最低ランクの冒険者〜胃痛案件は何度目ですぞ!?〜

恋音

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戦争編〜第一章〜

第126話 相性は問題ただしお前は大問題

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 さて、私にはクラップの監視をかいくぐって調べることが3つある。

 1つ、ルナールの行方。付け加えるなら辿り着き方も必要だ。ただひたすら歩いたとしても方向も土地勘も無い私達じゃ無駄足を踏んでしまう可能性がある。

 2つ、戦争の動向。今更魔法が使えなくなるとか真っ平御免なのでクアドラード王国には是非とも勝っていただきたい。だからトリアングロ側が企んでいる策略をペインを経由して貴族のクロロスに伝え対策してもらう必要がある。

 3つ、置き土産の確認。ルナールとべナードがここに訪れた時『フードを被った人物』の確認が取れている。今もこの基地にいると聞いた。そいつがルナールの情報を持っている可能性が高い。

 ただし2つ目と3つ目は優先すべきことではない。
 2つ目はクアドラード王国の本職スパイから得られる情報より精度が高いとは思えないからだ。貴族としての私が国のためにすることは義務だけど、国からの補助も何も受けられない状態で行動したって無意味だ。
 そして3つ目はあまりにも危険が高すぎるから。おそらくクアドラード王国に潜入していた人間はシュランゲ、べナード、ルナールの3名の他に居ただろう。カジノで私に魔導具取り付けたやつとか……。
 クアドラード潜入の2人が共に居たということはあまりにも潜入幹部の可能性が高すぎる。踏み込むのは危険だ。


 ただでさえクラップに手を焼いているのに。


「おっと」
「ぶっ!」

 ゴリッと顔面に固い何かがぶつかって鼻っ柱をぶつける。
 いくら平たい顔族でも深堀一族でも鼻は1番高いんだ。勘弁して欲しい。

「大丈夫か、少女」

 鼻を押さえながら見上げるのおデブさんが居た。
 黒い軍服に身を包んだ男。後ろに知った顔の女の人が付いてきていて。

「フロ、ッシュさま?」

 見覚えのある人だ。
 この基地を担当する幹部のもう1人。

「1人……。という訳でもなさそうか。後ろに金魚のフンみたいな男がついてきているな」
「鯉のフンでは」
「それもそう」
「何がそれもそうだくそおデブ。姫さんもそいつに絡むんじゃねぇ」
「私ぶつかるしただけですけど!? ──はっ! す、すみませんです、ぶつかるして」

 ペコーっと謝るとフロッシュは『よいよい』と笑った。

「気にするな。軽すぎて小動物が紛れ込んだのかと思った」
「姫さんは小動物って言うより…………小バエ」
「フロッシュ様私このおじさん嫌いです!」
「女性の扱いがなってない童貞なんだ、許してやれ」
「潰れた蛙は見物だろうな」

 というかこの2人対称的。女の人はフロッシュにべったりで男の人はクラップに指示を仰ぐ。
 役割的に真反対で相性がいいのかな。……予感はしていたけどこのデブ、モテるんだ。

「あのエルフはどうだった」
「想い人……いやこの場合は想いエルフか。それがいる少女は口説けないさ」
「ほぉ。そうかよ」
「ル族エルフだ。ここにいると分かっていてもそう簡単に出会えはしない。しばらくし王都に送り届ければ良いだろう。国境は危険だ」
「チッ……。めんどくせぇな」

 ル族エルフを探している。
 つまりまぁ、ルフェフィア様を探すエリィで間違いない。

「どうにかして王都に行くよう説得せねばならんのでな。私は失礼しよう」

 これは、エリィもしや大手柄なのでは。
 王都に行くように、か……。国の中心にエリィだけでも向かってくれるなら、エリィ自身が魔法で何かしらを教えてくれるだろうし……。

 いやー、エルフ様々! エリィ連れてきて正解だったわ~! ありがとうバブフなんて言ってごめんね! 厄介だからトリアングロに対応押し付けようとか考えてごめんね! いやそんなこと思ってないよえぇ私とっっっても優しくて親切であとなんか、うん、なんかあれだから。天使みたいな子だから。


「あぁ。まぁこっちの方は任せとけ。──姫さん仕事」
「はいっ! 今やると思うしてた所です!」

 その指摘に立ち止まって聞き入っているひまは無いのだと教えられる。
 この人がどこまで考えているのか分からないけれど、私の前に餌として置かれる情報を食べるか食べないかも見張られてるのかなぁ。その可能性ありそうだけど、うーん、というか私ならする。

「あぁ、小さなお姫様」
「え、はい」

 一礼して立ち去ろうとしたらフロッシュに呼び止められた。

「そんなつまらない童貞はやめて私にしないかな? 華も無い軍人特有の花の扱い方も知らないような無骨で雑な扱いでは泣くことも出来ぬのだろう」

 口説かれている。
 ただ、騎士の様に膝を着いて手の甲にキスをして、みたいな『女性を讃える』様な口説き方じゃない。あくまでも優位に立つのは強い者。上から見下ろして選択肢を与えて『あげる』だけなのだ。私の守護の下に入るか入らないか、と。

「お生憎様」

 私は唇に人差し指を立てて茶目っ気を入れながら笑った。

「想い人ぞいる少女は口説けぬですよ」

 フロッシュがさっき言っていた言葉を真似すると、彼は大きく目を見開いて、1本取られたとばかりに笑う。

「それは無理だな。その想い人はさぞかしこの私より優れた男なのだろうな」
「んー」

 優れた男、ね。

「すぐ暴力するですし、口悪いですし、扱いが雑ですぐポンポン放り投げるして、顔面掴むですし、口調をよく馬鹿にするですし、正直絶対女の人にモテぬだろうなと」
「おい姫さ」

「でも──」

 あぁそうか。
 そうだろうね。

 だから私はここにいるんだ。

「──ほっとけぬ人ですから!」

 その言葉にフロッシュは諦めたように、クラップは耐えきれないとばかりにため息を吐き出した。




 ==========





 危ない。危ない。……危なかった。
 クラップが恐ろしい人なのだという事はずっと思っていた。体格は天と地の差で、クラップは見るからに鍛え上げられた軍人。その背丈は私よりずっと高く、ライアーより少しだけ高いだろうか。腕の筋肉は他の部位より特に発達していて、リーベさん並の筋肉量とはいかないけれど、見た目より怪力。常人には体格から考えたら普通の腕力だと思われそうだけど。非常に力と筋肉の使い方が上手い。力の掛かり方や喧嘩の仕方をわかっている人の体運びだ。


「清掃補助入るでーーーす!」

 元気よく次の仕事に入り、必死に体を動かしながら汗を流す。



『花の扱い方を知らないような無骨で雑な扱いでは──』

 刃物のような瞳が私を見た。

『──鳴く・・ことも出来ぬのだろう』

 一筋縄でいく人間が幹部なわけが無い。

 あの体格、戦闘能力、強者主義の国の幹部の中で弱い部類に入るだろう男が。──あれだけの女性を手玉に取ることが出来るわけが無い。

 あの男にとって1番厄介なのは。心理戦だ。
 おそらく私の心理状態を見抜くのは造作もないことだ。

 早めに気付けて良かった。
 ボロが出切る・・・前で良かった。


 止まらない冷や汗を流す私に、クラップが告げた。

「……なぁ、姫さん変わってるって言われないか」
「言語の喧嘩なら遠慮なく買うですけど??????」

 想い人ルナールに重ねたクラップを、勘違いしながら睨んだ。
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