異世界転生した俺の婚約相手が、王太子殿下(♂)なんて嘘だろう?! 〜全力で婚約破棄を目指した結果。

みこと。

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4.なんのかんので

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「ファンクラブの、ひとりだった」

「ファンクラブ?」

「先のパーティーで、イェシルが世話したご令嬢のことだ。私と……お前を"カップル"として推してるファンクラブが公認、非公認あわせて国内に存在してるが、調べさせたら、そのうちのひとつに所属してな」

「えええ??」

(何それ?! そんなファンクラブがあるって? 十数年王室の婚約者してたら、そんな派閥まで生まれるの?)
 
 というか、公認て何してんの?

 驚いて身を起こす俺に、殿下がクッキーに添えてあったメッセージカードを手渡してくる。
 
 それにはとても可愛らしい丸い文字で、しっかりばっちり、ヤバイことが綴られてあった。


~主神ビィエル様のお認めになった愛を貫かれる、リュオン殿下とイェシル様の大ファンです。
 おふたりが結ばれる日を夢見つつ、ずっと応援しておりました。
 最近不安な噂も聞きますが、信じております。
 心を込めてを用意いたしましたので、もし何かのお役に立ちますなら、どうぞ必要な時にお召し上がりくださいませ。~


「~~~~!!!」


「……これは……、罪に問えぬな……」

 頬を染めながら、たくましい半身を晒して、どっかの王太子が頷いている。


 確かに、クッキーの成分まできちんと明記され、送り主の名前まで書かれたカード。秘密裏に薬を盛ったわけでもなく、ただ俺のうっかりで発生した既成事実に関して、責任を問うとか出来はしない。

 隣で喜んでる権力者もいるし。

 いや、でも、なんか、こう!!

「……釈然としません、殿下」

「殿下? さっきはリュオンと呼んでくれただろう?」

 揶揄からかうような声音にめいっぱいな優しさを乗せて、艶やかな声が耳に近づく。

「あんなに熱く、何度も求めてくれたのに」

「うわあああああああ!!」

 真っ赤になって枕を抱きしめ、顔を隠す。

 横から「ふふ、イェシルは可愛いね」とか甘い声が聞こえて来るが、そんなこと言われたって無視だ。
 返事の代わりに、俺は耳まで火照ほてってしまっている。赤い耳先に触れようとすんの、やめて殿下。


(今からでも歴史をやり直せないものだろうか?! そしたらクッキー、食べないのに!)


「名を呼んでくれて、イェシルが前に戻ったようで嬉しかった」

 ノーガードの肌に、チクチクと言葉が刺さる。声は満足そうなのに、内容は。

(これ絶対責められてる! でもどうしようもないじゃんかぁぁ!)


「国民の期待に応えるためにも、式は早めにしよう。肌を重ねてイェシルの気持ちもわかったし、侯爵令息の初めてには、責任をとらないとな」

 殿下がウキウキと、弾むような声で言った。

(女の子じゃないんだから、責任なんてとって貰わなくて良い……っ)

 心の中の言葉は、声にならなかった。

 俺以外の相手に、殿下が一生懸命になるのは嫌だ。
 そんな思いが、咄嗟に湧き出たせいで。

(でも、じゃあ、どうしたいんだよ、俺は)

 婚約解消の件は?
 俺が処女(?)を失ったから、立ち消え??
 たぶんそう、きっとそう。
 なんか逃がしてくれそうな気配をカケラも感じない。


「これまで以上に大切する。絶対に幸せにするから、安心して私のもとに来い」 

 紫色の瞳が瑞々しく深みを増し、魅惑的な笑みと共に、とびきり甘い口づけを落とされた。
 彼の柔らかな黒髪が、頬に触れてくすぐったい。

 いかん。男なのにこの王子、魅力があり過ぎる。


 こうして俺は、異世界転生した結果、王太子に入りしてしまった。

 交際中に激甘だった殿下が、結婚したら限度を知らない溺愛ぶりに変化したのは、つまり。それまでは我慢して抑えてたということで。
 俺は砂糖の、最上級糖度を味わうことになったのだった。
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