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キルヴィス様とわたくし
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「キルヴィス様…やはりわたくしは魅力に欠けるのでしょうか?」
「何を突然。スカーレットはとても美しいよ?」
いつものお茶会。キルヴィス殿下は二十歳を越え、その魅力にますます磨きがかかったようで、言い寄る女性は未だに後を絶たないようです。
美しいと言って下さるのもキルヴィス殿下位のものですわ。可愛らしいとはよく言われますけれど。
「アベル殿下が王位を継がれる事は…ないのですよね?」
「どうしたの?藪から棒に。エルネストも立太子したし、兄上もまだ退位する気はなさそうだけど?」
「ですわよね」
わたくしは、キルヴィス殿下にも、時間が戻った事をまだ話せていません。
ですから、こんな話しをしても混乱させてしまうだけです…それに、怖いのですわ。気味悪がられて嫌われてしまうのが。
前回とは違う事…わたくしが婚約したのはキルヴィス殿下で、 アベル殿下ではない事。その事を知っているのはわたくしとお父様だけ…お母様は、我が家の従者と再婚したようですし、あれからお会いする事もありません。
「スカーレット?…君は何を隠しているんだい?前々から思っていたけれど、私に隠している…話していない事があるんじゃないかい?」
「そんな…事は。どうしてそう思われますの?」
「そうだな…婚約した時の話し会いの時からかな。隣国の話しをしたのを覚えているかい?…君の話した事は、起こっていない事だった。今ならあり得た事なんだけど、それに…あの時の君はまだ5歳で、特別な教育もされる前だった。だからって気持ちが変わる訳ではないけれど」
「信じて貰えないかもしれませんが…」
わたくしは、全てを話す事にしました。想い人に隠し事をするのも辛かったですし、これから起こり得るであろう事も知って頂きたかったのです。
「アベルが王位を…ね。しかも兄上が…」
「あの…信じて頂けないのなら、戯れ言と思ってもらえませんか?」
暫く考え込んでいたキルヴィス殿下でしたが、やがてわたくしの目を見てしっかりと言って下さった。
「信じるよ。起こり得る事だったと思うし、根拠もある」
「根拠…ですか?」
「一般には知られていない事だからスカーレットもここだけの話にして欲しいんだけど、アベルの母親である側妃は今、幽閉されて誰とも会えない状況だ。勿論アベルともね。その前に君の父と兄とで秘密の話しがあった。従兄弟同士の話しの中で多分、何かがあったと私は思っている。表向きには側妃は病気となっているが、恐らく近日中に毒杯を賜るだろう」
「毒っ…!どうしてですの?」
「恐らくは王位の簒奪。情報が規制されてるけど、色々あって…」
何が、とは聞けなかった。
エルネスト殿下は今、諸外国との国交に忙しくされている。前回も恐らくは同じだろう。それは立太子されてから。
もし側妃様がアペル殿下に王位継承を望むなら…
顔色を悪くしたわたくしを、キルヴィス殿下はそっと抱き締めて下さった。
「スカーレットは自身の話しを従兄弟殿に…父上に話したのだろう?」
「ええ…」
「大丈夫。アペルに手出しはさせないよ。スカーレットは渡さない。けれど、そのアージェという男爵令嬢も気になる所ではあるな」
「キルヴィス様もやはり…胸が気になりますか?」
「えっ?」
「その…アージェ様はわたくしと違って、魅力的な体型を…」
「ははっ。何を言い出すかと思えば…私は体型で女性を判断する事はないし、スカーレットの卒業と同時に結婚だって決まっているんだよ?…怪しい所があるから調べてみたいとは思ったけど」
「そうですか…確かに時々訳の分からない事を仰いますが」
「そこの所を詳しく」
結局謎の言動はキルヴィス殿下にも分からない所でしたが、全て話す事が出来て、今はほっとしています。
「何を突然。スカーレットはとても美しいよ?」
いつものお茶会。キルヴィス殿下は二十歳を越え、その魅力にますます磨きがかかったようで、言い寄る女性は未だに後を絶たないようです。
美しいと言って下さるのもキルヴィス殿下位のものですわ。可愛らしいとはよく言われますけれど。
「アベル殿下が王位を継がれる事は…ないのですよね?」
「どうしたの?藪から棒に。エルネストも立太子したし、兄上もまだ退位する気はなさそうだけど?」
「ですわよね」
わたくしは、キルヴィス殿下にも、時間が戻った事をまだ話せていません。
ですから、こんな話しをしても混乱させてしまうだけです…それに、怖いのですわ。気味悪がられて嫌われてしまうのが。
前回とは違う事…わたくしが婚約したのはキルヴィス殿下で、 アベル殿下ではない事。その事を知っているのはわたくしとお父様だけ…お母様は、我が家の従者と再婚したようですし、あれからお会いする事もありません。
「スカーレット?…君は何を隠しているんだい?前々から思っていたけれど、私に隠している…話していない事があるんじゃないかい?」
「そんな…事は。どうしてそう思われますの?」
「そうだな…婚約した時の話し会いの時からかな。隣国の話しをしたのを覚えているかい?…君の話した事は、起こっていない事だった。今ならあり得た事なんだけど、それに…あの時の君はまだ5歳で、特別な教育もされる前だった。だからって気持ちが変わる訳ではないけれど」
「信じて貰えないかもしれませんが…」
わたくしは、全てを話す事にしました。想い人に隠し事をするのも辛かったですし、これから起こり得るであろう事も知って頂きたかったのです。
「アベルが王位を…ね。しかも兄上が…」
「あの…信じて頂けないのなら、戯れ言と思ってもらえませんか?」
暫く考え込んでいたキルヴィス殿下でしたが、やがてわたくしの目を見てしっかりと言って下さった。
「信じるよ。起こり得る事だったと思うし、根拠もある」
「根拠…ですか?」
「一般には知られていない事だからスカーレットもここだけの話にして欲しいんだけど、アベルの母親である側妃は今、幽閉されて誰とも会えない状況だ。勿論アベルともね。その前に君の父と兄とで秘密の話しがあった。従兄弟同士の話しの中で多分、何かがあったと私は思っている。表向きには側妃は病気となっているが、恐らく近日中に毒杯を賜るだろう」
「毒っ…!どうしてですの?」
「恐らくは王位の簒奪。情報が規制されてるけど、色々あって…」
何が、とは聞けなかった。
エルネスト殿下は今、諸外国との国交に忙しくされている。前回も恐らくは同じだろう。それは立太子されてから。
もし側妃様がアペル殿下に王位継承を望むなら…
顔色を悪くしたわたくしを、キルヴィス殿下はそっと抱き締めて下さった。
「スカーレットは自身の話しを従兄弟殿に…父上に話したのだろう?」
「ええ…」
「大丈夫。アペルに手出しはさせないよ。スカーレットは渡さない。けれど、そのアージェという男爵令嬢も気になる所ではあるな」
「キルヴィス様もやはり…胸が気になりますか?」
「えっ?」
「その…アージェ様はわたくしと違って、魅力的な体型を…」
「ははっ。何を言い出すかと思えば…私は体型で女性を判断する事はないし、スカーレットの卒業と同時に結婚だって決まっているんだよ?…怪しい所があるから調べてみたいとは思ったけど」
「そうですか…確かに時々訳の分からない事を仰いますが」
「そこの所を詳しく」
結局謎の言動はキルヴィス殿下にも分からない所でしたが、全て話す事が出来て、今はほっとしています。
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