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取り敢えずの対策として

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    とはいえ、私一人に出来る事なんて、限られている。

    島の寒さをどうにか出来ないかと思って、結界やら色々やってみたけど、結界を張っている間、私が動けなくなっちゃったら、本末転倒なんだよね。

    それに、長年暮らしている彼らなりに色々対策はされていて、隙間のない住居には燃焼石の入った壺もあるし、温風の出る魔道具もある。

    勿論服装は例のヌメヌメエキスを上手く使って、ヒー〇テックのように暖かい。
「それでも、育たない野菜の方が多いだろうし、ダンジョンで全て賄えるはずもないですよね?」

「そうですね。服等は作れないですし、そういう物は、偽装の魔道具を使ってまとめて買いに行ってますよ」
「外見的特徴はその耳だけだと思うから、それさえ見せなければ、変にびくびくするより堂々としてた方が目立たないんじや?」

「それでも…幼い頃から寝物語として人族の恐ろしさは聞かされてきたので」
    悪い人ばかりじゃないし、エルフ族の事を知らない人もいると思うけど。
    それでも、絶滅寸前まで追い詰められた恐怖を取り除くのはいい面も悪い面もあると思う。

    勿論、私が農園で採れた食料を支援する事も出来るけど、私が来られなくなったら?年取っておばあちゃんになったら…

    …ん?そうか…農園か。
    私の力でスマホを創り出せれば…検索機能は付けられなくても、この世界の物しか育てられなくても、充分に役に立つ。
    出荷先はこの天空の塔ダンジョンで設定してもいい。

    蚊とかウツボカズラとか、魔力や血を冒険者から掠めとれるから、運営は上手く行ってる。でも、スマホからの出荷でリンクさせて運営は…どうなのかな?
    それ以前に、いくらイメージしても、精密機械を創り出せるか自信ないな…

    それに、スマホのスキルは私の個人スキルなんだよね。

    一旦亜空間に戻り、板にスイッチが一つ付いた物をイメージして創ってみる。

    …データの引き継ぎは、無理だな…勿論一人しか入れないし、複数人スイッチに登録するのも無理。
    外部に魔力登録は…今の私には…

    ふわふわとした優しい光に気がついて、目が覚めた。
「メイ、起きたの」
「フレイム…私、寝ちゃってた?」
「みんな心配したの。大丈夫?」
「うん…平気」
    力尽きたのだろう。魔力とはまた違うので、魔力枯渇による弊害もなさそうだ。

    どのみち、今日は動くのは無理そうだ。
    なら、取説…攻略本を書こう。いきなりスイッチだけ渡されても、困るだけだし、ゲームだという事も理解出来ないだろう。

「メタル、一緒に中に入ってチェックして貰っていいかな?」
(まさか…それがスマホなのですか?)
「さすがにスマホとは呼べないかな。農園のゲームしか出来ないし」

    中に入ると、まるっきりの初期状態だ。これは想定内。メタルにも動いて貰い、あちこち確認して貰う。
(閉ざされた、主の魔力空間。それは一緒ですね。森にも入れるようです)
    農具一式もボロのままだ。
    カブの種も持っている。蒔いておけば、明日には実るだろう。

    武器屋もあるから、依頼すればインゴットにして貰えるし、製作台を買えば魔力でオート作成も出来る。私はその辺は使わなかったけど。
    カブの種は蒔いてみたから、これが明日出来ていれば成功だ。

    これはスマホじゃなくてスイッチだけど、加護で与える時はスマホでも大丈夫。
    
    農園から出たら、入った時の状態と変わっていた。
「にゃー!何があったにゃ?すごく時間経ってるにゃ!」

    うわ…確かに。お昼食べ損ねたな…いつもの事だから、お腹は空いていないけど。
    時間を確認してみると、およそ等倍で時間が経っている。
    その辺は、私の未熟さ故の事かな…でも却っていいのかも?
    一瞬で帰って来られると時間の感覚も変わるし、精神的に辛い物があるよね…1日余計に働いた気分になる。

「ごめんね、みんな…心配かけたね。完璧にこの力を使いこなすには、まだ無理みたいだから」

    それに、まだこれで終わりじゃない。あんな日の当たらない所で暮らしていたら、心に悪い。
    空飛ぶ島に転移すればいい事だけど、寒いからね。

    でも、こればかりはいい方法もない。
    このスイッチは、出来れば量産はしたくないし。
    どのみち、スマホのスキルがないと使えないけどね。

    あとは、攻略本的な物を書かないと。
    こっちの方が厄介かな。私の字は綺麗とは言えないし、上手く書ける自信もない。

    取り敢えず出来る事と、ダンジョン等の注意点。武器や防具、アクセサリーについて。
    料理の方は是非工夫して色々作って欲しい。

    あー…書くのこれ、1日じゃ無理だわ。前世の攻略本なんて、人も殺せる厚さの物がゴロゴロしてたよね。
    写真やイラスト等を入れないにしても、かなりの厚さになりそうだ…手が痛くなりそう。

    次の日入ってみたらちゃんとカブは1日で育っていた。
    中で寝ると出ちゃうのも含めて、ちゃんと伝えないと。

    それと、一瞬では無理だけど、中にいる間は実際より長くいられるように、時間軸を調整した。
    じゃないと、複数人で使えるようにする意味がないからね。

    外部登録については、ダンジョンコアを利用する事に決めた。あのコアは、転移魔法陣とリンクしてるみたいだから、それを利用させてもらおう。

「…という訳で、こんな感じの作ってみたんだけど、どうかな?」
「凄いの、メイ」
「中は暖かいと聞くし、誰が入るかで喧嘩になるのではないか?」
「最初の頃は畑も出来る事が少ないし、仕方ない所はあるよ。でも、釣りとか全く出来る事がなくなる訳じゃないし」

「それは、神器と言えるのではないのか?それを易々と渡して良い物か」
    アロカシアの意見に、少し迷う。
    これは私が作った物だから、神器とは言えないと思うけど、機能の一部はゲームだし…野菜を取り出せるのはまずいのかな?…でもこの世界にある物しかゲームでは出ないように設定したし、私が買えるようにした?ケチャップとかも道具屋では買えない。

「まあ、全てのエルフが善人とは限らないって分かるよ。…そうだね。なら、善悪を判断する水晶も付けるよ」
    町に入る為の必須アイテムに判断してもらえばいいでしょう。

    その程度なら簡単に組み込める。
    うん…こんな所かな。
    スマホ擬きまで作れちゃうなんて、私もチートになったもんだ。
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