【第二章完結!】妹?義妹ですらありませんけど?~王子様とは婚約破棄して世界中の美味しいものが食べたいですわ~

井上 佳

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第二章 外国漫遊記

第八話 モーニシュ家の終焉

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「一体、なんだったのでしょうね?」

「ああ…散々な目にあったな」

「あの、ほんとうにありがとうございます」

「いいのよ。貴女には、こちらからもお願いしたいことがあるのだから」

「お願いですか?」


モーニシュ家の応接室で、ポワリアさんへのいじめについて言及していたら、ビトリアさんが突然、魔力の切れた魔道具糸の切れた人形のように反応しなくなってしまいました。

しばらくうつむいていたビトリアさんでしたが、突然グイスト様に飛びかかって抱きついてきてまた取り押さえられ、その後はずっと、『結婚』だの『幸せ』だの『新世界!』だのとぶつぶつ呟いていました。

二度にわたる他国の準王族への狼藉に、こちらも何もしないわけにはいかず、領警備団に引き渡されました。


そうしたら今度はモーニシュ夫人が、ビトリアさんの非礼を謝りながらも、「昔を懐かしんで、少しふたりで話したいことがある」と言い出しグイスト様を庭に連れて行きました。聞いた話では、『待っていたのよ運命』だの『わかってるわ』とかなんとか言いながらグイスト様に飛びかかって抱きついてきたので、取り押さえたとのことです。

取り乱し方が半端なかったのですぐさま警備を呼んだら、こちらも『高位貴族』だの『返り咲き!』だのとぶつぶつ言いながら連れていかれました。


おふたりは義家族でしたわよね?


なんなのでしょう、この似た者母子…と言いたいところでした。



そんなこんなで、ご当主も、事情を聴かなければならないので警備に連れていかれ、モーニシュ家に残ったポワリアさんを、私たちが連れ出した次第です。


「王太子殿下にご紹介いただきたいの」

「殿下に?」

「ええ。是非進言して差し上げたいことがあって」

「そうですか。わかりました」

「いいかしら」

「もちろんです。恩人のためなら」

「ふふっ、ありがとう」


馬車の中、金色の髪を揺らしながら、ニコリと笑顔を向けてくれるポワリアさん。まさに聖女、後光が射しています。

いったんアンドロッツォ家に戻りましたが、そこで事情を話し、ポワリアさんはこのまま王城へ連れていくことになりました。一応冒険者ですので、護衛もかねて。
聖女を連れていくことは、ベネディータ様が書状を早馬で送ってくれるそうです。


「体に気を付けてちょうだい」

「はい。ベネディータ様、いままでありがとうございました」

「いいえ、いいえポワリアさん。気づいてあげられなくて、ごめんなさいね」


ポワリアさんがモーニシュ家に住むようになって、たびたび様子を見てはいたものの、ベネディータ様はモーニシュ家での彼女の立ち位置を、正しくは把握できていませんでした。
もちろん、ポワリアさん自身が隠してふるまっていたということもあるのでしょうが、ベネディータ様はそれでも悔やんでいらっしゃいました。

首都にある城までの道中、馬車の中で、ポワリアさんからも事情を聴きました。

6年前、モーニシュ家に養子に入ると聞いて連れてこられたけれど、姉になるはずのビトリアさんには『あなたが聖女だなんて認めない!』と攻撃され、母になるはずのカルメリタさんには『汚らわしい、寄らないで』と蔑まれていたそうです。
それでも聖女のお務めとして、戦場では後方支援、それが落ち着いたら領内で治癒術会に積極的に参加して、人々を癒していたようです。


「私が皆さんのお役に立てれば、いつか家族として認めてくれるかもしれないと思って…」


なんて健気な子…。思わず涙が滲んでしまいました。


「それに、孤児院に比べれば、あの家はとてもいい環境だったんです。美味しいご飯に清潔な寝床、お風呂にも毎日入れてもらっていました。メイドさんには皆さんよくしていただきましたから。ちょっと叩かれたり転ばされたり、睨まれて嫌味言われるくらい、衣食住が揃った幸せな生活ができているので、大したことありませんでしたよ。聖女としてのお務めをしていれば、あの人たち以外は、笑顔になってくれていたし」


聖女様は、なかなか精神の鍛えられたお嬢さんでした。

叩かれたり転ばされたり睨まれたり嫌味言われたりするところでもいい環境だというのならば、ここの孤児院は要チェックですわね。


とりあえずポワリアさんは、城へ連れて行って、国の出方を窺いましょう。貴女の後見人、きっと良い方を見つけてみせますわ。






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