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3.自慢するはずが
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(なんのかんの、良いパーティーだったな)
のんびりとした満足感と共に、思い出す。
靴擦れしたご令嬢を見送って別れ、広間に戻る途中で休憩中のリュオン殿下と会った。
取り巻きは置いてきたらしい。
うん、あれは息苦しくなるほどの群がりようだったもんな。抜けれて良かった。
激務で無理してないかそれとなく尋ねながら、会場で見つけた珍しい料理の情報を告げると、「一緒に回ろう」と言われ、お勧めオードブルに案内する。
壁の花やってたから、一通り料理は制したのだ!!
おかしくない? "イェシル・サンダリーク"は前世ならモデル級の美形なのに、壁の花とか。
ちょっと自分に自信がなくなる案件で、そんな悩みを呟くと、殿下から歯の浮くような言葉を並べて褒めたたえられた挙句、全力で慰められた。
格上のイケメンに持ち上げられて、世辞半分に差し引くとしても、嬉しいものは嬉しい。
そういや相手は一応恋人で、まだ婚約関係だった。
俺が良い相手を見つけたら、解消を考えてくれるよう頼んであるけど。
(殿下は間違いなく、引く手数多だろうしな──)
グレープのように濃い紫色の瞳が、光を受けて生き生きと輝くと、誰だって目を奪われる。
そしたらもう、逸らすことなんて出来ない。ずっとずっと、見ていたくなる──。
落ち込んでる俺を必死でフォローしてくれる姿に、(この人は"恋は盲目タイプ"かなぁ)とか、(王太子がそんなんで、誰かに騙されたりしないかな)とか、ちょっぴり余計な心配をしつつ、楽しい時間を過ごし、数日後。
俺にも春が来た!!
なんと先日のご令嬢から、お礼として手作りクッキーを貰ってしまったのだ!!
女の子からお菓子貰うなんて前世含めて初体験で、すっかり舞い上がった俺は、食い気味にお礼を言ったその足で、王宮を訪れた。
次に繋げ損なったのは、失敗した。
経験値が低いと、これだから。
早々に去ってしまって失礼だったろうし、今度会ったら謝ろう。
お礼の手紙を書いてもいいな。
そう考えながら、こないだモテない俺を真剣に持ち上げてくれたリュオン殿下にもクッキーを見せるため、執務中の彼を待ち、待ちきれなくて、そのうちに包みを開けた。
甘い匂いが鼻腔をくすぐり、誘惑に耐え切れなくなって一枚。
ほんの味見をするつもりで、齧った後、なんだか動悸が止まらない。体中が火照ってくるし、血液は滾ってる気がするし、何より。
(まずい、立てない。こんなとこに誰か来たら)
通されたのは王太子の私室。おいそれと他人は入らないだろうけど、例外はある。
現に今も、ノックの音が響いてる。
「イェシル?」
のぞいた顔は、殿下だった。
「どうしたんだ、イェシル! 何があった!?」
俺の異変に、殿下が部屋に駆けこんだ。
「貰ったクッキーを食べたら、急に動悸が激しくなって」
すっかり潤んでしまった目で、殿下に伝える。
息も絶え絶えになってきた俺を、抱きかかえるようにして支える殿下の体温が、早い心音をさらに加速させる。
殿下から、酩酊するような良い香りがする。なんだ、これ。殿下に触れたくて、たまらなくなる。
「これか」
殿下が急ぎ該当クッキーを探り、包みの中から紙を取り出した。
「このメッセージカード、なんて書いてあったんだ」
「えっ、カード?」
(そんなの気づかなかった)
「読んでないのか? 読むぞ? 良いか?」
こくりと頷いた俺を腕に、殿下がカードに目を走らせ、何とも言えない表情を作った。
「──殿下?」
何が書いてあったんだろう?
「ったく……、いくらなんでも無警戒すぎるぞ」
呆れ声と共に盛大に溜息をつかれたが、俺の方は限界でそれどころじゃない。
「殿下、苦しい」
内から突き上げてくるこれが何なのか。
半分、わかってる。
そして目の前の相手が、十年以上、俺のことを大事にしてきてくれた人だと、今の俺はちゃんと理解していた。
だってこんな状態で一心に求める相手が、リュオン殿下だったから。
縋りつくように殿下の服を握った俺を、すっと抱き上げた王太子は、
「……いま解決してやる」
そう言って、寝台へと俺を運んだ。
うわああああっ。お姫様抱っこなんて、初めてされたよ!! 俺結構、重いはずですが?!
のんびりとした満足感と共に、思い出す。
靴擦れしたご令嬢を見送って別れ、広間に戻る途中で休憩中のリュオン殿下と会った。
取り巻きは置いてきたらしい。
うん、あれは息苦しくなるほどの群がりようだったもんな。抜けれて良かった。
激務で無理してないかそれとなく尋ねながら、会場で見つけた珍しい料理の情報を告げると、「一緒に回ろう」と言われ、お勧めオードブルに案内する。
壁の花やってたから、一通り料理は制したのだ!!
おかしくない? "イェシル・サンダリーク"は前世ならモデル級の美形なのに、壁の花とか。
ちょっと自分に自信がなくなる案件で、そんな悩みを呟くと、殿下から歯の浮くような言葉を並べて褒めたたえられた挙句、全力で慰められた。
格上のイケメンに持ち上げられて、世辞半分に差し引くとしても、嬉しいものは嬉しい。
そういや相手は一応恋人で、まだ婚約関係だった。
俺が良い相手を見つけたら、解消を考えてくれるよう頼んであるけど。
(殿下は間違いなく、引く手数多だろうしな──)
グレープのように濃い紫色の瞳が、光を受けて生き生きと輝くと、誰だって目を奪われる。
そしたらもう、逸らすことなんて出来ない。ずっとずっと、見ていたくなる──。
落ち込んでる俺を必死でフォローしてくれる姿に、(この人は"恋は盲目タイプ"かなぁ)とか、(王太子がそんなんで、誰かに騙されたりしないかな)とか、ちょっぴり余計な心配をしつつ、楽しい時間を過ごし、数日後。
俺にも春が来た!!
なんと先日のご令嬢から、お礼として手作りクッキーを貰ってしまったのだ!!
女の子からお菓子貰うなんて前世含めて初体験で、すっかり舞い上がった俺は、食い気味にお礼を言ったその足で、王宮を訪れた。
次に繋げ損なったのは、失敗した。
経験値が低いと、これだから。
早々に去ってしまって失礼だったろうし、今度会ったら謝ろう。
お礼の手紙を書いてもいいな。
そう考えながら、こないだモテない俺を真剣に持ち上げてくれたリュオン殿下にもクッキーを見せるため、執務中の彼を待ち、待ちきれなくて、そのうちに包みを開けた。
甘い匂いが鼻腔をくすぐり、誘惑に耐え切れなくなって一枚。
ほんの味見をするつもりで、齧った後、なんだか動悸が止まらない。体中が火照ってくるし、血液は滾ってる気がするし、何より。
(まずい、立てない。こんなとこに誰か来たら)
通されたのは王太子の私室。おいそれと他人は入らないだろうけど、例外はある。
現に今も、ノックの音が響いてる。
「イェシル?」
のぞいた顔は、殿下だった。
「どうしたんだ、イェシル! 何があった!?」
俺の異変に、殿下が部屋に駆けこんだ。
「貰ったクッキーを食べたら、急に動悸が激しくなって」
すっかり潤んでしまった目で、殿下に伝える。
息も絶え絶えになってきた俺を、抱きかかえるようにして支える殿下の体温が、早い心音をさらに加速させる。
殿下から、酩酊するような良い香りがする。なんだ、これ。殿下に触れたくて、たまらなくなる。
「これか」
殿下が急ぎ該当クッキーを探り、包みの中から紙を取り出した。
「このメッセージカード、なんて書いてあったんだ」
「えっ、カード?」
(そんなの気づかなかった)
「読んでないのか? 読むぞ? 良いか?」
こくりと頷いた俺を腕に、殿下がカードに目を走らせ、何とも言えない表情を作った。
「──殿下?」
何が書いてあったんだろう?
「ったく……、いくらなんでも無警戒すぎるぞ」
呆れ声と共に盛大に溜息をつかれたが、俺の方は限界でそれどころじゃない。
「殿下、苦しい」
内から突き上げてくるこれが何なのか。
半分、わかってる。
そして目の前の相手が、十年以上、俺のことを大事にしてきてくれた人だと、今の俺はちゃんと理解していた。
だってこんな状態で一心に求める相手が、リュオン殿下だったから。
縋りつくように殿下の服を握った俺を、すっと抱き上げた王太子は、
「……いま解決してやる」
そう言って、寝台へと俺を運んだ。
うわああああっ。お姫様抱っこなんて、初めてされたよ!! 俺結構、重いはずですが?!
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