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第二章 外国漫遊記
第十三話 幕間③ 女三人姦しい
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「それで、学園長とはどうなの?」
「どうもこうもありませんわ」
「ふたりで一か月、旅行してきたんでしょう?」
「旅行じゃありません。冒険者としていろいろな国を周るぞーと旅立って、まず行ったボルティ国で思いがけず王太子殿下からレオカディオ陛下宛に書状を預かったから、グイスト様が一時帰国しているだけですわ。すぐに出ます」
「そう? 今度はどこに行くの?」
「まだ決めていませんが、とりあえずボルティ国限定のマゴールパティシエの練り菓子が食べれなかったので、どこか限定品のある国へ行きたいですわね」
「ああ、マゴールパティシエなら、来月頭にモッラーロ王国で行われるレースの開会式典で新作スイーツをふるまうらしいわよ?」
「な、なんですって?!」
来月頭? モッラーロ? 開会式に新作!!
さすが、国をまたぐ大商会の娘ですわ。ミサトにはほんとうに感謝しかありません。わかっていて「旅行してきただけでしょう」と揶揄われたことも、気にしませんわ。
「じゃあ次は、モッラーロへ?」
「そうですわね。今決めました」
「で? で? グイスト様とはどこまでいったのよ」
「どこって、だからレスポンだって言ったではありませんか、ヒューラ」
「そういうことじゃないのよ…」
それは最初に話しました。ボルティで魔の森セーラ・デ・サンバロッソを攻略した話や、モーニシュ家や聖女様のことや終戦の兆しの話も。
どこまで行ったと聞かれたら、ですから、ジャービー最西の町カセルスからボルティ最東にあるセーラ・デ・サンバロッソを抜けて、さらに東の海沿いの首都レスポン。そして南下してセトゥーバル領、聖女を連れて再びレスポン。最後はまたセーラ・デ・サンバロッソを抜けて帰国した、と。
「そーうーじゃーなーくーてー! 恋愛事情! 恋愛事情を聞かせて恋バナよ!」
「恋バナ、は…苦手です」
「きゃっ、エリシャかわいいっ」
「ミサト! ほら、聞き出すのよ!」
ギャーギャーワーワー、女三人寄れば姦しい。まさにそれです。
そもそも、グイスト様とは恋人でも何でもないことはこのふたりも知っているはずです。セントリュッツ学園でずっと同じクラスでしたし、ランチも一緒に食べていました。何度も、学園長を勤めていたグイスト様とも会っているし、元第二王子との婚約破棄後も、共に冒険に出ることになったと伝えた時にも、そのような関係に発展したわけではないと散々……。
「だからこそなのよ、エリシャ」
「と、いいますと?」
「この、友達以上恋人未満の時期が、一番楽しいのよ」
「と、友達? そもそも私とグイスト様とは――」
「はいはい、わかってるって。友達だったことなんてないわよね! 言葉のあやよ。そうじゃなくて、そうね、恋人に発展するか、いつするか、しない可能性もある?みたいな時期が楽しいの!」
「ああ、そういう…い、いえ! 発展しませんわよ!」
「なんで? 好きなんじゃないの?」
「す、すき?! いえ、まあ、そう……ど、どちらかと言われればそれは、もちろん好き…ですけれど」
「好きなのね? ルシエンテス公爵閣下のこと」
「ええ、それは、そう………、好きですわ」
「ですってよー」
「えっ?」
ミサトが、私の後ろに呼びかけます。
何事かと振り向いてみたら、顔を真っ赤にしたグイスト様が、少し離れたところで直立していました。
「どうもこうもありませんわ」
「ふたりで一か月、旅行してきたんでしょう?」
「旅行じゃありません。冒険者としていろいろな国を周るぞーと旅立って、まず行ったボルティ国で思いがけず王太子殿下からレオカディオ陛下宛に書状を預かったから、グイスト様が一時帰国しているだけですわ。すぐに出ます」
「そう? 今度はどこに行くの?」
「まだ決めていませんが、とりあえずボルティ国限定のマゴールパティシエの練り菓子が食べれなかったので、どこか限定品のある国へ行きたいですわね」
「ああ、マゴールパティシエなら、来月頭にモッラーロ王国で行われるレースの開会式典で新作スイーツをふるまうらしいわよ?」
「な、なんですって?!」
来月頭? モッラーロ? 開会式に新作!!
さすが、国をまたぐ大商会の娘ですわ。ミサトにはほんとうに感謝しかありません。わかっていて「旅行してきただけでしょう」と揶揄われたことも、気にしませんわ。
「じゃあ次は、モッラーロへ?」
「そうですわね。今決めました」
「で? で? グイスト様とはどこまでいったのよ」
「どこって、だからレスポンだって言ったではありませんか、ヒューラ」
「そういうことじゃないのよ…」
それは最初に話しました。ボルティで魔の森セーラ・デ・サンバロッソを攻略した話や、モーニシュ家や聖女様のことや終戦の兆しの話も。
どこまで行ったと聞かれたら、ですから、ジャービー最西の町カセルスからボルティ最東にあるセーラ・デ・サンバロッソを抜けて、さらに東の海沿いの首都レスポン。そして南下してセトゥーバル領、聖女を連れて再びレスポン。最後はまたセーラ・デ・サンバロッソを抜けて帰国した、と。
「そーうーじゃーなーくーてー! 恋愛事情! 恋愛事情を聞かせて恋バナよ!」
「恋バナ、は…苦手です」
「きゃっ、エリシャかわいいっ」
「ミサト! ほら、聞き出すのよ!」
ギャーギャーワーワー、女三人寄れば姦しい。まさにそれです。
そもそも、グイスト様とは恋人でも何でもないことはこのふたりも知っているはずです。セントリュッツ学園でずっと同じクラスでしたし、ランチも一緒に食べていました。何度も、学園長を勤めていたグイスト様とも会っているし、元第二王子との婚約破棄後も、共に冒険に出ることになったと伝えた時にも、そのような関係に発展したわけではないと散々……。
「だからこそなのよ、エリシャ」
「と、いいますと?」
「この、友達以上恋人未満の時期が、一番楽しいのよ」
「と、友達? そもそも私とグイスト様とは――」
「はいはい、わかってるって。友達だったことなんてないわよね! 言葉のあやよ。そうじゃなくて、そうね、恋人に発展するか、いつするか、しない可能性もある?みたいな時期が楽しいの!」
「ああ、そういう…い、いえ! 発展しませんわよ!」
「なんで? 好きなんじゃないの?」
「す、すき?! いえ、まあ、そう……ど、どちらかと言われればそれは、もちろん好き…ですけれど」
「好きなのね? ルシエンテス公爵閣下のこと」
「ええ、それは、そう………、好きですわ」
「ですってよー」
「えっ?」
ミサトが、私の後ろに呼びかけます。
何事かと振り向いてみたら、顔を真っ赤にしたグイスト様が、少し離れたところで直立していました。
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