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おじさんの正体
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夜だけど、暑いから、おうちは網戸のままだった。このあたり一帯は、みんな同じ名字で、ほぼ親戚だから、あまり用心の必要はないのだと、前にお父さんが言っていた。おかげで僕も、困ることなく中に入れた。
うちの中はシンと静か。
僕たち家族がお泊りしてるお部屋に進んで、僕は、またまたびっくりした。
お父さんとお母さんと並んで、いつも僕が寝てるお布団。
今日はあの子が寝てた、その上に!
おっきい獅子――???
あ、あれ、ひいじいちゃんちの玄関に置いてある獅子だ! 炎みたいな形の、クリンとした尻尾、見覚えがある! おうちに入ると玉に足かけた小さな獅子の置物があって、いつも「可愛いなぁ」って思ってた。
その獅子が、熊みたいに大きくなって、金色に光りながら、布団ごとあの子を押さえつけていた。
「大方、家人に悪さをしようとして取り押さえられたな」
えっ、おじさん? いつの間に?
一緒に入らなかったはずなのに。
僕が隣に立つおじさんを見上げると同時に、あの子も僕たちに気づいた。
そして、おじさんを見て、「ヒッ」と叫んだ。
おじさんが、静かだけど、とても迫力のある声で言う。
「子に成り代わって屋敷に招き入れて貰い、してやったりだったろうが、この家(や)の者たちは万物に敬意をもって接している。ゆえに守りも正しく発動する。つけ入る隙はない」
ガタガタと震えるあの子の顔が引き攣って、なんだかよくわからないものに変わっていく。おじさんは、なおも言った。
「数百年を経ても、まるで改心せぬとは。我が権限により、今宵、その身に相応しい場所に引き渡すこととする」
怯えるあの子の顔が、もう人間じゃないくらいクチャクチャに歪んでいく。必死に逃げ出そうとしてるけど、獅子がガッチリ覆いかぶさって、動けないみたい。
ちょんまげおじさんが、手をあげた。
!!
カラリ。滑るようにふすまが開いて、中から真っ黒なドロドロが、よく伸びるゴムみたいに飛び出した。
スライムっぽい何本ものソレが、あっという間にあの子を包む。ふすまの向こう側には、燃え盛る火がチラリと見えた。スライムは、そのままあの子を奥に引っ張り込んで――、ふすまはパタリと、また閉じた。
隣の部屋は普通に畳のお部屋だったはずけど、どうなってるの??? 火事じゃないよね?
あっけに取られて固まってると、ちょんまげおじさんが僕を見た。
「怖い思いをしたな。もう大丈夫だ。アレは冥府の獄吏に引き渡した」
メーフ? ゴクリ?
「あやつは、領民を食らっていた鬼でな。なんとかひと箇所に縛り付けていたものの、我も人の身だったゆえ、滅するまでは叶わず」
霊となってからは、社から見張っていたのだが。
そう言いながらスッとしゃがんだおじさんが、僕の目を見ながら言葉を続ける。
「子孫であるお前たちが、儂を神と祭ってくれた。その永の崇めを以って得た力で、ようやくアレが始末出来た」
言葉が難しくて、何(なん)となくしか意味がわかんなかったけど。
子孫。と、いうことは。
「えっと……つまり、おじさんは僕のご先祖さまで、お社の神様?」
お山のお社の神様は、僕たちの遠いご先祖さまだって、聞いたことがある。
「儂がこの世を去る時、家の者には"かくれんぼ"を禁じるよう言いおいていたが」
「ご、ごめんなさい!!」
僕は慌てたけど、おじさんは、穏やかに微笑んだ。
「いや。むしろ長い間、守られていたことに感謝しよう。たすける力が、間に合って良かった」
おじさんの姿が、うっすらと透け、光の粒になって溶けていく。
「いつもお前たちを見守っている。すこやかに過ごせ、満生」
おじさんが、消えた。気がつくと、獅子もいなくなってる。
「んん……」
すぐ傍のお布団から、身じろぐ声がする。お母さんだ!!
「うわぁぁぁぁぁぁん。おかあさぁんんんんん」
突然泣きながら抱きついた僕に、寝ていたお母さんはびっくりしたみたいだった。
「ど、どうしたの、ミツキ。怖い夢でもみたの?」
戸惑いながら抱き返してくれたお母さんにしがみついて、僕はしばらく泣き続けた。
良かった。帰って来れて。ミツキに戻れて、本当に良かった!!
うちの中はシンと静か。
僕たち家族がお泊りしてるお部屋に進んで、僕は、またまたびっくりした。
お父さんとお母さんと並んで、いつも僕が寝てるお布団。
今日はあの子が寝てた、その上に!
おっきい獅子――???
あ、あれ、ひいじいちゃんちの玄関に置いてある獅子だ! 炎みたいな形の、クリンとした尻尾、見覚えがある! おうちに入ると玉に足かけた小さな獅子の置物があって、いつも「可愛いなぁ」って思ってた。
その獅子が、熊みたいに大きくなって、金色に光りながら、布団ごとあの子を押さえつけていた。
「大方、家人に悪さをしようとして取り押さえられたな」
えっ、おじさん? いつの間に?
一緒に入らなかったはずなのに。
僕が隣に立つおじさんを見上げると同時に、あの子も僕たちに気づいた。
そして、おじさんを見て、「ヒッ」と叫んだ。
おじさんが、静かだけど、とても迫力のある声で言う。
「子に成り代わって屋敷に招き入れて貰い、してやったりだったろうが、この家(や)の者たちは万物に敬意をもって接している。ゆえに守りも正しく発動する。つけ入る隙はない」
ガタガタと震えるあの子の顔が引き攣って、なんだかよくわからないものに変わっていく。おじさんは、なおも言った。
「数百年を経ても、まるで改心せぬとは。我が権限により、今宵、その身に相応しい場所に引き渡すこととする」
怯えるあの子の顔が、もう人間じゃないくらいクチャクチャに歪んでいく。必死に逃げ出そうとしてるけど、獅子がガッチリ覆いかぶさって、動けないみたい。
ちょんまげおじさんが、手をあげた。
!!
カラリ。滑るようにふすまが開いて、中から真っ黒なドロドロが、よく伸びるゴムみたいに飛び出した。
スライムっぽい何本ものソレが、あっという間にあの子を包む。ふすまの向こう側には、燃え盛る火がチラリと見えた。スライムは、そのままあの子を奥に引っ張り込んで――、ふすまはパタリと、また閉じた。
隣の部屋は普通に畳のお部屋だったはずけど、どうなってるの??? 火事じゃないよね?
あっけに取られて固まってると、ちょんまげおじさんが僕を見た。
「怖い思いをしたな。もう大丈夫だ。アレは冥府の獄吏に引き渡した」
メーフ? ゴクリ?
「あやつは、領民を食らっていた鬼でな。なんとかひと箇所に縛り付けていたものの、我も人の身だったゆえ、滅するまでは叶わず」
霊となってからは、社から見張っていたのだが。
そう言いながらスッとしゃがんだおじさんが、僕の目を見ながら言葉を続ける。
「子孫であるお前たちが、儂を神と祭ってくれた。その永の崇めを以って得た力で、ようやくアレが始末出来た」
言葉が難しくて、何(なん)となくしか意味がわかんなかったけど。
子孫。と、いうことは。
「えっと……つまり、おじさんは僕のご先祖さまで、お社の神様?」
お山のお社の神様は、僕たちの遠いご先祖さまだって、聞いたことがある。
「儂がこの世を去る時、家の者には"かくれんぼ"を禁じるよう言いおいていたが」
「ご、ごめんなさい!!」
僕は慌てたけど、おじさんは、穏やかに微笑んだ。
「いや。むしろ長い間、守られていたことに感謝しよう。たすける力が、間に合って良かった」
おじさんの姿が、うっすらと透け、光の粒になって溶けていく。
「いつもお前たちを見守っている。すこやかに過ごせ、満生」
おじさんが、消えた。気がつくと、獅子もいなくなってる。
「んん……」
すぐ傍のお布団から、身じろぐ声がする。お母さんだ!!
「うわぁぁぁぁぁぁん。おかあさぁんんんんん」
突然泣きながら抱きついた僕に、寝ていたお母さんはびっくりしたみたいだった。
「ど、どうしたの、ミツキ。怖い夢でもみたの?」
戸惑いながら抱き返してくれたお母さんにしがみついて、僕はしばらく泣き続けた。
良かった。帰って来れて。ミツキに戻れて、本当に良かった!!
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