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海のダンジョンへ

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    海人君が作ってくれた魔道具は、その名も迷子札!
    …いや、もっとましな名前考えようよ…

    だけど、驚くべき効果がある。ステータス画面で、札の位置が確認出来るのだ。
    その為の付与は私がやったけど、これがあれば広いダンジョンではぐれても位置を把握出来る。
    私からしたら、従魔であるタマ達の位置は感覚で分かるんだけど、流石に海人君は分からない。それに階層の広さに定評のあるダンジョンらしいから、あれば便利だろう。

    でも、海人君が念話を覚えた方が確実な気がする。
    それを言ったら、口を尖らせて、努力すると呟いていた。

「とにかく、ありがとう。これならキーホルダーとして付けておけばいいしね」
「…けど、念話か…そっちの方が確実だな。ってか、スマホあるじゃん」
「タマ達はスマホ持ってないよ?」
「それは、美優ちゃんが側にいるから…手を借りたい時は美優ちゃんに言えば」

「全力を発揮させてあげられないのが可哀想だけど、それなりに強いはずだから」
「確かに、妖怪の姿は見せたくないよね」
    普通の犬や猫だと思わせておいた方がいい。

    お弁当も持って、いよいよ出発だ。
    
    楽し気な音楽を背に、ダンジョンに入る列に並ぶ。タマもポチも、しっかりリードで繋いでいる。
(このあたしをリードで繋ぐなんて…!)
(ごめんね?タマ。ある程度人がばらけたら外すから)
(ピヨちゃんは繋がないの?)
(鶏だし、平気かな…って)
    それに、繋ぎようがない。

    みんな私達を見て、何か言いたげにしてたけど、結局声をかけられる事はなかった。

    こういう所は田舎と違う所だ。
    今では慣れたからか、何も言われなくなったけど、前は近所の人とかによく心配された。

    外の見かけはコンクリートの小屋。元はトイレだったらしい。でも一歩中に入るとダンジョンで、入り口からは想像もつかない程広い。

    その広いフロアには、一面にワカメが生えている。
    そして、進もうとすると、ワカメが足に絡んで足を取られる。
    美優は鎌を出して、ワカメを狩り取る。
    でも、手元に残るのは明らかに少ない。

    ダンジョンでは魔物一匹狩っても、残るのは本当に一部だもんね。
    海人君は槌で叩いている。どうやらそれでも残るのは同じ位のワカメのようだ。
「サクサク行こう?今日中には2階層に行きたいし」
「分かってるよ」

    なかなか前に進めない。足を取られて転ぶし、濡れるのが嫌なタマを抱っこしながらだけど、私が転ぶと海人君の方に逃げて行く。
    ここから先、海水で満たされたエリアもあるのに、この調子だと不安だ。

「しかし広いな…」
「そうだね。東京ドームと同じ位だっけ?行った事はないけど」
    その一面にワカメが生えてて採り放題なんだよね…多少減ってもちょっといるだけで、かなりの量が確保出来る。

    ワカメなら、味噌汁にサラダ。色々利用出来るから、無駄にはならない。

    うわ…また濡れた。
「お前…ドジっ子でも目指してるのか?」
「酷い!絡みつかれる前に足を上げればいいって分かっていても、間に合わないんだよ」

    言いつつ、ドライで服を乾かす。
「何とかするスキルとか持ってないのか?このペースだと、夕方までに魔法石を触れなくなる」

    そんな事になったら一大事だ。勿論、そんなダンジョンだからポツポツとセーフティエリアがある。
    冒険者の書でも、そこで一泊するのを推奨してる。

    攻略が難関な所や、大変な所のダンジョンランキングにも常に載っているだけはある。

    1日で1階層進むのが難しいと、休日だけダンジョンに潜れる人には攻略が難しい。
    私達だってそうだ。無断外泊が許される年齢じゃないからね。更にはバレない為に、夕ご飯までには戻らないとならない。
「大体の方角が分かるからって、魔法で焼いて通路を作る訳にもいかないし」

「無人だったらいいけど、都会のダンジョンではあり得ないからな」
「やっぱり、亜空間にお泊まりするって説得してみる?」
「いいけど、今日はもう無理じゃん?しかも半分以上は来てるんだから、どうにか魔法石にまで辿り着いた方が早い」

    今日は見通しが甘かった。予想よりもワカメの拘束が厄介で、先に進めない。

「…あ、結界で橋を作ればいいんだ」
    ちょっとズルいけど、今日の所は仕方ない。
    大体の方角は分かるし、誰かとぶつかる前には分かる。

「おー!いいな。余裕で1階層はクリア出来そうだ」
    なんて、私も同じ事思ったけど、甘かった。
    結界って攻撃を逸らす効果もあるから超すべるのだ。

    案の定転びまくったけど、ワカメに邪魔されてた時よりはやっぱり速い。どうにか夕方までには魔法石に触れる事が出来た。

「明日はもっと、早い時間に来ようぜ」
「でも、お弁当が…お昼に戻らない為には、その準備がないと」
「あー…ならコンビニは?夕ご飯終わった後でもちょっと行って貰うとか」

「え?夜にはもう閉まっているよ?」
「は?…だって、コンビニだろ?」
「商店街のお店よりは長く開いてるけど、夜はやってないよ?」
「うぐぐ…田舎のコンビニ恐るべし」

「それに、コンビニにはゲート開いてないし。ここには内緒で来てるんだから、もっとましな言い訳考えないと」

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