【第二章完結!】妹?義妹ですらありませんけど?~王子様とは婚約破棄して世界中の美味しいものが食べたいですわ~

井上 佳

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第二章 外国漫遊記

第六話 ビトリア

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私はビトリア・モーニシュ。

ボルティ国のセトゥーバル領にある、大きなお屋敷に住んでるわ。

この辺りでは、モーニシュ家を知らないものはいないってほどのお金持ち。
領主館で行われる晩餐会なんかにも呼ばれちゃうのよ? すごいでしょ!


っていうのは、実は仮の姿で、私には前世の記憶がある。

前世の私は、この世界には存在しない日本という国に住んでいて、16歳まで生きて、死んだ。

死んだときのことはよく覚えている。世界に絶望して、学校の屋上から飛び降りたんだ。


私には兄がいて、小さい頃からよくテレビゲームで遊んでいた。

最初は家族でわいわいやるようなゲームをよくやっていたけど、気が付いたらひとりで遊べるRPGや、小説を読むようにプレイできる乙女ゲームにハマっていた。

その頃の記憶が蘇ったのは、ポワリアが聖女としてこの家に来た時だった。


「今日からこの家で暮らすことになったポワリアだ。仲良くするんだぞ」

「ポワリア…?」

「よ、よろしくお願いします。えっと、お姉さま?」

「っ!!」


大好きなゲームだった。

ヒロインは環境の悪い孤児院で幼少期を過ごしていたが、10歳の時に国内全ての子供が受ける聖女選定の儀でその光魔法が認められ、聖女となる。

そして生活が一変する。

同じ領内にある裕福な家に引き取られたポワリアは、そこで家族の愛を知る。そして王子の婚約者になり、城で王子妃、王太子妃だったかしら? その教育を受けてパラメータを上げていくシステム。
ある程度成長したら、国内の魔物討伐をしたり、外国との戦争で傷ついた兵士を癒したりして、いろいろな人と出会い、最終的に誰かと結ばれてハッピーエンド。


そのヒロインが、目の前にいるポワリアだった。


私は許せなかった。


転生したのよ?

前世の記憶を思い出したのよ?

なんで、私がただのモブなの?

聖女の姉? そんなキャラいた?

ゲーム内でモーニシュ家に触れているのは確か、『ひどい環境で育ったポワリアだったが、後見人として手を挙げたセトゥーバルの有力者であるサロマン・モーニシュとその家族に愛されて、幸せを感じられるようになる』……この一文くらいよね?
ゲームのポワリアは、城に上がって教育だなんだと忙しくなってからは、一度もモーニシュ家の家族を思い出すことはなかった。
そんなモブ、納得いかないわ!

そう思った私は、モーニシュ家に来たポワリアを受け入れることができなかった。
お父様には、養子縁組なんて絶対に嫌だと言い張った。今のお義母様は、そもそも平民を下に見ているような元貴族だから、孤児だったポワリアを受け入れることはなかった。まあ、うちも貴族ってわけじゃないけど。

ポワリアが城に上がったら、たくさんのイケメンと出会ってよりどりみどり。

そんなの許せない!

城からの使者だって、ポワリアはまだ城に上げられないってなんやかんや理由をつけて追い返していたところよ。


そんな時やってきたのが、まさかグイスト・ジャビウスだなんて!

あ、2作目で出てくる名前はルシエンテス公爵だったかしら。

とにかく、1作目ヒロインが第二王子と結ばれると、失恋したショックから国を出て冒険者になるグイスト様、最推しの超イケメン!

ポワリアとは、魔物討伐の時に出会うのよね。なんでうちに来たのかしら?

そもそも、一緒に来たエリシャって1作目の悪役令嬢よね?

母親を亡くして、父の侯爵が再婚して継母と義妹ができる。侯爵は年々、死んだ母親に似てくるエリシャを疎んでいたからその分ヒロインを可愛がっていた。それに嫉妬してエリシャは、ピオミルの服を着れなくしたり魔法で攻撃したり、小屋に閉じ込めて火を放ったりしていじめていて、正規ルートでは、婚約者だった第二王子に婚約破棄されて国外追放。もうエストルム性を名乗れないはずなのに、エリシャ・エストルムと言っていた。

しかもグイスト様と一緒にいるし、何かがおかしいわ。


「ポワリアをいじめているですって? そんなこと、するように見えますか?」

「ああそうだな、人を見た目で判断するのはよくないが、よくないが、するとしたら見える」

「グイスト様、そんな言い方は…」

「エリシャもそう思うだろう? 君とは違って悪役顔だ」

「こ、答えづらいですわね」

「なっ! なんなのよ!」


私はモーニシュ家のビトリアよ!

爵位はないけれど、昔からこの辺りの土地持ちで、富裕層なんだから!

それが孤児を下に見るくらい、なんだっていうのよ!
間違ってる! この世界もあっちと一緒で、間違ってるんだわ!



あら? …そう、そうだったわ。転生してきたんだから、私が聖女…。私が、王子の婚約者で、魔物討伐で、グイスト様と…もう、出会ってたんだわ!


そう、それで、彼を選んだの私。だから、結婚の報告に実家に来たんだった。


ふふふ。


グイスト様と結ばれて、結婚、するの。


ふふふ。


だから、これからは幸せな世界が待っているわ。



幸せな世界で、私がヒロインで、愛されて、生きていくの。





それが、正しい世界なの。





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