46 / 75
熊
しおりを挟む
魔物が出たらしい。本来なら食事が要らないダンジョン産の魔物も、外に出て生命エネルギーを取り込むことで、本来の生き方を思い出す。
この世界には魔素がないので、これ以上増える事はないだろうけど、町内に住む者達にとっては大問題だ。
私の魔力捜索範囲なんて、せいぜいが半径1キロ程度。だけど頑張った。でも山はあるし、道はないしでどうしても範囲は狭くなる。
遂に、犠牲者が出た。山菜採りに行ってた人で、腕1本が犠牲になった。
厳密に言えば魔物ではなかった。だけど人の血を覚えてしまったその熊は退治するしかなくて、魔力を込めた杖で叩くと、頭が吹き飛んだ。
今まで散々魔物を蹴散らしてきたのに。記憶の中では外の魔物を屠るなんて、日常茶飯事だった。
生きていた動物を殺してしまった…
だから何?盗賊を魔法で倒した事だってあったのに?
スタンピードでダンジョンから出てきた魔物だって倒した、その時は平気だったのに。
「ダンジョンの魔物はドロップアイテムになって消えてしまうからな」
「冒険者、止めてもいいのよ?」
「儂の孫は立派な事をしたんじゃ。町内の平和を守ったんじゃ」
「美優は立派な稼ぎ頭だから、違う形でダンジョンに関わればいい」
「たかが熊じゃん?」
そう。人を殺した訳じゃない。
それでもショックだった。
鉄砲を持った人達だって、山に入っていたんだから、任せれば良かった。
普段は布団になんて入ってこないタマが、寒くもないのに布団に入ってきてくれた。
柔らかい毛並みの下には、筋肉質な体。普通の家猫はぽちゃぽちゃなのに。
(しばらくダンジョンから離れてみたら?)
(ピヨちゃんは、むかごを集めたらいいと思うの)
(ボクも美優の側にいるよ!)
優しいな…うちのもふもふ達は最高だ。
コロン。とむかごが転がる。大丈夫。まだ私は戦える!
こんな風にむかご集めをするのも久しぶりだ。ダンジョンでゆっくりするなんて、あんまりないから。
しばらくただぼんやりしてたけど、スキル訓練も始めた。
「美優ちゃん…少しは元気出た?」
「まあね…ご町内の平和は私が守るんだから!」
「町内って…狭っ!」
「いいじゃん?有名パーティーに入って第一線で活躍する気もないし。手の届く範囲で充分だよ」
「なら、ボス戦やらないか?」
「まだ魔鉄足らないの?」
「そ、それは…母さんに、魔鉄をショップにも卸してくれって」
それはそうだ。只の鉄よりも魔鉄にするだけで性能も段違い。お値段も段違いだけど、魔物素材の武器は加工出来る人が極端に少ないから、まだ鍛冶初心者の海人君に独占させる訳にはいかない。
10階層のボスなら、もう秒で倒せる。
「おい…僕も経験値欲しいんだけど!」
「あー…大丈夫だよ。経験値は5等分されるはずだから」
「なら、15階層に付き合ってくれよ」
「あれ?14階層には行けたの?」
「一応。でも、僕もマジックベリーとか取りたいし、蟻は飽きた」
蟻は却って海人君にとっては戦いやすいかもしれない。でも、次は15階層だ。特に椎茸は相性が悪そうだ。
「でも…牛は充分に戦えたんだよね?なら、大丈夫かな?」
「牛か…たまに出るチーズに火をかけて、トロッとかけて食べると最高だよな!」
「!そっか…その手もあったか」
早速今夜にでもやってみようかな?また最近お父さんのお腹が出てきたから、カロリーオーバーになりそうだけど。
火を避け、吹いた直後を狙って攻撃を仕掛けている。
私の戦い方とはやっぱり違うな。私は魔法防御で弾けるし。
「やった!チーズ!」
「…はいはい。いいから14階層突破を手伝ってくれよ」
ちゃんとやるってば。
海人君が蟻は飽きたって理由は、一撃で倒すのか困難だからだ。剛力に魔力もそれなりに使うし、海人君は回復が遅い。
「このまま15階層に進んでも大丈夫?シイタケはそれなりに体力あるよ?」
「だって15階層にはマジックベリーが生えてるんだろう?だから行けると思う」
ああ。確かに。あの階層は美味しい。
「もっと余裕を見て進んだ方がいいと思うけど?」
「しばらくは15階層にいる予定だし」
仕方ないな…。
15階層に行き、しばらく海人君の戦いを見守る。
「剛力に頼ってしかシイタケを倒せないのは、問題あると思うよ?」
「…くっ」
「ダンジョンに入る時は、ポチかタマにお願いしてね?」
「分かったよ…ちゃんと強くならないと、ワーウルフには敵わないだろうし」
「そういう事。2人共、お願いね?」
(あたし達にお願いするなら、せめて言葉が通じる努力位しなさいよ)
「念話、覚えてって」
「マジか…まあ、当然だよな。意志疎通は出来た方が便利だし」
カイは結構口だけの所があったけど、今回は頑張ってくれるかな?
この世界には魔素がないので、これ以上増える事はないだろうけど、町内に住む者達にとっては大問題だ。
私の魔力捜索範囲なんて、せいぜいが半径1キロ程度。だけど頑張った。でも山はあるし、道はないしでどうしても範囲は狭くなる。
遂に、犠牲者が出た。山菜採りに行ってた人で、腕1本が犠牲になった。
厳密に言えば魔物ではなかった。だけど人の血を覚えてしまったその熊は退治するしかなくて、魔力を込めた杖で叩くと、頭が吹き飛んだ。
今まで散々魔物を蹴散らしてきたのに。記憶の中では外の魔物を屠るなんて、日常茶飯事だった。
生きていた動物を殺してしまった…
だから何?盗賊を魔法で倒した事だってあったのに?
スタンピードでダンジョンから出てきた魔物だって倒した、その時は平気だったのに。
「ダンジョンの魔物はドロップアイテムになって消えてしまうからな」
「冒険者、止めてもいいのよ?」
「儂の孫は立派な事をしたんじゃ。町内の平和を守ったんじゃ」
「美優は立派な稼ぎ頭だから、違う形でダンジョンに関わればいい」
「たかが熊じゃん?」
そう。人を殺した訳じゃない。
それでもショックだった。
鉄砲を持った人達だって、山に入っていたんだから、任せれば良かった。
普段は布団になんて入ってこないタマが、寒くもないのに布団に入ってきてくれた。
柔らかい毛並みの下には、筋肉質な体。普通の家猫はぽちゃぽちゃなのに。
(しばらくダンジョンから離れてみたら?)
(ピヨちゃんは、むかごを集めたらいいと思うの)
(ボクも美優の側にいるよ!)
優しいな…うちのもふもふ達は最高だ。
コロン。とむかごが転がる。大丈夫。まだ私は戦える!
こんな風にむかご集めをするのも久しぶりだ。ダンジョンでゆっくりするなんて、あんまりないから。
しばらくただぼんやりしてたけど、スキル訓練も始めた。
「美優ちゃん…少しは元気出た?」
「まあね…ご町内の平和は私が守るんだから!」
「町内って…狭っ!」
「いいじゃん?有名パーティーに入って第一線で活躍する気もないし。手の届く範囲で充分だよ」
「なら、ボス戦やらないか?」
「まだ魔鉄足らないの?」
「そ、それは…母さんに、魔鉄をショップにも卸してくれって」
それはそうだ。只の鉄よりも魔鉄にするだけで性能も段違い。お値段も段違いだけど、魔物素材の武器は加工出来る人が極端に少ないから、まだ鍛冶初心者の海人君に独占させる訳にはいかない。
10階層のボスなら、もう秒で倒せる。
「おい…僕も経験値欲しいんだけど!」
「あー…大丈夫だよ。経験値は5等分されるはずだから」
「なら、15階層に付き合ってくれよ」
「あれ?14階層には行けたの?」
「一応。でも、僕もマジックベリーとか取りたいし、蟻は飽きた」
蟻は却って海人君にとっては戦いやすいかもしれない。でも、次は15階層だ。特に椎茸は相性が悪そうだ。
「でも…牛は充分に戦えたんだよね?なら、大丈夫かな?」
「牛か…たまに出るチーズに火をかけて、トロッとかけて食べると最高だよな!」
「!そっか…その手もあったか」
早速今夜にでもやってみようかな?また最近お父さんのお腹が出てきたから、カロリーオーバーになりそうだけど。
火を避け、吹いた直後を狙って攻撃を仕掛けている。
私の戦い方とはやっぱり違うな。私は魔法防御で弾けるし。
「やった!チーズ!」
「…はいはい。いいから14階層突破を手伝ってくれよ」
ちゃんとやるってば。
海人君が蟻は飽きたって理由は、一撃で倒すのか困難だからだ。剛力に魔力もそれなりに使うし、海人君は回復が遅い。
「このまま15階層に進んでも大丈夫?シイタケはそれなりに体力あるよ?」
「だって15階層にはマジックベリーが生えてるんだろう?だから行けると思う」
ああ。確かに。あの階層は美味しい。
「もっと余裕を見て進んだ方がいいと思うけど?」
「しばらくは15階層にいる予定だし」
仕方ないな…。
15階層に行き、しばらく海人君の戦いを見守る。
「剛力に頼ってしかシイタケを倒せないのは、問題あると思うよ?」
「…くっ」
「ダンジョンに入る時は、ポチかタマにお願いしてね?」
「分かったよ…ちゃんと強くならないと、ワーウルフには敵わないだろうし」
「そういう事。2人共、お願いね?」
(あたし達にお願いするなら、せめて言葉が通じる努力位しなさいよ)
「念話、覚えてって」
「マジか…まあ、当然だよな。意志疎通は出来た方が便利だし」
カイは結構口だけの所があったけど、今回は頑張ってくれるかな?
60
あなたにおすすめの小説
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
こちらの異世界で頑張ります
kotaro
ファンタジー
原 雪は、初出勤で事故にあい死亡する。神様に第二の人生を授かり幼女の姿で
魔の森に降り立つ 其処で獣魔となるフェンリルと出合い後の保護者となる冒険者と出合う。
様々の事が起こり解決していく
規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜
ケイソウ
ファンタジー
チビで陰キャラでモブ子の桜井紅子は、楽しみにしていたバス旅行へ向かう途中、突然の事故で命を絶たれた。
死後の世界で女神に異世界へ転生されたが、女神の趣向で変装する羽目になり、渡されたアイテムと備わったスキルをもとに、異世界を満喫しようと冒険者の資格を取る。生活にも慣れて各地を巡る旅を計画するも、国の要請で冒険者が遠征に駆り出される事態に……。
婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~
夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。
「聖女なんてやってられないわよ!」
勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。
そのまま意識を失う。
意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。
そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。
そしてさらには、チート級の力を手に入れる。
目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。
その言葉に、マリアは大歓喜。
(国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!)
そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。
外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。
一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。
神獣転生のはずが半神半人になれたので世界を歩き回って第二人生を楽しみます~
御峰。
ファンタジー
不遇な職場で働いていた神楽湊はリフレッシュのため山に登ったのだが、石に躓いてしまい転げ落ちて異世界転生を果たす事となった。
異世界転生を果たした神楽湊だったが…………朱雀の卵!? どうやら神獣に生まれ変わったようだ……。
前世で人だった記憶があり、新しい人生も人として行きたいと願った湊は、進化の選択肢から『半神半人(デミゴット)』を選択する。
神獣朱雀エインフェリアの息子として生まれた湊は、名前アルマを与えられ、妹クレアと弟ルークとともに育つ事となる。
朱雀との生活を楽しんでいたアルマだったが、母エインフェリアの死と「世界を見て回ってほしい」という頼みにより、妹弟と共に旅に出る事を決意する。
そうしてアルマは新しい第二の人生を歩き始めたのである。
究極スキル『道しるべ』を使い、地図を埋めつつ、色んな種族の街に行っては美味しいモノを食べたり、時には自然から採れたての素材で料理をしたりと自由を満喫しながらも、色んな事件に巻き込まれていくのであった。
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流
犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。
しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。
遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。
彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。
転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。
そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。
人は、娯楽で癒されます。
動物や従魔たちには、何もありません。
私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!
異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい
木の葉
ファンタジー
『異世界で幸せに』を新たに加筆、修正をしました。
下界に魔力を充満させるために500年ごとに送られる転生者たち。
キャロルはマッド、リオに守られながらも一生懸命に生きていきます。
家族の温かさ、仲間の素晴らしさ、転生者としての苦悩を描いた物語。
隠された謎、迫りくる試練、そして出会う人々との交流が、異世界生活を鮮やかに彩っていきます。
一部、残酷な表現もありますのでR15にしてあります。
ハッピーエンドです。
最終話まで書きあげましたので、順次更新していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる