう人物には見えなかったからかな。商売柄、多少は人を見る目にも自信あるし」

    そうだね。実際にまだ4歳だし、種族も違う。
「ボクにも大切な人がいるからなの」
「え?いつの間に?全然そんな素振りなかったのに」
「メイには教えてあげないの」

    多分…ううん、絶対、対象は私だろう。シュガーと同じように、フレイムには恋なんてまだ早いのだ。かくいう私にも、そういう感情は早い…というか、眷属達の方が大切だからね。

    その晩、女性を泣かせると呪いをかけると、夢枕に立って威圧を込めて、囁いた。
    薄くなっている所を中心に、魔法で永久脱毛処理して、うなされている男爵の枕元に、抜けた毛をまとめておいた。

(ごめんなさい。でも、奥さんもいるし、同意して付き合っているならともかく、脅してまで女性を手に入れるなんて、絶対ダメなんだからね!)

    外に出ると、心配性の眷属達が集まっていた。
(あのような些事、我に任せれば良いのに…しかし、あの程度で良かったのか?我なら全ての髪と髭まで抜いてやったものを)

    うん。ヤブランに任せないで良かった。
(そこまではさすがにね。髪は長い友達というし)
    まあ、私のやった事もかなり酷いと思うけど、反省はしないよ。

    魔法使いのエマさんには、こっそり祝福を与えた。これで思い通りの魔法が使えるようになるだろう。

    正直、パスの繋がっていないエマさんに祝福を与えられるとは思ってなかったけど、思ったより簡単だった。

    ガイさんのお店は魔法道具も扱う雑貨店だったので、冒険者らしく水の涌き出るコップを欲しがっていた事にして、貰った。

    お金も払いたそうにしてたけど、全然困ってないし、そのお金でエマさんを幸せにしてあげて下さいって言ったら、言われなくてもって、笑ってた。

    明日はのんびり休んで、そうしたらまたダンジョンに挑もう。

    
    
    
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